第16話報告
ココル村にやってきて既に一ヶ月が経ったのだが、あれ以来パリセミリス兵が襲ってくることはなかった。
捕虜として捕らえていたパリセミリス兵は、王都タリスタンからやってきたセスタリカ兵へ引渡し、セスタリカ兵がどこかへと連行していった。
きっとセスタリカは情報を引き出すため、城へ連れ帰り拷問にかけるのだろう。
俺はこの一ヶ月、アリアとシスターアイシア攻略に奮闘していたのだが、成果はイマイチだ。
アリアに関して言えば、さっぱりだ。
それに、アリアは一週間ほど前からフレイたち側近を連れ、どこかへと出かけて以来、帰ってきていない。
俺に一言もなく出かけたことからもわかるように、やはり信用はされていないのだろう。
フレイには多少は信用されてはいると思うのだが、主であるアリアがあの調子ではどうしようもない。
もちろん、俺も完全にアリアを信用していたわけじゃない。
アリアが黙っていなくなることも、ある程度は予想できていた。
というのも、パリセミリス兵をセスタリカの兵へ引き渡して以降、アリアの様子がおかしかったのだ。
パリセミリス兵を拷問し、手に入れた情報をどこからか仕入れていたのだろう。
それが分かっていて何もしないほど俺も馬鹿ではない。
アリアたちがいつ勝手にいなくなってもいいように、あらかじめ元山賊のスネークたちに監視をさせていたのだ。
しかし、アリアたちがいなくなり既に一週間が過ぎたというのに、スネークたちからの連絡はない。
一体どこで何をしているのやら。
便りがないのは元気な証拠とは言うが、戦時中のこの国ではそれは不吉とも言えるのではないだろうか。
今はスネークたちの連絡を待つしかないので、今日も飛空艇の自室で、シスとリリアーナの二人を両腕に寝かせている。
当初、リリアーナにシスと三人で寝ようと提案したときは「あたしのこと好きって言っておきながら他の女がいるなんて聞いてない!」とブチギレて大変だったのだが、今ではシスとかなり仲がいい。
今ではこのように三人で事を済ませ、三人で寛ぐ事が多くなっている。
早くこのパラダイスにシスターアイシアも加えるように、今日も口説きに行く。
そのためにこの素敵な時間を終わらせ、ベッドから出て服を着る。
俺が服を着て出かけようとすると「どこに行くの? あたしも行く」と、リリアーナがついてくるのだ。
これだからシスターアイシアの攻略も捗らない。
待っていろと言ってもリリアーナは聞く耳を持たない。
ひょっとしたら俺のパラダイス計画に気づき、これ以上増えないように阻止しようと企んでいるのではなかろうな!
可愛いのだが、少し厄介な女だ。
リリアーナと二人で飛空艇から村に行き、村の中を歩いているのだが、リリアーナは俺の腕を組み離そうとしない。
これではリリアーナを撒いてシスターアイシアのもとに行けないでわないか。
かと言って可愛いリリアーナを邪険に扱いたくもないし、どうしようかと考えていると、セドリックがこちらに向かって駆けてくる。
「アルそこにいたのか!」
「そんなに慌てて何かあったのか?」
「アリア様たちの動向を探っていたスネークたちが帰ってきたんだよ! 既にアーロン隊長たちが広場に集まっている、アルも来てくれ!」
やっと帰ってきたかあのモヒカン!
一週間も待ったんだ、なんの報告もなかったら怒るぞ!
俺の腕にベッタリと寄り添うリリアーナと共に広場に行くと、俺の到着を待っていたスネークが神妙な顔で立っている。
一週間前、村を出て行った時とは違い、明らかに衣服がボロボロになっている。
俺はスネークにすぐに報告するように急かした。
「何があった? アリアは帰ってこないのか?」
スネークはひと呼吸置き、芳しくない顔で話し出した。
「それが……アリア様は敵兵に捕らえられました!」
「なにぃいい!」
スネークの第一声を聞き、つい声を荒げ驚いてしまったが、驚いているのは俺だけではない。
アーロンもみんなも、困惑の表情を浮かべている。
捕まったとはどういうことなのだろう、アリアたちは一体どこに行き、何をしていたのだろう。
スネークに詳しく事の経緯を話すように促す。
「どういうことか詳しく話せ」
「――実は」
スネークの話を聞くとこういうことだ。
アリアは俺たちが捕らえていたパリセミリス兵が、王都タリスタンに連行されたあと、拷問によって得た情報をアリアと密かに内通していた貴族から情報を得ていた。
そこまでは俺の予想通りだったのだが、その内容が問題だったという。
パリセミリス兵の話によると、ココル村から馬で三日ほど行った街、オスターにセスタリカの第三王子、つまりアリアの兄が潜伏していた街があったのだが、オスターは既にパリセミリスに落とされ、アリアの兄が捕らえられていたのだという。
そのことを知ったアリアは兄の救出に向かったのだという。
アリアたちは街に着いてすぐには救出には当たらず、街の中で情報を集めようと潜伏し、街の領主を務める貴族と接触したのだが、その貴族は既にパリセミリス側に寝返っていたという。
まんまと騙されたアリアたちは、そのままパリセミリス兵に捕らえてしまったというわけだ。
一言でも俺に相談していてくれれば、こんな最悪は避けられたのに、だがアリアとの信頼関係を築けなかった俺にも責任はある。
俺はセスタリカの王、アリアの父に娘は任せろと大見得を切ったのだ、それがこの有様では、マーディアル家の名を汚してしまう。
それどころか俺のアリアの命すら危うい。
だが今すぐに殺されることはないだろう、一国の姫なら殺すより利用した方がいいのは当然だ。
だが時間がない、急がねばアリアの身柄を別の場所に移されるかもしれない。
俺はアーロンたちに迷うことなく命令する。
「すぐにオスターに向かうぞ!」
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