第724話 武闘会開催!
開催前に皇帝のトレディアとフェンが、魔物騒動で亡くなった者達に追悼の意を表した。
そして、一連の騒動について説明を始めた。
納得出来ない者も居たかもしれないが、エルドラード王国の国王であるルーカスも直々にオーフェン帝国の国民に対して、トレディアの説明に間違いが無い事を伝える。
最後に、フェンが狐人族も被害者だという事と、今回の件で狐人族を虐げるような真似は禁ずる事を、強い口調で話した。
武闘会が開催された。
凄い盛り上がりだ。観覧席に居る俺でさえ、観客の熱気が伝わってくる。
参加人数は、全部で百三十八名。
全ての試合をすると終わらない為、予選会を行っていた。
四つのグループで、上位二名のみ本戦に出場出来るようだ。
そして、武器や魔法の使用禁止。
純粋に肉体のみで戦う。
確かに、明らかに実力不足の奴も居る。
そう言う奴は予選グループに分けられた時点で、実力の差を感じて早々に棄権していた。
事前に棄権しない者達も、いざ会場に立つと場違いだと感じた者達は、開始早々に会場を降りて棄権していた。
少し高くなっている舞台から落ちたりすれば失格になるのは、参考にした天●一武闘会と同じだ。
この武闘会だが、俺にとって嬉しい誤算もあった。
武闘会を観戦していると、戦っている者達がスキル名を言う。
内容を理解すると同時に、俺もスキルを習得する。
今、第一グループの予選会をしていたが【柔軟】や【硬化】、【超回転】等を習得した。
魔法に関しては、詠唱もする。
俺は使えそうにないスキルは、スキル値に変換する。
アデムにスキル値振り分け修正をして貰った事を、心から感謝した。
獣人族ならではの珍しいスキルも幾つかあった。
使えそうなスキルは、削除せずに一旦、保留と言う意味で残す。
人間族の俺が使用出来るかは別の問題だが……。
第二グループの予選会が始まると、明らかに大きな獣人族が居る。
俺と同様にルーカス達も驚いていた為、トレディアが『熊人族』だと教えてくれた。
熊人族は繁殖能力が、他の獣人族と比べて低い。
女性の生まれる確率は、十人に一人らしい。
人間族と性交渉しても、他の獣人族より妊娠する確率は低いそうだ。
絶滅するかも知れないが、種族の問題なので、国が関与し辛いそうだ。
しかし、戦闘能力はかなり高い。
一撃でも攻撃を貰えば、致命傷になる程だ。
確かに、両手を振り回すだけで、面白いように参加者が吹っ飛んでいく。
あれだけ強いのに優勝候補になっていないのには、理由があるのだろうと俺は思いながら、第二グループの予選会を見ていた。
第三グループの予選会は、スタリオンが居た。
他の参加者と力の差が歴然としていた。
やはり、なんだかんだ言いながらもスタリオンは強いのだと感じた。
そして、最後の第四グループの予選会。
一人だけ女性が居る。彼女がローレーンなのだろう。
この大会で唯一の女性参加者だ。
他の参加者も、女性が武闘会に参加する事を良く思っていないようだ。
戦いの場に立てば、皇族だろうが関係ない。
案の定、開始の合図と共にローレーンは多くの参加者から狙われていた。
しかし、ローレーンも自分が狙われる事を予測していたのか、冷静に対応していた。
ローレーンの実力は明らかに、他の参加者よりも上だった。
女性だと馬鹿にして襲い掛かった者達を、簡単に退けている。
小柄な体格を生かした体運び。
それに上手く攻撃を受け流したりしている。
あの戦い方は、師匠であるレグナムから教わったのだろうか?
予選会が終了して、本戦出場者八名が決定する。
昨夜、前夜祭で紹介された優勝候補者五人は全員本戦へと駒を進めていた。
ここからはトーナメントになる為、くじ引きを行う。
大きく分けて二つのブロックに分かれている
対戦相手が決定する度に、観客は歓声を上げていた。
少し休憩時間を挟んで、本戦が開始される。
休憩時間も、観客達の興奮が冷めていないようだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
本戦が始まる。
予選会と違い、実力者同士の戦いになる為、見所満載だ。
本戦もスタリオンは圧倒的な力で進む。
ローレーンも同じように一回戦は勝ち進むが、二回戦で勝ち進んできた熊人族と対戦する。
大男と小柄な女性。
今までに無い対戦カードに、観客達は一層盛り上がっていた。
熊人族は『グリズリー』と紹介されていた。
俺は「そのままの名だな」と思いながら、紹介を聞いていた。
観客の大半はグリズリーを応援している。
もっとも、観客の大半が男性という事もある。
グリズリーは怪力で、ローレーンを襲う。
叩きつけた拳で、床が砕ける。
破片が飛び散り、グリズリーの拳を避けたローレーンに破片が当たり、体勢を崩す。
グリズリーはその一瞬も見逃さずに、ローレーンを追撃する。
ローレーンも体勢を崩しながらも、直撃を避ける。
予選会で見せたような攻撃の受け流しは、グリズリーのような怪力には相性が悪いのか、使用している様子が無い。
グリズリーも素早く動くローレーンを上手く捉える事が出来ないようだ。
状況が一変したのは、ローレーンが攻撃を仕掛けようとした時に、グリズリーが破壊した床に足を取られて一瞬、行動が遅れる。
グリズリーも攻撃を仕掛けようとしていたので、ローレーンは避け切れずに、グリズリーの攻撃を受けて、後方に飛ばされた。
辛うじて会場に止まるが、グリズリーの次の攻撃には耐える事が出来ずに、会場の外へと飛ばされ敗北した。
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