第11話 周防大島はライトクラフトの発着場なんですが、それはテロですか?

 はい。10月22日午前0時30分ごろ、山口県の柳井市と周防大島町を結ぶ大島大橋に貨物船が衝突し橋が破損しました。橋は通行止めとなり、送水管が破損したため島内では断水が続いています。

 おい。テロかよ。その島は「宇宙に一番近い島」と言われていて、ライトクラフトの発着場があるんだぞ。それに、核融合施設もあるし、ライトクラフト推進用のマイクロ波ビームの発射装置もあるんだぞ。こいつは軍用にも使えるすげえ出力なんだぞ。

 失礼しました。「俺アン」の3年後をえがいている「僕と守護者の物語」の設定上のお話です。

 よく考えてみれば、今から20年後の世界にこういうのができているなら、現在すでに核融合炉の実験炉は稼働していないとおかしい。核融合どころか上関の原発自体まだ着工もしていない。さらに、ライトクラフトの実験機もすでに飛行していないとおかしい。そんなものはどこにも飛んでいないじゃないか! とかの突込みは無しでお願いします。

 まあ、マジでテロかと心配した訳ですが、この貨物船の所有者はドイツの海運会社で、その会社の人が県庁と周防大島町を訪れて謝罪しましたよ。まあちゃんと損害賠償はしろよって話です。

 さて、話を設定に戻しましょう。

 綾瀬重工創業者の綾瀬重蔵氏のチームが核融合炉を開発しました。実験炉が稼働したのはちょうど今頃(2018年)でしょう。「俺アン」当時(2038年)はすでに営業運転を開始しています。周防大島にはライトクラフト推進用のマイクロ波ビーム発射装置があり、その電力を供給するために核融合施設が設置されています。今、原発でもめている上関町では何と、高速増殖炉が稼働しています。これは核融合で得られる高速中性子を利用して実現してます。高速増殖炉は核融合炉と連結して初めて可能になった技術です。え? 具体的には企業秘密なのでお教えできませんが、とにかく実現しているんです。特定空間に重力異常の領域を作成し、空間を歪ませるという技術で核融合の炉心をシールドし、また、それを応用して核融合炉と高速増殖炉を連結するらしいです。詳細は不明に決まってるでしょう。

 さて、この核融合で得られた豊富なエネルギーを利用した外燃機関がライトクラフトになります。「僕守護」序盤でこのライトクラフトの解説をしています。ここでも一応やっときますね。

「ライトクラフトとは、地上からのエネルギー供給により推進力を得て飛翔する宇宙船のことです。従来のロケットよりも構造が単純で、かつ、大量の燃料を積む必要がありません。再利用が可能な低コストの機体、しかも圧倒的な搭載量を誇ります。まさに次世代を担う宇宙開発の花形。それが、私の開発したライトクラフト『雷光Ⅲ型』なのです」と自慢しているのが綾瀬重工開発部部長の宮内薫みやうちかおる女史。簡単に言うと、凹面鏡を持つ機体にレーザー等を照射し、その収束部に発生する高熱で爆発的に空気を膨張させて推進力とする乗り物です。空気のない大気圏外では推進剤を自前で供給する必要があります。一般的なロケットではとにかく大量の燃料を積む必要があるし、ロケットエンジン自体の重量も馬鹿にならないのです。そしてそのロケットエンジンを切り捨てるのです。もったいない。しかし、このライトクラフトならばそのエンジンと燃料が不要なのです。どうですか? 画期的でしょ。

 アイディア自体は40年位前からあるみたいです。実用には強力なレーザービームが必要なのですが、それがまだできていないのですね。また、この軍事利用可能なほどの出力をもつレーザービームを宇宙開発のみに利用を制限できるのかという問題もあります。作中でも触れていますが、レーザービームを反射する衛星を複数設置できれば、ライトクラフトは月まで楽々往復できるでしょう。しかし、それは反射衛星砲の完成でもあります。地上どこでも、ほぼ瞬時に攻撃できるビーム兵器が完成するのですよ。また、ライトクラフト自体も、航続距離無限の爆撃機として運用可能になります。これって、一国がもつ軍事力としては過剰なものですね。作中では反射衛星は条約上設置できないとしています。

 ちなみに、第一世代型の実験機は2030年ごろから飛び始めています。これは傘を開いたキノコのような形状です。第二世代型は2035年ごろから実用化されました。宇宙ステーションへの物資や人員の輸送、衛星の打ち上げなど多岐にわたって活躍しています。ずんぐりとしたドングリみたいな形状。2041年に就航した第三世代型は大昔のスペースシャトルそっくりの形状で、大きな翼と垂直尾翼を持っている。大気圏内では空力を利用し、エネルギー効率を大幅に向上させた。大気圏に再突入する際もライトクラフトの推進力を利用することで十分に減速できるため、昔のスペースシャトルと比較して安全性は格段に向上している。ちなみに、この機体の開発に深く関わっていて宮内女史の上司なのが綾瀬頼蔵あやせよりぞうです。通称頼爺。名前は度々出てますね。


※連合宇宙軍艦艇と艦載機の予定でしたが、周防大島の事故により予定変更しました。

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