夜の詩

辰巳杏

夜の詩

ふたつのまるい目が見つめている

街灯に照らされたグレーチングが

島のように夜の海に浮かんでいる


広げた私の手は

輪郭を失い

夜に溶けていった


ふたつのまるい目が見つめている

コンクリートの家と星のない空

公園のフェンスと蜘蛛の巣

夜と混ざり合ってひとつになる


私は夜で

夜は私


ふたつのまるい目が消える

家の鍵を握った手は

輪郭を取り戻していく


あの目は私で

私を見つめていたのだろう

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夜の詩 辰巳杏 @MWAMsq1063

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