第十話 雷雨の激闘
「足跡がある……。
こっちだ!」
シャノの案内のもと、十人のユカ救出隊のメンバーがジャングルの木々をかき分けながら駆けていく。
バトルスーツのブーストボタンを押して、通常の速度の何倍もの速さで走る。
そのうち、雨が降り出し、パラパラと降っていた雨はやがて激しさを増し、ゴロゴロと雷雲の轟きも聞こえ始めていた。
「ユカ、待っててね!」とモエコが言うと、「絶対に助け出す!」とユウトが叫び返した。
「見晴らしが良くなるように、木を焼こう。
激・炎波撃!」
シャノが木々を焼き払うと、行く手に科学軍の兵士たちが見えた。
数にして1,2,3,4……10人ぐらいだ。
……ユカもいる!
ユカは一人の兵士に抱きかかえられていた。
「ちいっ!
追いつかれたか!!
雷電放射!!」
科学軍の兵士が立ち止まり、手に持った円筒から攻撃してくる。
「反射鏡!」
そう唱えたシャノが張ったバリアによって敵の攻撃は跳ね返り、科学軍の兵士が三人犠牲になった。
「路上の戦士ストリートファイター!」
ダイゴが格闘ゲームのキャラクターを召喚する。
3Dポリゴンのそのキャラクターが蹴り払いすると、兵士が一人吹っ飛んだ。
「魔法集積弾マジックザギャザリング!」
シマダとチャゲの合体魔法だ。
エネルギーの弾が兵士たちに突き刺さる。
間を置かずに、ユウトは「激・風舞撃」を唱えた。
焼かれた木々を巻き上げて、巨大な竜巻が敵を襲う。
「竜巻に足止めされている間に……
吹雪……!
そして、十もの二十もの妖精が人の間を舞う……!
ユキの唱えた
「片が付いたみたいだな」とシャノ。
眠った敵が抱えていたユカを解放したところ、ユカは強力な催眠によって眠らされているようだった。
ミント先生の一つのメルヘンフローラル・ウインドによってユカの体力を回復させた後、ユウトがユカを抱きかかえて頬を優しくはたくと、ユカはまぶたをゆっくりと開けた。
「ユウト君……!」
「ユカ…! ユカ…!」
「お熱いねぇ、二人とも」
ダイゴが囃す。
「えっ、二人ってそういう関係?」とオトナリ。
「気付いてなかったのかよ。
ここ一週間のユウトとユカの様子を見れば簡単に分かるよ」
ダイゴが話す。
「二人とも、話してくれればいいのに、見え見えだったよ」
チャゲが口元をほころばせながら言う。
「これは学級新聞に今世紀最大のビッグニュースとして載せねば」
学級新聞なんてないのに冗談を言うシマダ。
「さて、あと一つ、俺たちにはやらなければいけないことがある。
セブン……!
お前は敵と内通していたな…!」
「何を言っているんだ、シャノ」
せせら笑うセブン。
「ユカが蘇生魔法を使えることを科学軍に教えたのはセブンだろう?
トップシークレットの情報を科学軍が知っている訳はセブンが教えたからだ!
その証拠のメールログもある!」
「クッ!
バレたらしょうがないなぁ…!
大・光撃!」
光のエネルギーによる衝撃波によって、ユウトたちはダメージを負った。
「激・風破撃!」
手負いのユウトたちを大きく渦を巻いた竜巻が襲いかかる。
まずい……!
教官とユウトを除いて、ダメージで身動きできない……!
「星屑の行進スターライトパレード!」
黄金色にさんざめく閃光の束がユウトたちを射す!
セブンの特殊魔法は、一日に一回までしか使えないが、周囲の人間を気絶させるというものだった。
この能力は今まで秘密にされていたため、彼が能力を使うことを誰も防げなかった。
「ユカちゃんはもらっていく!」
気絶したユカを背負って、有翼族の自身の翼で飛ぼうとするセブン。
「待て!」
ユウトだけが気絶していなかった。
「なぜ、貴様は気絶していない!?」
ユウトが今日初めて使った特殊魔法「
「
心臓を射抜く衝撃波によって宙に浮きかけていたセブンは吹き飛ばされた。
セブンだけを狙った衝撃波のため、ユカに傷はつかなかった。
「うっ……」
うつ伏せに倒れながらうめくセブン。
「俺たちの勝利だ!
セブンさん、どうして俺たちを裏切ったんだ?」
「それは、戦争を続けたかったからだよ」
「なぜ!?
戦争を続ければ多くの人が死ぬのに……」
「俺みたいな戦士はさ、戦争がなくなれば存在意義を失うのさ」
セブンがつぶやいたその声は雷の音にかき消されそうになっていたが、ユウトの耳にはしっかりと届いた。
「戦士である前にまず一人の人間でしょう!?」
ユウトの声が激しい雷雨の中で響き渡った。
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