第3話〈やらかした〉

 爆発で、大きくえぐれてしまった穴の中央に、鎧に身を包んだ男と赤い長髪の少女がたたずんでいた。


「おい、クレア。貴様は加減というものを知らんのか」


 そう言いながら、鎧の男は穴をよじ登る。


「うっさいなー、あたしが一番驚いてるっつーの。こんなに火力出たの初めてだわ。大体、只のミノタウロスがあたしのフレアランスで死ななかったのよ。ここら辺、何だか変だわ。居るだけで妙に魔力が漲ってくる」


 そう言って少女は空を飛び、男を抜かした。


「確かにそれは分からんでもないが、今は任務に集中しろ。はあ……何で俺がこんな小娘と組まなければいけないんだ。あの新しい勇者、自分は何もしないくせに命令ばかりで嫌になる。本当にあんな奴が勇者を受け継ぐ者なのか……」


 お互いに、穴を登り(昇り)終えた。


「……あたしは嬉しいけどね」


 うつむきながら少女はポツリと呟く。


「ん、何か言ったか?」


「別に! 何でもないわよ馬鹿!」


 頬を赤らめて、少女はそっぽを向いた。


「なっ、貴様に馬鹿呼ばわりされる筋合いは私には」


 そう言って男は固まる。


「どうしたのよ」


「……おいクレア、私達が向かっている民家までの距離はあと百メートルくらいだよな」


「ええ、そうよ。どうしたの、あたしに確認取るなんてあんたらしくな」


 そう言って、少女も固まる。


「ここら一帯はほとんど平地で、家なんて無いよな」


「ええ」


「あの燃えている家らしきものは何だろうか」


「「…………」」


「「魔力全開」」


 一人は、かつて無い速さで家まで飛んで行った。片方は、文字通り飛んで行った。

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