第3話 学校が

「逃げるぞ。」


少年はそう言って、窓辺からこっちへ歩いてきて、ヒカリの腕をつかみ、引っ張った。


ヒカリの腕と頭から教科書の束がドサリドサリと床に落ちた。


ヒカリが少年に強く引っ張られ窓辺まで来た。少年は窓の縁に飛び乗り、しゃがんだ。そしてそこから片手をヒカリの胴体に伸ばし抱きあげた。

そのまま空に跳んだ。

一瞬のことだった。ヒカリは感激する暇もなかった。


爆音が二人を追いかけてきた。

ヒカリはその音と衝撃の大きさに思わず目をつぶった。

耳にガラガラという音が入り込んだ。


数秒後、目を開くと、ヒカリは宙に浮かぶ自分の足の下に、崩れ落ちたコンクリートの塊がゴロゴロしているのを認めた。


学校だった。


学校が大破している。


何度望んだことだろう。

「明日学校が台風で壊れていたらいいなー」とか

「雷落ちて崩れないかな」とか。


今それが現実になっている。


何が起こったのか理解出来ないまま、ただ校舎だった瓦礫を見つめていた。


するとヒカリを抱いていた少年が


「アナマリア、ほうきを貸してくれ」

と大声で叫んだのが聞こえた。


「ホラよ」


ヒカリたちより高い空中に浮かんでいたらしい人物から、一本のほうきが投げてよこされた。


少年とヒカリの足の下に、そのほうきはスケボーのように滑り込み、二人を立ったまま乗せた。


ほうきはスゥーッと動き始めると、空の中を流れるように二人をどこかに運んでいった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

黒猫のサブ オレンジ @76-n

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ