第四話 魔法軍が科学軍を憎む理由
トイレに行った後(綺麗なトイレだが、日本のものとあまり変わらなかった)、またシャノがユウトとエレーヌの額に手を当て、元いた部屋に戻ってきた。
「よし!
ユウトとエレーヌが帰ってきたので、ドラフトを始めます。
まずはじゃんけん!」
オトナリが意気揚々と言う。
じゃんけんで勝ったリーダーから指名が始まり、結果、以下のようなチームになった。
男子 ユウトチーム
高橋悠斗
坂上大吾
森英介
島田芳人
僕たちのチームだ。
組みたい相手とチームが組めて良かった。
男子 オトナリチーム
音成駿
坂本大
滝原勇気
本田慶
あのオトナリのチーム。
野球部ピッチャーのサカモトとバッターで補欠のタキハラがいる。
ケイは今は辞めているが、中学時代はサッカー部で、オトナリとチームメイトだった。
男子 クロサワチーム
黒沢太陽
服部良
佐々木篤史
工藤遊人
音楽が共通の趣味のチーム。
4人ともSeacretというロックバンドが好きで、ハットリからそのバンドのCDを貸されたが、ユウトには難しくてよく分からなかった。
男子 ナカムラチーム
中村雄大
本田勝人
藤原裕太
木口登
あのナカムラのチーム。
クラスで孤立気味の木口君からナカムラ達からいじめられないか気になる。
でも、ヤバげなことになりそうになったら、なんだかんだで良い奴のフジワラがナカムラとホンダを咎めるだろう。
ちなみに、フジワラの兄はSeacretのフロントマンと親友なのだとか。
女子 モエコチーム
大曲萌子
吉野由香
中川真里
加藤雪
ユカのチーム。
ユカとモエコはダンス部繋がりでユカとマリは同じ中学繋がり。
いつもユカとモエコとマリの三人で談笑している。
ユキは孤立気味だが、ユキ自ら孤立を良しとしている風情がある。
女子 エレーヌチーム
黒崎エレーヌ
紺野りさ
田中優子
森川千里
ユウトに告白してきたエレーヌのチーム。
エレーヌは陸上部だが、リサは美術部、ユウコは手芸部、モリカワは文芸部で、文化系の部活の女の子が多いイメージだ。
女子 ソンイチーム
ハン・ソンイ
水谷奈央
虹村洋子
砂田美樹
韓国人のソンイのチーム。
在日韓国人のソンイは、埼玉の韓国系学校の学力のレベルが低いため、その学校に入ることを嫌がって僕らの高校に入学した。
お転婆のソンイと、ソンイを一歩引いて見守るミズタニは大の仲良しだ。
ヨウコとスナダはK-POPファンで、ソンイのことを慕っている。
一度クラスでカラオケに行った時(これもオトナリが企画)、ダンス部のスナダが美少女時代というK-POPグループの歌を踊って歌ってくれて(振り付けは完コピらしい)その場が盛り上がったことがある。
女子 サトウチーム
佐藤愛
後藤ゆかり
後藤梨花
山崎朋美
エンパイアというバンドでギターボーカルを務めるサトウのチーム。
ユカリはエンパイアでベースを務めている。
ユカリと梨花は双子の姉妹だ。
ヤマザキは後藤姉妹と仲が良く、合唱部でコーラスが得意なのでエンパイアのライブでコーラスを務めたりしている。
「さてと、チーム決めが終わったようだな。
残り時間はあと10分もある。
迅速に進めて偉いぞ、みんな」
あぐらをかいていたシャノが立ち上がってぶっきらぼうに言った。
偉いのはオトナリだとユウトは思った。
仕切り方がこなれていて感心する。
「時間も余ったし、俺から小話を。
物を瞬時に移動させたり、人を瞬時に移動させたりする空間跳躍という技術、俺がやったからみんなも見ただろう?
この技術は魔法ではないんだよねぇ。
科学技術なんだ。
「高度に発達した科学は魔法と区別がつかない」という地球でよく言われるアレだ。
俺たち魔法軍は科学技術も駆使する。
だが、科学軍は魔法は使わない。
なぜか。
第一の理由は、科学軍の人間は、魔法軍の中心グループである民族シュラフを蔑視し、シュラフが使う魔法も蔑視しているからだ。
奴らの差別感情は凄まじい。
戦争前の時代、俺たちは奴らと同じトイレにも入ってはいけなかった。
なぜ、惑星ババロアのマジョリティは民族シュラフを毛嫌いするのか。
それは、ババロアで信仰されている宗教ババロア教に関係がある。
俺たちシュラフはババロア教の聖書では、下賤の民として描かれてきた。
時には、聖書のヒーローやヒロインの行く手を阻む民族として描かれてきた。
有史以来、俺たちシュラフはババロアの皆から差別されてきたってわけさ。
俺たちが編み出した魔法の技術も、ババロアのマジョリティは悪霊の呪いの技術だと言ってくる。
今回の魔科大戦には、シュラフの名誉と生存がかかっているんだ!」
今まで淡々と話していたシャノが熱くなる。
「あー、失礼。
まあ、魔法軍には、シュラフ以外にもババロア中央政府から搾取され続けてきた少数民族が加わっているんだけどね。
この訓練施設にも、教官兼上官として、ホーク族の有翼種がいる。
翼が背中に生えていて、道具を使わずに空を飛べるんだ。
彼らもババロア政府から迫害を受け続けてきた。
今、ヒマだと思うので、ちょっと呼んでみよう。
セブン?」
シャノの呼び掛けの後、本当に翼が生えた男性がシャノの隣にふっと現れた。
「人を見世物に使うんじゃないよ。
俺の名前はセブン。
おぉ、可愛い女の子がいっぱいいるな」
セブンは彫りの深いイケメンだったが、発言で女性人気を失うタイプだろう。
「今、ヒマじゃないんだよ。
明日以降、ミントが生徒に教える魔法学の講義の準備を手伝ってくれと言われてな。
ミントは頑張りすぎだよ。
もっと適当にやればいいのに」
セブンが内輪話をする。
「女の子の品定めも終わったし、俺は帰るわ」
「セブン、女子生徒に手を出すんじゃないぞ」
シャノが困ったように言う。
「ああ、分かってるよ」
そう言うとセブンは忽然といなくなった。
「続けよう。
科学軍が魔法を使わない理由についてだったな。
第二の理由は、魔法を使うエネルギー源である魔法石が採れる鉱山が、シュラフの実効支配地域にしかないということ」
シャノの説明は続くが、ナカムラが退屈そうにあくびをしている。
「第三の理由は、ババロアを影で支配する巨大軍需企業クルリッツの存在だ。
クルリッツの作る科学兵器は、シュラフの使う魔法とは、全く違う技術系統で作られている。
それで、ババロア中央政府軍が使用兵器に魔法を取り入れると、今までとは全く違う系統の武器を作らなければいけないクルリッツに膨大なコストがかかるからだ。
みんなを巻き込んでしまった理由についてだが……。
地球人はレアな波形の魂を持っていることが多くて、魔法に対する適性が高いからだ。
みんなにも家族や友人がいるだろう。
許してくれとは言わないが、本当に申し訳なく思っている。
今日は魔法暦でちょうど1月1日だ。
戦士養成所での訓練を終え、来年の1月からみんなは戦地へ駆り出される。
戦地では、みんなの生死がかかっている。
勝手なことを言ってすまないが、みんな戦闘に勝って、生きて帰ってこい。
魔法軍が勝った時にみんなで地球に帰ろう」
そこまで話し終えると、「お、もう時間だな。質問のある奴はいるか」とシャノは言った。
「質問という訳ではないが、クラスの皆に謝罪したいことがある」
そう切り出したのは、ユキだ。
「私は元は地球の人間ではない。
魔法軍の人間だ」
ユキがそう言葉を紡ぐと、「えっ!?」などと驚く声でクラスがざわついた。
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