第一章 : ママズ・コンプレイン
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プライム・ノートのキーボード奏者は高木
ドラムは同じく二年の伊藤裕明。学部は同じだが、応用化学科の浩に対し、裕明は電気電子工学科であった。皆からは、意味も無くヘッドロックされるような、いわゆるいじられキャラである。ベースは法学部三年の時田雄二で、彼が一応、プライム・ノートのリーダーだ。リーダーと言っても、音に関して何らかの決定権を持っているわけではなく、ライブの段取りなどマネージメント的な仕事を率先してやってくれるので、年長であることも考慮し、リーダーという扱いになっている。こちらの方は、文字通りただの「扱い」であった。あともう一人。どう見てもジャズとは関りが無さそうな、商学部三年の新田茂がパーカッションで不定期に参加していた。ただし、新田はあらゆる楽器をひと通りこなすことが可能で、バンドの音作りにおいてバリエーションを持たす上で必須のメンバーとなっていた。
このバンドでボーカルものを演奏することは基本的には無いのだが、
その日の最終講義を終えた浩は、アパートに帰る前にお茶の水まで足を運んだ。別に特別な用事が有ったわけではないが、こういう風に訳も無くこの街を訪れることが好きなのだ。楽器屋に寄って試し弾きしたり、新しい
「アンタ、プライム・ノートのギタリストでしょ?」
身長は日本人女性にしては大きく、160cm台後半といったところか。髪は茶色く染めたショートボブで、如何にも女子高生的な服装をしてはいるが、その極端に短いチェックのスカートから延びる脚は肉感的で、アダルトビデオにそのまま出演していてもおかしくはない程の艶めかしさを持っていた。首には、スカートと同じ柄のタイを結び、薄手のシャツが彼女のボディラインを想像させて、かえって卑猥な印象さえ与えていた。ただ、薄っすらと施された化粧は過度な印象は与えず手慣れた感じで、無理して背伸びしている風には見えなかった。それは年相応の若々しさを発散していると言えた。元々、秋田の田舎育ちの浩が、そのような都会の女子高生と会話したことなど有るはずも無く、いきなり話しかけられても、どう答えて良いのか判らなかった。同じ都会育ちの萌衣も、女子高生の頃は、こんなにも目のやり場に困る様な感じだったのだろうかと思わずにはいられなかった。
「え・・・ っと、そうだけど・・・ 何か?」
浩が目をパチクリさせながら答えると、その女子高生が言った。
「ねぇ、私と
そして右手を差し出した。
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