第703話 魔人達の正体!

 王都に出現した魔人達を全て討伐する。

 俺は緊急会議に招集される。


 国王であるルーカスに護衛衆と大臣、王国騎士団団長のソディックに冒険者ギルドグランドマスターのジラールが居た。

 俺はシロとクロの三人で会議に参加する。


 今回の事件で、死者十八人が出たと発表される。

 俺とシロで、怪我人の治療をしていたので、破壊された規模の割には少ないとルーカスは話す。

 その後、王国騎士団の聞き込みにより、魔人化した者達は全て狐人族だと判明する。

 当然、原因は不明だ。

 しかし、俺には思い当たる事があった。黒狐人族だ。

 質問する条件は揃っているので、俺は【全知全能】に「王都で魔人として暴れた者達は黒狐人族か?」と質問すると、肯定する回答だった。

 何故、魔人化したかを続けて聞くと、驚愕の回答だった。

 黒狐人族に強制的に魔素を送った為、魔人と化したそうだ。

 ブラクリにしか出来ない筈だと思いながら、質問を続ける。

 回答は、「他の者が対応した」だった。

 その他の者とは、プルガリスだった。

 プルガリスと黒狐が繋がっている事が分かった。

 そうであれば、ブラクリと接触していた老婆は、間違いなくプルガリスだろう。


 俺はルーカス達に、あくまで俺の仮説だと言って話をする。

 魔人化した狐人族は、街に諜報員として生活していた黒狐人族で、魔人化した理由は第五柱魔王のプルガリスの仕業だ。

 そして、他の街でも同様に魔人が出現している可能性があるので、すぐに確認する事を話す。

 ルーカスの指示で大臣が各領地と連絡を取ると、他の街でも同様に魔人が暴れる事件が起きていた。


 王都以上に被害が大きかったのは、ダウザーのルンデンブルク家が統治する『魔法都市:ルンデンブルク』だった。

 王都と違い、冒険者しか居ない為、六体の魔人に対して討伐する時間を要してしまった事が被害の拡大に繋がったようだ。

 大臣は主要都市の他に、村等でも被害が無かったかを確認していた。

 俺の仮説は、他の街や村で出現した魔人が狐人族であれば、少しは信憑性があると思っている。


 魔族からの攻撃。

 ルーカスは、今回の事で魔族に対して、国民が今迄以上に嫌悪感を抱くと思っていた。

 しかし同時に、狐人族が魔人と化した事を公表すれば、狐人族が差別対象となる事も危惧している。

 ルーカスが出した結論は、魔人化したのは狐人族だという事を公表せずに、魔族と内通していた人達が、魔族の罠に嵌り一斉に魔人化したと言う事だった。

 人族が魔人と化す事を公表する事に、大臣は反対する。

 当然だろう。国民の不安を煽る事になるからだ。

 昨日まで、親しく話をしていた人達が突然、魔人になり自分達を襲う。

 この事実は、公表しなくても、実際に体験した人から人へと伝えられていく。

 噂が広まり、間違った情報が伝わるのは、ルーカスとしても本意ではないのだろう。


 大臣からの連絡で、この事件はエルドラード王国だけでなく、オーフェン帝国でも起きていたようだ。

 シャレーゼ国とは、連絡体制が確立されていないので、状況は不明のようだ。


 ルーカスから状況を再度確認出来次第、必要な者達を召集する事で、一旦会議は終了する。


 俺は、会議中から気になっていたことがあった。

 黒狐から抜けようとしていた人達の事だ。

 シロには、シャレーゼ国の港町プレッセに居るララァと、タラッシュ。

 クロにはズーズイ村に滞在していたクレメンテとパトレシアそれに、テオドラ。

 それぞれの状況を確認して貰う事にする。


 俺はシャレーゼ国の状況を確認する事にする。

 戦力で言えば、シャレーゼ国で魔人が出現した場合、対抗出来るのは難しいだろう。

 もしかしたら、今も討伐出来ずに暴れている事も考えられる。


「タクト!」


 俺が移動しようとすると、ジラールに呼び止められる。


「なんだ? 急ぎの用でないなら後にしてくれるか?」

「急ぎといえば急ぎだ」


 ジラールの用事は、再度召集が掛かった場合、意見を聞きたいから一緒に参加して欲しい事だった。

 俺は「分かった。詳しくは後で連絡をくれ」とだけ言い、ジラールと別れる。


 シャレーゼ国に居る元黒狐を探しながら移動する。

 移動中に、ジーク領のリロイに連絡をして、ジークの被害状況を確認する。

 驚いた事に被害は極少数であった。

 ゴンド村に居たアルとネロが異変に気付き、被害が大きくなる前に魔人を討伐したそうだ。

 小さな子供が、自分達の街を助けてくれた事で、正体不明の小さな子供達は「何者だ!」と言う噂で街中が騒いでいる。

 助けて貰った人の証言では、『龍人族』だったとか、『自由に空を飛んでいた』等とはっきりと、アルとネロを見た者達も居た。


 俺はアルとネロに連絡をして礼を言う。

 アルもネロもジーク領が、俺の気に入っている街だと知っているので、「弟子として当たり前」と頼もしい事を言ってくれた。

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