第25話作戦開始と俺の恨み

 ――救出及び、オスター奪還作戦決行当日。


 朝の6時、俺はアインたちレジスタンスと共に、セドリックとルナがいる街の北側に位置する建物の2階に待機している。


 セドリックは窓から南の方角を見ている。

 窓から外を眺めていたセドリックが、次の瞬間俺の顔を見て小さく囁いた。


「始まったようだ!」




 ◆



 俺の名はゼン。

 元はセスタリカの貴族の出だが、憎きパリセミリスに全てを奪われ山賊に成り下がった。


 だがそんな俺に奇跡が起こる、アイーンバルゼンの王子、アルトロが俺の腕を買い、家臣にしてくれたんだ。

 俺だけじゃない、山賊だった者全員をアルトロは受け入れてくれた。


 いくら感謝してもしきれない。

 この恩に報いるため、俺は彼のために刀を振るうと決めた!


 そして今、俺はここオスターで彼のために刀を振るう!


 朝の6時、リリアーナとレジスタンス約250人の仲間と共に、街の南西へやってきた。

 皆所定の位置につき、俺は呑気にあくびをするパリセミリスの兵へと近づいた。


「暇そうだな?」

「あぁぁ? なんだお前?」


 間抜け面のアホが、鼻をつまみたくなるような口臭を撒き散らしている。

 この不細工をとっととぶち殺すか!


「お前らアホを殺しに来たんだよ」

「はぁ? なにい――」

「臭い喋るな!」


 パリセミリスのアホが何かを言いかけていたのだが、あまりの臭さに持っていた太刀を抜刀し刎ねてしまった。


「何してんだてめぇぇえ!」

「敵襲だぁぁああああ!」


 そうだ! もっと騒げ!

 我が主の元からひとりでも敵を引き付けるんだ!


「我が名はゼン=マクロング! 貴様らパリセミリスを滅ぼす者なりぃぃいい!」


 声を荒げると同時に、目の前のアホを2匹ほど刎ねてやった!

 その光景を見ていたパリセミリスの兵は次々に剣を抜き、四方からうじゃうじゃと大量に駆け込んでくる。


 もっとだ! もっと来い!

 

「恨みを、我が憎しみを、パリセミリスのアホどもにくれてやるわぁぁああああ!」


 駆け込んでくる憎き男たちを、俺は斬って斬って斬りまくるだけだ。

 周囲を見渡すとレジスタンスの連中も暴れているようだ!


「なめるなぁぁああ!」

「このイカレ野郎がぁぁああ!」


 奇声を上げ駆け込んでくるアホなど取るに足らん。

 俺の太刀は柄の部分を入れると2メートルと長い、さらに俺の身長は190以上だ!


 貴様らのようなチビでは俺の元に刃が届く前に、貴様らの首が地に着くのが先だ!

 俺に恐れをなし、10数人で取り囲みながらも攻めて来ない。


 だがそれは更なる阿呆だ!

 俺は腰を落とし、太刀を肩に構えた。


「人技! 首刎ね地蔵!」


 10数人が一斉に俺の太刀へと吸い寄せられ、俺は一回転し、一斉に首を刎ねてやった。


「どうだ見たか! これが俺の首刎ね地蔵だぁぁああ!」


 そう、俺の首刎ね地蔵を止めれるわけないんだ!

 止めたアルトロがどうかしてるんだ!


「どけぇええ!」


 馬鹿でかい声が聞こえたと思ったら、仲間の兵を押しのけ、巨大な斧を振り回す巨漢が現れた。

 目の前のデブは味方すらも斬ってやがる。


 間違いない、アインの言っていた手練の一人だろう。

 上手く誘き出せたということか!


「ひょろいチビがアリんこ斬ったくらいで調子に乗ってんじゃねぇーぞ!」


 確かに俺よりでかい! 2メートルは超えているか?

 おまけに幅もでかい!


「スマートな俺がそんなに羨ましいのか? おデブちゃん!」


 俺はデブに真っ直ぐ剣先を突きつけ、ホントのことを言ってやっただけなのだが、気に障ったようでおデブちゃんはカンカンだ。


「お前今なんつったぁぁああああ!」

「ぁあ? 聞こえなかったか? おデブちゃん? おデブちゃんだと女にもモテないだろう、童貞か? ワハハ」


 俺はおデブちゃんに最高にいやらしい笑いをプレゼントしてやると、おデブちゃんは顔を真っ赤に染め上げ、怒気を上げ怒っている。


「お前はただでは済まさない! 両手両足切り落とし、全裸にして息絶えるまで馬で引きずってやる!」

「そうして欲しいのか? わかった、両手両足切り落としてから首を刎ねてやるよ! 望みを叶えてやるんだ、優しいだろ俺?」

「くそがぁぁあああああ!」


 俺の言葉に相当お冠のご様子で、巨体を揺らしながら巨大な斧を振り回してきやがった。


 俺はそれを後方へと躱してやる。

 ズドーンと馬鹿でかい音を立てた斧で、地面は粉砕されている。

 こんな巨体の振り上げる斧をまともに刀で受けていたら、俺の腕がイカレちまう。


 だが問題ない、確かに威力はあるがこいつ自体が遅すぎる。

 いくら威力があっても当たらなければ意味がない。


 おデブちゃんは怒りに顔を歪めながら睨みをきかせ、地面から斧を引き抜いた。


「一発振り下ろしただけでもう息切れかい? お・デ・ブ・ちゃん」

「ハァハァ、殺す殺すコロス、ごろずぅぅううう!」


 正面から走り込み、斧を振り下ろしてくる単調なおデブちゃんの斧を躱し。

 おデブちゃんの背に乗っかっり、まずは斧を持つ右腕を切り落とす。


「ぎゃぁぁあああ!」

「豚の鳴き真似かぁ?」

「だじゅげで……ぐだじゃい」


 痛みと恐怖で泣き叫ぶデブの横顔から顔を覗かせ、睨みつけ、そっと囁いてやる。


「お前たちは俺の故郷を、家族を殺した悪魔だ。殺すに決まってんだろ!」


 俺は宣言通り、残りの腕を切り落とし、両足を切り落とした直後、おデブちゃんの首を刎ねてやった。


 その光景を目にしていたパリセミリスの兵は、俺と目が合うと震え上がっていた。

 だが俺が手を止めることわない。

 憎き敵をひとりでもこの手にかけるため、主君の元へ行かせないため、俺は鬼と化す!

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