ここまでプロローグ
さて、所変わって山の中。
河原でおばあさんは洗濯物です。
「よいしょ、よいしょ......」
洗濯機なんてないこの頃。手もみ洗いが基本です。
「よいしょ、ふう。ちょっとした水だまりでも作ろうかと思いましたが、石を集めるだけでも大変ですねぇ。」
洗濯はどこへいったんですか。
「いやぁねぇ、洗濯する水を溜めるために決まってるじゃない。」
ナレーションに口をきかないでください。
というかじゃあ何の為にたらいに入れて来たんですか。
「あら、そうだったわ、たらいがあるじゃない。」
そんなこんなで、やっと洗濯です。
「ふう、まず水を入れて、と......、おや?」
どうしたんでしょう。
「川上から何か......桃?」
どうやら桃が流れてきたみたいですね。
「あらあらこれはなんて大きい。わたしの背丈ほどもあるじゃない。」
ちょっと大きすぎやしませんか。
「これはおじいさんも喜ぶわね。持って帰ってあげましょう。」
よいしょ、とおばあさんは桃を持ち上げ、というか力強いですね、家まで歩き始めました。
あ、洗濯物が洗濯されないまま放置です。
どうするんでしょうか。
そして所変わって家の中。
おばあさんは帰ってきたおじいさんを出迎えます。
「お帰りなさい、おじいさん」
「おお、ただいま帰ったぞ。」
「どうでしたか、芝刈りは。」
「うむ、やはり鎌を研いでよかった、やりやすかったわい。」
「そうですか、ところであちらを見てもらえますか。」
「対応冷たくないかの......、っ!?」
やっと気付いたみたいですね。目はどこについていたんでしょうか。
「なんじゃあ、この桃は......大きいのぉ。」
「でしょう。おじいさんも食べたいだろうと思って持って帰ってきました。」
「おお、確かにこれを食ったらわしも幸せだわい。」
おじいさんは桃を見て顔を
「え? 何を言ってるんです?」
「うん?」
はい?
「食べたいだろうと思っただけで、切ったら私と村の皆でわけるんですよ?」
「え、わしは?」
「お預けです。」
それ預けても返ってきませんよね。
「さあおじいさん、桃を切ってください。」
「切るのまでやらせて食べさせてはもらえんのか!?」
ごもっともです。
「もう、冗談ですよ。さ、早く切りましょう。」
「うむ、そうじゃな。......ところでばあさんや。」
「はい、どうしました?」
「わしの換えの服はどこかの?」
「あ、忘れてました、河原です。」
「忘れるかの普通!?」
「洗濯を」
「しかも洗濯すらしとらんかった!?」
こればかりはおばあさんだけを責められません。主に桃のせいですね。
おじいさんもそれは思ったみたいです。
「はあ......、じゃあ、二人で河原で洗濯しに行くかの。」
優しいおじいさんです。
「え? 嫌ですよ洗濯なんて。私桃運びましたし。」
優しくないおばあさんです。
「はあ......、じゃあええよ、わしがやってくるから......。ほんとになんでこの年まで生きれとるんじゃろうかわし。」
私もそう思います。
そして、おじいさんは川へ洗濯をしに行きました。
何か違う気もしますが仕方ありません。
主人公は、もう少し後にでてきます。
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