第27話スケベの代償

 ――ゼンがパリセミリスに話しかけていた頃、オスターの南東でも彼らが大暴れという名の作戦を開始していた。


 レジスタンスの半数を引き連れ、私たちは街の南東にやって来ていた。

 普段私は金属鎧に身を包んでいるのだけど、今回の任務は鎧を着用して来ることができなかった。


 理由は簡単、街に潜入するのに鎧なんて着用していたら目立って潜入にならないもの。

 もちろん自身を守るためのレイピアは持参してきた。

 これさえあれば問題ない。


 所定の位置に着き、レジスタンスのメンバーがパリセミリス兵に襲いかかり、敵を誘き出すのを待っているところ。


 レジスタンスの数名が、夜勤疲れで交代を待っている眠たそうなパリセミリス兵に襲いかかった!

 さぁ、血の祭りの始まりね!


 奇襲だぁーと騒ぐ仲間の声を聞いて、欠相欠いたパリセミリス兵が大勢でどこからともなく駆け込んできている。


 雑魚には興味はないけれど、強者を誘き出すため、このレイピアで突き殺してあげるわ。


 前方から駆け込んでくるパリセミリス兵に、私も正面から突撃をかける。

 腰からレイピアを抜き取り、ロングスカートをなびかせながら、颯爽と敵の懐へと潜り込み、一突き二突きと敵の目を突き、足を突き鮮やかに葬る。


 数名のパリセミリス兵が地面に倒れる光景を見て、剣先に付いた血をサッと払う。

 私を見るパリセミリス兵は明らかに動揺している。

 女である私に無数の男が瞬殺されたというだけで、そんなにも驚愕することかしら?


 私は男たちを睥睨し、ニヤリと微笑む。

 体中がゾクゾクし、そうこの瞬間こそが堪らなく私を興奮させる。

 まさに至福の時!


 怯え切った子犬たちに私は話しかける。


「どうした? 来ないの? あなたたちが来なくても私の方から行くから問題ないのだけど」


 私は思わず高笑いを上げ、周囲にいるパリセミリス兵に斬りかかった。

 男たちは戦場で背を向けている。


「化け物だぁああ!」

「悪魔だぁああ!」

「死にたくないぃいい!」


 なんて愚かな行為! それでも一国の兵か!

 私はレイピアをクルッと回し、背を向けた臆病者から殺していく!


 だが、逃げる男たちの中、いやらしい笑を作るスキンヘッドの男が、槍を手に近づいてくる。

 お目当て登場かな?


「女剣士か? うまそうだな」


 私の体をいやらしい目で下から上に舐め回すように見て、下品に喉を鳴らしている。


「今すぐ剣を捨て、こちらに来るなら俺の性奴隷として生かしてやってもいいぞ?」


 このハゲはなにを言い出すかと思えば、くだらない!

 それにこんなゴリゴリのハゲ好みじゃない。

 死んでも嫌だ!


「あんた自分の顔鏡で見たことある? 酷くブ男よ!」


 ハゲはまさに茹で上がったタコのように赤面し、怒り狂っている!


「決めた! お前はここで犯してやるよ! その服をひん剥いて大勢の男に見られながら喘ぎ声を上げさせてやる!」

「ゲスな変態が! やれるものならやってみろ! 先にお前のその小さなモノを切り落としてあげるから!」

「ほざくなぁああ! 小娘がぁああ!」


 ハゲは手に持つ槍で強烈な突きを放ってくるが、私は刀身で槍先の軌道を変え、男の槍をあしらう。


「っクソ! 舐めた真似しやがってぇええ!」


 ハゲは槍を横になぎ払うと同時に突っ込んでくる。

 私は跳躍して回避するのだが、スカートの丈が長すぎたせいか、ハゲにスカートを掴まれた。


 男はやらしい笑を汚い顔に張り付け、私のスカートを剥ぎ取りやがった!

 ハゲと周囲を取り囲むパリセミリスの男たちから、かんに障る歓喜が上がる!


 私は歓喜を上げる周囲の男たちを睨みつけ、すぐにハゲを睨みつけた。

 ハゲは剥ぎ取った私のスカートに顔をうずめ、スカートを舐めている。

 本当に虫唾が走る!


 今すぐ殺したい、この場にいるすべて者を今すぐに!


「ハァー。へへ、いい姿じゃないか。ストリップショーの続きでもやるか?」


 どうやらこのゲスは本気で私を怒らせたようだ。

 私はレイピアを突き出し、ハゲに突きつけた。


「全力で行くぞハゲ!」

「全力? そんな細いレイピアなんぞ刺されたところで、蚊に刺されたのと大差ないわ!」


 含み笑いをするゲスに、本物の苦痛を教えてやる。

 私は目を見開き、目にも止まらぬ突きを繰り出す。


「人技! 死へのカウントダウン!」


 私の高速の突きはハゲの太ももに突き刺さり、私はすぐにレイピアを抜き取り後方へ飛んだ。

 男は私を捕まえようと腕を伸ばすが、私は捕まらない。

 男は太ももから流れる血を見て嘲笑っている。


「なにが人技だ! お前程度の女が人技など繰り出せるものか! この程度痛くも痒くもないわ!」


 ハゲの言葉に私は微笑み、語りかける。


「あら、そう?  ではなぜあなた吐血しているの?」

「っは!」


 男は槍を持たぬ手で口を拭い、手に付いた血液を見て目を見開いている。


「なにしやがったぁああ!」


 死にゆく者への情けで私は教えてあげた。


「死へのカウントダウンは、私のレイピアが対象者へと突き刺さったとき発動する。体のどの箇所に刺さっても、心臓、肺、肝臓、腎臓、膵臓、小腸などあらゆる臓器を一箇所だけ確実に破壊する! 何突き目で心臓に……いえ、力尽きる方が先かしら?」


 ようやく私の人技を理解したようで、ハゲは取り乱し、文字通り猪の如く猪突猛進してくる。

 戦場で絶対にしてはいけないこと、それは冷静さを失うこと。

 冷静な判断を失った者を殺すことは実にたやすい!


 私はそれから二度、ハゲにレイピアを突き刺した。

 もちろん、死へのカウントダウンを用いて!

 三度目の突きでハゲは息絶えてしまった。


 運悪く三度目で心臓に当たったのか、三箇所破壊され死に絶えたのかは、解剖してみないことには知りえない。

 知る必要もないけれど。


 さぁ、私の下着姿を拝んで興奮していたゴミを皆殺しにする時間が来たわ。

 私は周囲の男たちに微笑み、戦慄する者たちにレイピアを振るう。


 みっともなく喚き、命乞いをする者たち。

 一人も許さないし、逃がす気もない。


「私を辱めた代償は、お前らのチンケな命で払いなさい!」

「ぎゃぁぁああああ!」


 戦いは始まったばかり、下半身は下着姿になってしまったが問題ないわ。

 丸見えってわけじゃないしね。


 アルの奴も上手くやってるといいんだけど。

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