第702話 魔人達の攻撃!

 シロとクロの絵から、手配書の様な物を作成するようだ。

 絵は下手だと思っていなかったが、シロとクロの二人が異常なまでに上手い為、自信を喪失する。


 部屋の外から大きな音がした。

 窓が無い為、何が起きたか分からない。

 ルーカスは、何が起きたかを確認するように命令する。

 俺達も動こうとしたが、ルーカスが「待機しろ」と言うので、ルーカスの言葉に従う。


 暫くすると、ロキサーニが兵士と話を始めた。

 そして、ルーカスの所まで駆け寄り、耳打ちをする。


「それは、本当か!」

「はい、間違い御座いません」


 ロキサーニは頷く。

 街に突然、数体の魔人が出現したようだ。

 街は混乱しているだろう。


 ルーカスは、ギルド会館へ討伐の応援要請を出すよう側近に命令する。

 そして、俺とステラに街へ行って魔人討伐するように言う。


「ステラ、行くぞ」

「えぇ」


 俺は、街の中央付近に【転移】する。

 そこで見たのは、破壊された家屋と、無差別に破壊を繰り返す魔人。

 魔人の出現場所は王都内でも、離れていた。

 破壊活動して離れた感じではない。

 出現した場所が違うと考えるのが、正しいだろう。


「此処は私が何とかします。貴方は別の魔人討伐に向かって下さい」

「一人で大丈夫か?」

「当たり前です。私はエルドラード王国護衛衆の一人です」

「分かった」


 ここは冒険者ギルド本部から近いから、冒険者達の応援も期待出来るだろう。

 それに、王国騎士団達も討伐に加わる筈だ。


「主!」


 クロが叫ぶ。


「可能か?」

「いえ、原因は分かりませんが、あの魔人を影に取り込む事が出来ません」


 クロに捕獲して貰い、場所を移して倒す事を考えた。

 それはクロにも伝わったようだったが、クロでも捕獲が難しいそうだ。

 今迄、クロが取り込めない事は一度も無かった。

 それ今回出来ない……何かが、クロのスキルに干渉しているのは間違い無い。


「仕方が無いな……」


 見える範囲で魔人の数を数える。

 十七体か……

 魔族が王都に攻撃を仕掛けてきたのか?

 それにしては、大雑把過ぎる。

 もしかして、この魔人達は陽動する為の囮で、本命は別に居るのか?

 とりあえず、俺はシロとクロに「一人で倒せるか?」と聞く。

 二人共、問題無いそうなので、俺達はそれぞれ魔人を一体ずつ討伐して行く事にする。


 魔人と言っても、二周り程大きい感じだ。

 俺自身、魔人について詳しくないので、魔人と言っても種類があるのだろうか?

 アルやネロも魔人だが、目の前にいる魔人とは種族自体が違う。

 


 一応、話しかけてみるが言葉が通じない。

 やはり、無差別に破壊を繰り返すだけのようだ。

 首を切り飛ばすと、その場に崩れ落ちる。

 近くで怪我をした人々を治療して、次の場所へと移動する。


 三体目の魔人を殺そうとすると、近くにいた子供が俺に向かって叫ぶ声が聞こえた。


「お姉ちゃんを殺さないで!」


 俺はその声に攻撃の手を止める。

 俺に向かい叫ぶ、子供は怪我をしながら泣いていた。

 自分も怪我を負っていたが、それ以上に魔人の事を気遣っているようだ。


「どういう事だ!」


 俺は子供に向って叫ぶ。

 子供の言う事を信じて、被害の出ないように力で押さえつける。


「その人は隣の家のお姉ちゃんなんだ!」

「隣の家の?」

「うん。突然、苦しんだと思ったら、大きくなって暴れ出したの」


 子供の言う事が本当であれば、魔人は元々、街の人だった事になる。

 昨日まで、普通に街で暮らしていた人々が突然、魔人になる原因はなんだ?

 俺が知る限り、人族が魔人なるには、黒い玉しか思い浮かばない。

 黒い玉……もしかして!

 

「おい、この人は何族だ!」


 俺は子供に聞く。


「狐人族です」


 狐人族。もしかしたら、黒狐人族で諜報員だったかも知れない。

 しかし、話を聞く限りだと、自分の意思とは関係無く、苦しみ魔人になったようだ。

 黒狐人族の強化薬のせいだとは考えにくい。


「どうやら、無理矢理魔人になったことで苦しんでいる。早く苦しみから解放してやりたい……」


 俺は子供に嘘をつく。


「文句なら後で幾らでも聞いてやる。だから、殺す」


 俺は子供の回答を聞く前に、魔人を殺す。

 残酷だと思ったが、これ以上被害を大きくして怪我人を増やす事は出来ない。

 子供も、その事は分かっているとは思う。


 近くの怪我人を治療して、叫んだ子供も治療するが泣きながら罵倒される。


「殺さなければ、他の人達がもっと死ぬ事になる。そうすれば、もっと悲しむ人が増える」


 俺がそう言うと、その場で子供は大きな声で泣き続けていた。

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