5.ダンス

A「最近、太ってきたんすけど」

B「元からデブだったよ」

A「いや、デブじゃないす。最近の話です」

B「出会った時から君はデブだったよ」

A「デブじゃないす」

B「第一印象デブ」

A「デブじゃないす」

B「デブ。そんでブサイク」

A「デブじゃない」

B「デブサイク。影も薄いしハゲ」

A「もうデブでいい! デブでいいからダイエットの話させてください!」

B「痩せたいの? まぁ殊勝な心がけだよね。もう顔はどうにもならないけど、腹の方は努力次第で改善できるから。とは言っても、痩せたところで痩せたブサイクになるだけだけど」

A「その口を閉じろ! しばくぞ!」

B「おおー、怖い怖い。で、どんなダイエットしてんの?」

A「まずは筋トレですね。そして脂肪を落とすためにジョギングもしてます」

B「遅れてるねぇ。そんなんじゃ二度手間じゃん。一度にできる方法あるよ」

A「え、どんな方法すか?」

B「それはダンスです。」

A「ダンスぅ? でも踊れないっすよ」

B「だろうね。君は見た目がブサイクで陰キャだから、そもそも今までの人生でダンスと縁が無いよね。てか、陽キャの集まりに混ぜてもらえないもんね。ごめん、ごめん、俺が悪かった」

A「もう我慢ならねぇ!」

B「やめろぉ! 俺に手を出したら、君の家族もただじゃおかないぞ!」

A「どんな弱みの握り方だ! この駄目人間!」

B「まったく、これだからモテない男の僻みは困る」

A「ふざけんな! ダンスくれぇ、やってやるよ!」


B「言ったな。じゃ、基本のステップからだ。真似してみろ」

A「え? ちょ、これ、どうなってんすか?」

B「ワンボックスもできんとは、絶望的なリズム感だ。死んだ方がいい」

A「言い過ぎでしょ! このくらいじゃ運動にならないっす」

B「馬鹿を言うなカス。これさえできれば、こんなことだってできるぞ」

A「って、それオタ芸じゃないすか! 陰キャの極みでしょ!」

B「今、何と言った?」

A「だから陰キャの極みって」

B「その前だ!」

A「オタ芸でしょ」

B「もっと前だ!」

A「運動にならない!」

B「馬鹿を言うなカス。これさえできれば、こんなことだってできるぞ」

A「やらんでいいわ! 何がしたいんだ!? そりゃオタ芸がハードなのは知ってますけど、どうせなら陽キャに混ざれるダンスがいいです」

B「(突然ハレハレユカイを踊りだす)ブーン!」

A「やかましいわ! 時間の無駄! 陽キャの意味を履き違えてんだよ! 本当はダンスなんて踊れないんでしょ!?」

B「今、何と言った?」

A「踊れないんでしょ?」

B「てめー、もう一度言ってみろ!」

A「踊れないんでしょ!?」

B「もう一度言ってみろ!」

A「言い返せてねーんだよ! もうダンスでダイエットは諦めます」

B「来週のコンサートには来てくれよ」

A「誰が行くか! いい加減にしろ。どーも、ありがとうございました」

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