敵は、ノーライフキング

 一〇〇年前、カミュの父である魔王、カルンスタイン伯爵が殺された。


 犯人の名は、ノーライフキング『リ・ッキ』という。


「ノーライフキング?」


「アンデッドの最頂点の一人だ。不老不死の魔術師のことだと」


 たしか、田島組を裏切った竹山たけやま 力弥りきやも、オカルトにかぶれていたっけ。

 姐さんが随分嫌っていたなぁ。「『ちゅうに』な所が受け付けない」って。

 あいつ、おれと同じ三六なのに。


「父は、人間との共存を望んだ。そのため軍の規律が乱れた」


 多くは、魔王の方針に従った。


 しかし、血の気の多い魔族は人と手を取り合うことを拒んだ。

 中でも「ノーライフキング リ・ッキ」は、大量のアンデッドを引き連れて、魔王軍を裏切った。

 ほとんどのモンスターも、ヤツに寝返ったという。


「結果、魔王に賛同するモノはみんな死んだ。父も」

「なんで、親父さんは、人間と共に生きようと」


「ボクの母はね、人間なんだ。ボクを産んですぐに亡くなったけれど」


 人と魔王の間に、どのような経緯があったのかは知らない。

 だが、確かに愛されて育ったのだろうとは、カミュを見ていれば分かる。

 どうりで食事も普通に取れるわけだ。


 対して、サティは何も口に付けていない。

 彼は自然界の魔力を食っていれば活動できるという。


「リ・ッキの目的は不明ですが、人間の抹殺が目的なのは確かなのです」


 これまでも、いくつもの街が被害に遭っている。


 カーミラ・バートリ・カルンスタインは、男装の貴族「カミュ・シェリダン」を名乗り、魔王の娘という身分を捨てた。リ・ッキの息が掛かった魔物や悪党を殺し続ける日々を送っている。


「本当は、ボクがリ・ッキを倒すつもりだったんだけれど」

「え? リ・ッキって、誰かにやられたのか?」


「数十年前、人間世界に女神が現れた。その名を、大魔導師テムジン」


 どこからともなく現れては、災厄を焼き尽くす、謎の女魔導師がいたという。


 大魔法を操り、テムジンは、リ・ッキを異世界に追放した。

 が、彼女自身も巻き込んでしまう。

 その後、リ・ッキとテムジンを見た物はいない。


 ところが、最近になって、またもリ・ッキがこの世界に現れたという。


「それがリキだと?」

「言い切れないけれど、そうかも知れない」

 

 テムジンに何が起きたのかは分からないが、おそらく事実だ。


「テムジンが操っていたのが、ビシャモン天だった。キミと同じような刺青が、背中に彫られていたという」

「それじゃあ、オレに刺青を彫った姐さんは……」


「テムジン本人、あるいは関係者か。詳しいことは分からないけれど」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る