第2話

 人間だった時からまだ時間がほとんど経過していないので、半熟卵のような状態だったらしく、妹は「ひやあ!」と叫んだ。半分生っぽい布団というのは感触がグチャっとしていて、1週間ぐらい乾くのに時間がかかる油画とか、1時間くらいかかるマニキュアみたいなもので、形が偏った。

「お母さん、布団が気持ち悪い!」

 気持ち悪いと言われたぼくは傷ついた。そして変形した自分をどう受け止めて、嘆いたらいいのか全くわからない、解釈することの難しさを痛感した。

 このまま元に戻らなかったらと考えるととても混乱した。例えば、地震や山の崩落で家が倒壊し、そのまま埋められていつか誰かが助けてくれるのだろうかという絶望に近い感覚を味わっていた。悲しみ、焦り、怒り、諦め。自分の心の中に、それら全てが混ざらずに一緒に放り込まれている。

 まだ終わりたくわない。叫びたくても声が出ない。そうか、これは、昔に体験した金縛りというやつだ。一度気にせず眠れば全てはもとに戻るのだ。

 妹が騒いでいたが、母はぼくがいなくなって警察に電話をした方が良いのかを父と話しているところらしく、その声が部屋の外から聞こえてくる。相手にしてもらえないことに不満げな妹は拗ねた顔で出て行った。

 とりあえず眠る、そして、いつもの朝が来る。あまりにも現実感のある悪夢から目覚めるために。

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