call4 そして二人はオトモダチ
鋭い爪が、肌を裂く。
「……っ」
けれど爪が、喉を突き破るようなことはない。
軽く押し込まれ、肌が切れただけだ。
爪だから殺せない……とは不思議と思わなかった。
メリーさんはきっと、その気になれば私を殺すことができた。
か細く震える私の喉元から、メリーさんの指が引かれる。
「それでもいいわ、るーるー」
それはどこか寂しさを感じさせる声。
私はゆっくりと、涙の滲んだ目を開ける。
「え?」
「どんな理由でもいいから、オトモダチになって」
「いいの?」
青い目が、私を見た。
悲しげな表情を、メリーさんは浮かべている。
「でも、わたしを捨てないで……」
「ちょ、ちょっと……」
メリーさんは今度は私を抱き締めると、そのまま耳元で話してくる。
「わたしは決してあなたを捨てない、だからあたしを捨てないで……」
囁くような声、同性とは言えなにか気恥ずかしい。
だけど、そんな気持ちは次に聞こえた言葉ですっと冷えた。
「もし捨てたら、ばらばらにするから」
「……!」
メリーさんは、となに食わぬ顔で身体を離す。
ばらばら……きっと本気だ。
私は都市伝説はよく知ってる、だから分かる。
メリーさんは、自分を捨てた人間に復讐した人形だ。
『深夜二時のメリーさん』は人形じゃないと言われているけれど、それが事実とも限らない。
……もし都市伝説が事実で捨てられた人形だったり、似たような事情があったなら……きっと友達であっても、メリーさんを捨てることは許されない。それはメリーさんを復讐に駆り立てた時と、同じことをすることになるのだから。
私から離れる時……メリーさんは冷たい目をしていた。
だけど、どこか寂しそうだった。
きっと、捨てるなというのは、メリーさんの本心。
「…………」
身体は震えているけれど、私は覚悟を決める。
(全然、気楽に付き合えるオトモダチじゃないみたいだよ? お母さん)
お母さんから聞いた話と随分違う現実。
でも、都市伝説の数々を考えればこれでも優しいくらいかもしれない。
都市伝説に踏み込んだのは私だ、後悔なんてしてやるものか。
お母さんの為に、そのために彼女に近付いた私と……思ったよりも危険だった『深夜二時のメリーさん』。
私達の関係は、おおよそ普通のお友達とは違う、歪な状態で始まった。
これは不思議な想い出話。
私と彼女が培った、友情の話。
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TEL XXX-XXXX-002
夢見ヶ丘中学七不思議
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