第5話、それはまたもやお前で。
さてと、大都会K市にやって来ての初バトルも無事に終わった事だし、初日目にしてしっかり給料も頂いた。現状、完璧という訳では無いが上手く引越しの準備は進んでいる。
今後の予定としては、地道にフラワーを倒しつつ奴らを生み出しているボスを見つけ出し、そして倒す。
「にしし、さっさとボスを倒してぇなぁ。さてと、残りの預金はいくらかな……っと」
念の為にスマートフォンを取り出し、星座バンクのアプリから自分の通帳を確認した。あとどれ位変態出来るのか、どのくらいの食事なら取っても良いのかを確認する事で、これからについて考えるためだ。
「今日はあまり変態時間も長くはないし、他の星座の力も借りてはいないからな……」
案の定、消費された金額はマクドナ〇ドでハンバーガーを食べたくらいで済んだようだ。ハンバーガー一つ奢ったらお礼に3000円貰ったと考えると、黒字だろう。
「でも、出来るだけ早くバイトを見つけて金稼がないとな……」
預金はまだまだ沢山ある、一ヶ月は生活出来るくらいだろうか。節約生活もそろそろ終わりにして、食事制限も終了してしまおう。都会ともなれば時給だって上がるはずだし、何より引越しのことは親以外誰にも話していない。借金取りに見つかる可能性だって低いはずだ。
「引越し前にたっぷり金借りてて良かったぜ」
俺の住む田舎で少し有名なヤクザから、俺はヒーローという肩書きを利用して多額の金を借りたのだ。金額にしてなんとニンテンドースイ〇チが買えてしまう値段だ。そんな大金を借りてしまうなんて、なんて罪な男なんだと自分を責めてしまうが、それ以上に新生活の準備や
しかし、
「な、なんだ!? ま、まさか借金取りか?」
ヤバい、ヤーさんがもう俺の引越しを嗅ぎつけて閉まったのだろうか。どうしよう、現在現金はこの3000円しかない。畜生、今日こそ牛丼を食べようと思っていたのに、また今日もご飯抜きになるのか。それとも変態を封印して金を下ろすべきか。いやいや、そんな事をしたらいざという時大変だ。それにヒーロー活動をサボっているともなれば、ヒーロー協会は黙っていないだろう。星座の方々も俺がお金を使わないと分かれば契約を解除してしまうかもしれない。
という事は、3000円でなんとか借金取りを誤魔化し乗り切るしかない……。
「ど、どうしよう……こ、怖いなぁ……」
恐る恐る柱から改札口を覗くと、突然背後から声がかけられた。
「
「ひぃっ! ってなんださっきのハゲジジィかよ。お前には関係ないだろ!」
「い、いえ。本当に3000円で足りるのかなと心配になって……ちゃんとご飯食べてる?」
ん? 何を言っているんだこのオッサンは。もしかして俺に金を恵んでくれるという事だろうか。まさか、もしそうだとすれば……聞いてみる価値はある。
「オッサン、もし俺がもう少し必要だって言ったら、お金くれるのか?」
「えっ、無理だよ、だって私が今持ってるお金、その3000円だけだもん」
はいクソ。さっさと仕事行けよ。というか、金出せないなら何のために着いてきたんだ。
イライラとオッサンを睨みつけると同時だった、今度はハッキリと改札口から女性の悲鳴が聞こえてきた。
「た、助けてくださいッ!
ん?
「待たせたな!」
相手が
「変……態ッ!」
まさか本日二度目の変態になろうとは。おかげでたった一日で6000円も儲けることが出来る。幸福に満ち足りた気分のまま、俺は全身にアーマーを纏って改札口を飛び越えた。さぁ、さっさと倒して金をゲットだぜ!
「よく聞けフラワー! 俺の名前は、」
「げっ、貴様は鬼龍院刹那ッ貴様は!」
聞き覚えのある声に、俺の決め台詞は掻き消された。この声、まさか。
「ハーデンベルギア!?」
そこに立っていたのは、紛れもなくハーデンベルギアだった。先程俺が倒したはずの、紫色の花が寄り集まった見た目の怪人。
「えっ、なんで貴様がここに居るのなんで」
「それは俺のセリフだよ。なんでお前がここに居るんだ……ってかなんか小さくね?」
「えっ、俺様はさっき貴様に殺られた時生き残った花を掻き集めて、成長しようかなと……あれ、ここもしかしてさっきの駅? やべ、逃げ切れてなかった?」
どうやら、生き残りで身体を形成したらしい。通りで小さいわけだ。それにしても何たる生命力。まさかたった一日で二度も同じ怪人に会うとは思いもしなかった。
「えっと……とりあえず、元気?」
「お、おう、俺様は元気だぜ俺様は」
思いがけない再会に戸惑う二人だったが、とりあえず変態中の金が勿体無い。
「元気か、良かった良かった。まぁ、とりあえず星になれ。トランスパンチッ!」
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