第704話 予期せぬ状況!

 シロから連絡が入る。

 プレッソ村は、ほぼ壊滅状態になっており、生存者は居ないそうだ。

 ララァとタラッシュも魔人化したようで、目的も無く彷徨い、破壊行動を繰り返しているようだ。

 俺はシロに、魔人化したララァとタラッシュの討伐を頼む。


 そして、クロからも連絡が入る。

 スーズイ村に、クレメンテ達は居なかった。

 俺達が訪ねた後に、三人でスーズイ村を旅立ったそうだ。

 数キロ探索したが、クレメンテ達は発見出来なかった。

 子供であるテオドラと一緒であれば、そんなに遠くまで行けるはずも無い。

 魔人化したとしても、破壊されたような場所も見当たらないと、クロは報告する。


 どういう事だ?

 黒狐人族だった者は皆、魔人化している。

 クレメンテとタラッシュも例外ではない筈だ。

 何か嫌な予感がする……。


 俺は【全知全能】にスーズイ村に滞在していたテオドラという狐人族の子供の場所を聞くが、回答は「不明」だった。

 不明という回答が良く分からない俺は、同じように質問をして「生きているか?」と聞くが、【全知全能】からの回答は「不明」だった。

 何故、不明という回答なのかが分からない。

 その後も、質問内容を変えながら、色々と質問をするが殆どが「不明」だった。


 テオドラの質問は一旦、終える。

 シャレーゼ国の元黒狐についての質問に変える。

 この質問には【全知全能】は答えてくれたので、居場所が判明する。

 シャレーゼ国の中心都市でもある『都』だ。


 人間族しか居ないシャレーゼ国しかも、都に獣人族が居る事等想像していなかった。

 俺は都に向かった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 以前よりも、多少は活気があった。

 魔人が暴れた様子も無い。

 もしかしたら、黒狐人族全員が魔人化すると言うのは間違いなのだろうか?

 一刻も争う事なので、国王であるネイラートに伝えるべきなのだが……。


 仕方が無いので、城の前まで行く。

 案の定、門番が居るので中には入らせて貰えない。

 門の前で考えていると、門番に明らかに怪しいと思われたのか睨まれる。


「何か用か?」

「用はあるんだけど、中に入ってもいいか?」

「駄目に決まっているだろう」


 当たり前の事を言われる。

 【転移】や【隠密】を使えば、簡単に進入出来る。

 しかし、他国で勝手に城に侵入するのは、流石にまずいと思っている。

 悩んでいると、不審者に認定されたのか、門番が威圧的に俺を追い払おうとする。

 彼は悪くない。自分の仕事を忠実にこなしているだけだからだ。


「待ちなさい!」


 門の奥から声を掛けられる。


「その方はタクト様です。国王様の恩人にあたる方です」


 見覚えはあるが誰だか分からない男性に助けられる。

 彼は六道衆の一人で『ファビアン』と名乗った。

 六道衆と言えば、ネイラートの側近兼、護衛だった気がする。


「突然、訪問されるとは急用ですか?」

「あぁ、エルドラード王国とオーフェン帝国も被害に遭っている事件があって、その事で聞きたい事があって来た」

「……分かりました。国王様には私から話しておきます。少々、お待ち頂けますか?」

「あぁ、悪いが頼む」


 偶然とはいえ、助かった。

 門番は俺に失礼を働いたと思ったのか、顔色が悪かった。


「気にする事ないぞ。きちんと、仕事をしていただけだろう」

「はっ、はい」

「処罰も無いから、安心しろ」


 俺は笑うが、門番に笑顔は無い。

 前国王の時代であれば、失敗等をすれば即、死刑だった。

 その名残が、今も続いているのだろう。


 俺はファビアンに案内されて進む。

 城の中は、以前と変わりない。

 街への復興に力を注いでいるからだろう。


「昨日か今日で変わった事は無かったか?」

「変わった事でですか……」


 俺はファビアンに歩きながら質問をする。

 ファビアンは、人が爆発したと教えてくれる。

 ネイラートが国王になり、獣人族との差別化を徐々に取り払おうとしている。

 人間族以外には人権が無かったシャレーゼ国。

 獣人族も元奴隷として数人居たそうだ。

 彼らも人権が認められるが、簡単に受け入れて貰える事は出来ないので、獣人達だけで暮らすように数件の家を分け与えられる。

 その家で、年老いた獣人族の一人が突然苦しみ出したかと思うと、体がバラバラに飛び散ったそうだ。

 おかしな事に、その獣人族は兎人族だった筈なのに、苦しみ出すと狐人族に変化したそうだ。

 兎人族から狐人族?

 カルアと同じ【変化】のスキルを持っていたという事か?

 しかも、プルガリスの手下が治めていたシャレーゼ国だった為、黒狐も手を出してこなかったのだろう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る