6.ゴミ

A「そろそろ大掃除の時期ですねぇ」

B「誰がいつそんなこと決めたぁ!?」

A「いや誰がとかじゃなくて、部屋を綺麗にして心機一転という日本の風習ですよ」

B「古今和歌集か!? 古今和歌集に書いてあったんか!?」

A「読んでない読んでない!」

B「官房長気取りか!? この低所得が!」

A「言いがかりはやめろ! どしたん急に!?」

B「どうしたもこうしたもねぇ! お前、捨てられるゴミの気持ち考えたことあんのか!? このゴミ野郎!」

A「お前こそゴミ呼ばわりされる人間の気持ち考えろ!」

B「ゴミにゴミって言って、何が悪いんだよ! ただ俺はゴミですら愛する男だけどなぁ!」

A「決して理解されない愛! てか、ゴミに共感してんの?」

B「俺はAと違って物一つ一つに愛着を持ってるだけ! それを大掃除ぃ! みたいな軽いノリで捨てるな! このクズ!」

A「いや、それ言い方じゃん! 軽々しく大掃除なんてできないっす!」

B「口答えするな! 大掃除という名目でゴミを生み出し、ゴミを捨てる貴様こそがゴミなのだぁ!」

A「じゃあ、Bさんはゴミを捨てないんすか?」

B「捨てないね」

A「ゴミ屋敷じゃないですか!?」

B「そんな屋敷なんて大層なもんじゃねぇよ」

A「褒めてねぇ! ゴミ捨てないで生活できます!?」

B「全部、必要なゴミだから」

A「自分でゴミって言うな! ちゃんと断捨離した方が良いっすよ」

B「断・捨・離ぃ!? また無益なゴミを生み出すのか!?」

A「だから言い方! いらない物を減らすっていう考え方ですよ!」

B「この世にいらない物なんて無いんだよ! このゴミ野郎!」


A「うっざ! じゃあ、この紙クズどうすんすか? もう捨てるしかないでしょ?」

B「こんなもん、また広げて絵とか書けばいいだろ」

A「次は空のペットボトル!」

B「さっき書いた絵を貼り付けます」

A「最後に使用済みストロー」

B「はい、貯金箱の完成です」

A「ゴミィィーーーーッ!?!?」

B「どこがだよ!? リサイクルだろが!」

A「純然たるゴミ! ゴミでゴミを作るな!」

B「ゴミじゃねぇ! アイデア工作だぁ!」

A「ストロー持て余した奴が何言ってんだ! この貯金箱に知性を感じないんだよ!」

B「分かった、次こそは傑作を作る」

A「ゴミだったら捨てますからね。じゃあ、紙パック」

B「洗って乾かします」

A「えーと、何かの糸くず」

B「端っこにクリップを付けて、セロテープで紙パックと固定します」

A「使用済み割り箸!」

B「でんでん、でんでん太鼓!」(両手を振り回す)

A「ゴミィィーーーーッ!?!?」

B「ゴミじゃねぇって! エコだから!」

A「予想を下回るゴミィィーーーーッ!?!? はい、もう捨てますからね!」

B「もったいないって! ほら、あげるから!」

A「いらねぇ! どうせ家にもゴミ工作があるんでしょ!? まとめて捨てますよ!」

B「やめろ! このアイデア工作には、たくさんの思い出が詰まってるんだ!」

A「さっき5秒で作ってただろ!」

B「思い出は時間じゃない! これは可愛い子の使用済みストローで、これは好きな子の使用済み割り箸!」

A「気持ち悪りぃ! リサイクルを名目に犯罪するな! 全部捨てるぞ!」

B「嫌だ嫌だ嫌だぁ!」

A「プライドを捨てるな! この変態ゴミ工作を捨てないのなら、僕がBさんを見捨てますよ!?」

B「それはもっと嫌だ嫌だ嫌だぁ!」

A「だったらゴミを捨ててください!」

B「それも嫌だ嫌だ嫌だぁ……でんでん、でんでん太鼓!」(両手を振り回す)

A「死ね!」

B「捨てるゴミあれば、拾うゴミありってな」

A「国語の勉強しろ! どうも、ありがとうございました」

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