第四輪 ユキヤナギ  ~静かな思い~

翌日、いつもの道をを歩いて、登校しているのが。誰かにつけられている気がする。気のせいではない。だって、隠れているつもりだろうが、ばればれの尾行だという事に本人が気付いていないようだ。そう。今、俺を尾行しているのは、昨日助けた彼女だ。どういうわけかなのか。昨日のお礼でも言いにきたのだろうか。それなら、こそこそしないで会いに来ればいいのに。そんな事を考えながら、謎の追跡者とともに学校に到着した。結局、登校中に声は掛けられなかった。

 その日の昼休み・・・。彼女は、廊下から俺の姿を伺っている。

 その翌日、追跡者と登校。放課後、追跡者と下校。

 翌々日、追跡者と登校。放課後。追跡者と下校。

 1週間後。追跡者と登校。放課後。追跡者と下校。

今日の昼休みも彼女は、廊下から俺を姿をうかがっている。

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・い、いい加減にしろー」

ついに俺は、痺れを切らして、廊下にいた彼女の元へと向かった。

「何か、御用でしょうか!」

少し威圧的に話しすぎただろうか。彼女は少し怯えているようだった。

「あー。怒鳴ってごめん。何か用があるなら、直接話してくれないかな」

彼女は、今にも泣きそうだった。今の状況は、かなりやばいのではないだろうか。俺が彼女を泣かせているように見える。

「話があるなら聞くから」

彼女は、やっと顔を上げて、ゆっくりと話し始めた。

「あの、この間はありがとうございました。」

あー、やっぱりお礼を言いに着たのか。予想通りのお礼にお決まりのセリフで返す。

「気にしないでいいから」

「助けて頂いたのに、妹が酷いことまでして・・・・」

俺に飛び膝蹴りを食らわしたのは、彼女の妹だったのか。確かにあれは効いたが、まあ、命に別状は無かったしな。

「あれくらい、何ともないから」

よし、これで無難な対応も終わる。やっと、平和な日常が帰ってくる。

「本当にすみませんでした。あの、これお礼とお詫びなのでが・・・・」

お礼の品か、受け取ってさっさと終わりにしよう。

「ありがとう、有難く受け取るよ」

そういって、彼女から袋をもらい、中を開けると、

「・・・目薬?」

何で、目薬なんだ?入れ間違いではないだろうか。きょとんとしている俺に、彼女は不思議そうな顔を向けている。

「なんで目薬なの?」

「?この間、助けて頂いた時、目を抑えながら、目がーと叫んでいたので、目の病気か何かだと?」

「!!!」

周りから、失笑が聞こえてくる、やめろ。俺の黒歴史を掘り返すな。彼女が目に手をあてて、あのときの事を再現している。

「ちょっと、別の場所に行こうか?」

俺は慌てて、彼女の手を握り、その場から離れた。

「また、告白かー」

そんな様な声が聞こえた気もするが、もうどうにでもなれ。中二病のレッテルを貼られるくらいなら、告白3乙男の方が、まだましだ。

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