第6話〈陰湿な悪戯〉

「どうしたんだ、少年」


「……今、なんて言いましたか」


「え、『大丈夫か少年』と言ったが」


「その前の事を聞いているんです!!」


 背筋が溶融ようゆうするような、苦い緊張が張り詰める空間。既に掃除を終えて、こちらに来ていた少女も、どこか気まずそうに物陰に隠れた。


「君の事をストレングス二ングの使い手だと言った」


「そのストレングなんとかとやらは、一体何なんですか」


 爺さんが前に出てくる。


「言い伝えがあるんじゃよ。〈邪悪に魅入られし者出でる時、勇者と聖者現れん〉とな。簡単に言えば、悪い奴が出てきた時に、それに対抗する勇者と聖者も現れる、と言っているんだよ」


「つまり、僕はその聖者だと」


「そういう事じゃ。さらに言い伝えによると、聖者は勇者の力を助長させる存在だ、とも言われている」


 それだ。それが問題なんだ。


「要は、聖者である僕が勇者をパワーアップさせて、、という流れで合っていますか?」


「まあ、大まかに言えばの。次いでに言うと、聖者は勇者だけでなく、周りの救済軍のメンバーの補佐役も担っておる。つまり、聖者は最強のバックアップ役、という事だ」


 ──ああ、神様。


「……けんな」


「ん?」


 これが僕の定められた運命だと言うのですか。


「ふざけんな」


「な、何!?」


 だとしたら、神様。貴方は、


「ふざけんなぁぁああああ!!」


 

 悪魔だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る