第9話 儂は驚愕したよ!(7)

「ねぇ、お父さん……。不動産屋さんに調べてもらったら、どうやら家の残金が残らず売却出来そうだと言っているから。前にもうちがお父さんに言った通りで、今は家のローンの方も遅れ気味になっちょるから、売ってもいいよね?」


「えっ、あああ、うん、いいで、売っても、ローンの残金が残らんのなら……」


「ん? あああ、残金の方は全然残らん……。それどころ、賃貸マンションの敷金礼金と引っ越し代の方も出るくらいは、プラスが出るみたい……」


 まあ、こんな感じで、元女房と儂は会話をして結論を出した。


 儂のお城を売却することを……。


 後はこれでもか? と、思うぐらい話しがトントン拍子に進み、一か月も居れない状態で売却の手続きも終わったのだよ。


 でッ、後俺のする事と言えば、荷物の無くなったガ~ン!とした。元儂の城の各部屋を掃除をするのみ。


 だから儂は、これでもか? と、傍から見ても思うぐらい大変に丁寧に掃除……。


 するとね、儂自身、購入したての頃の家の思い出が脳裏に、走馬灯のように流れてきたよ。


 特にあの頃の儂は若いから、何でも出来ると思っていた。


 だから活力もあったのだよ。


 それに嬉しさの余り儂は、毎日仕事から帰ると部屋の隅々を掃除して回ったよ。


 儂の元女房が呆れるぐらいにね。


 だからさ、本当にその頃の若い儂自身の事を思い出すと、本当に涙が出た──掃除しながらだけれど。


 だからかな?


 雑巾で床を何度も拭いてもね、いつまで経っても床が乾いてくれない。





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