第4話〈腸の調子が超悪い〉

 爆風で平地となった床(だった物)の上で、僕と爺さんはたたずんでいた。


「なあ、少年」


「……はい」


「見晴らしがいいの」


「……はい」


 恐怖で声が震えていた。


「こうなったのはお主のせいか?」


「いや、扉の件については完璧に僕ですが、この爆風に関して僕は何も」


「お主のせいだよな」


 なんだ? 急に暗く……影?


「お主のせいだよなあああああ!!」


 突如響き渡る怒号に、僕は腰を抜かした。そして、次の瞬間、もう一回腰を抜かした。


 爺さんが滅茶滅茶デカくなっている!?


 その大きさは、先ほどの家の屋根に匹敵する程の大きさだった。そして、見るからに先程より体つきが良くなっている。あの小さい老人の面影も無い。


「丁度いい、お主が来てから何故だか力が漲っていたんだ。腹癒せに三発くらい殴らせろ!」


 いや、その拳のまま殴られたら、三発どころか一発で四肢もげますって。


「いくぞこらああああ!!」


 岩のような拳が飛んでくる。電車と勢い大して変わらないんじゃないか。僕が言うんだから間違いない。


 ガキィィィィィン!!


 おお、四肢がもげたらこんな音がするのか。あんまり痛くないな。衝撃が強すぎてまた転生でもしたかな。そんな事を考えながら恐る恐る目を開けてみると、目の前に岩のような拳をしっかりと受け止めた、鎧に身を包んだ男が立っていた。


「怪我は無いか、少年。む、君からは並々ならぬ魔力を感じる……。そうか、君が勇者の言っていた〈補佐〉か」


 へ? 補佐? 何が何だかさっぱりだ。というか、そもそもこの人は何者なんだ。


「あ、あの。何が何だか訳が分からないのですが……」


「そうか、まだ魔力の扱いに慣れていないのか。扱い方は簡単だ。全身に力を入れろ。何か感じるだろう? それを、体から放出するイメージだ」


「い、いきなりそんな超フィーリング的なこと言われましても。何か、いい例えとかを教えてくれませんか」


「例え、か。そうだな、個人的には便をしている時の感覚に似ているかな。こう、下半身にグッと力を入れっ!?」


 爺さんが、掴まれていた拳を開いて、大きなてのひらで鎧の男を鷲掴みにした。かと思ったら、大きく振りかぶって、勢いよく地面に叩きつけた。土煙が舞う。


「邪魔だ小僧! わしはそこにいるガキに用があるんじゃ! わしの家を木っ端微塵にしたガキになぁ!」


 だ、だから僕じゃないんだってば。とにかくその魔力の放出とかをやってみないと!


「むっ ……こ……のくっ……くっ……!!」


 来た……、来たぞ……! 感じる、感じる! いくぞ、放出するんだ!


「う……うおおおおお!!」


 プップスウウウウゥゥゥゥゥゥ

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