TEL XXX-XXXX-003 私の家のメリーさん

Call16 妙な夢と奇妙な現実




──………──


 私は、線路を歩いていた。

 レールの間を歩く私は、延々と鳴り続ける踏み切りの音を気にしながら、ただ前に進んでいく。

 後ろから何かの這いずる不気味な音が、聞こえて来ていたから。

 これは夢なんだって、どこかで実感してるはずなのに……妙にリアリティのある音が、私の耳にこびりついている。

 でも、振り返ったらいけないんだって、そう本能が囁いたから、私はそれに従って、砂利を踏みしめながら暗いレールの間を歩き続けた。



 それでいいはずだった、それで終わるはずだった。



──……ケ……──


 

 なのに、聞こえた声で私の足は止まってしまう。

 


──……タスケテ── 



 這いずる何かは泣いていたから。

 ただ助けを求めていたから。

 だから私は振り返った……振り返ってしまった。



 私は知っていたはずなのに……。

 それは関わったらいけないはずのものだって。



 にんまりとした醜悪な笑みが、振り返った私の顔の前にあった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 ピピピピピ!!



 朝。


 スマホから流れる目覚ましの音。

 まだ眠くて、寝返りを打つ私の耳に、それはしつこいほど聞こえてくる。

 ばふ……と布団に潜ると、聞こえる音は小さくなったけど、消えるわけじゃない。

(うるさい……)

 目覚ましに設定したその音を止めるには手を伸ばさないといけない、それすらも億劫で……うーっと、私はベッドで呻く。



(誰か目覚まし止めて……)



 今日は夢見が悪くて、夜中に一度起きてしまっている。

 どんな夢だったか忘れたけど……また寝付くまで時間がかかったから、正直寝不足だ。

 だから寝たいし、目覚ましも止まってほしい。

 そんな事を布団にくるまり願うけど、無駄だということはわかっている。

(遅刻とかどうでもいいから寝たい)

 とか思っても、手を伸ばさなきゃ目覚ましは止まってくれないのだ。



 いつもなら。



 手を伸ばすべきか否か……もぞもぞと蠢いていた私が手を伸ばす前に、スマホの目覚ましが勝手に止まる。



(およ?)



 なに? お父さんが止めてくれた?

 布団の中でぼんやり考える。

 でもお父さん今日会社だし……勝手に止まった?

 疑問は浮かぶけど、この際どうでもいい。

 勝手に目覚ましが止まってくれたなら、あとは寝……。



「るーるー」



 うん?

 聞こえた声に、私は布団の中でしぱしぱと目を瞬きさせる。

(あれれ? 気のせいかな、今……)

 不吉な予感……気のせいだよね今の声。

 気のせいだと信じて布団で二度寝しようとした私に、可愛らしく透き通った声が聞こえてきた。



「おはよう。わたしよ、メリーさん」



 な……。



「うえぇぇー! なんでうちにいるのー!?」



 がばっと、布団から身体を起こした私に見えたのは……。

 見馴れた部屋の中、私の眠るベッドに腰掛けて笑う金髪蒼目の女の子……メリーさんの姿だった。



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