第687話 勇気と決断!

 ルーカスに呼ばれたので、シロと指定された部屋へと移動をした。

 部屋にはルーカスの他にアスランと、護衛衆が居た。

 俺は護衛衆が居る事には、正直驚いた。

 ステラが「話しても良い」と言う決断をしたのだろう。

 ルーカスが全員揃ったのを確認すると、話し始めた。


「ステラ。お主の口から説明をしてくれるか?」

「はい、畏まりました」


 ステラは、今回の休暇についての説明を始めた。

 最初に、自分の生い立ち、そして黒狐との事を話す。

 時折、辛そうに話すステラだった。

 記憶を思い出すのも辛かったのだろう。

 自分の事を話し終えると最後に、俺が黒狐を滅ぼす事を聞いたので、自分の手で復讐をしたいと真剣に伝えた。


「二人だけで大丈夫なのか?」


 セルテートが心配そうに話す。


「タクトが大丈夫と言うので、私はその言葉を信じるつもりです」


 ステラの言葉にセルテートが俺を見る。


「問題ない」


 俺が答えるとセルテートは、それ以上は何も言わなかった。


「その黒狐について、詳しく説明して貰えますか?」


 ロキサーニがステラに聞く。

 ステラが回答する前に、ルーカスが自分の口から話すと言う。


 黒狐とは黒狐人族と呼ばれる者達の集団で、黒狐人族とは体の一部に黒狐の証である紋章を刻んでいる。

 黒狐人族とは、普通の狐人族よりも身体能力等が高い。

 見た目的にも紋章以外は、見分ける方法が無い。

 黒狐は犯罪集団で、暗部にも調査を依頼していたが、調査の最中に暗部の者が殺される事もあるそうだ。

 大きな犯罪には、黒狐が絡んでいる事が多いが確証を得られないそうだ。

 ルーカスも黒狐の存在は知っているし、危険視している。

 暗部には継続して調査を依頼しているが、新しい報告がなかなか入ってこなかった。


「そもそも、ステラは分かるが、タクトが黒狐を攻撃する理由は何だ?」

「あぁ、知り合った奴が黒狐に追われているので、助けようと思っているだけだ」

「それだけか?」

「それだが、どうしてだ?」

「いや、もっと複雑な理由でもあるのかと思っただけだ」


 ルーカスは俺が、大きな事件でも追っていた際に、黒狐と接触をしたのだと思ったのだろう。

 しかし、発端は個人的な理由にしろ、ステラのように被害を受けた者達が居る。

 それだけの理由だと思うかもしれないが、俺にとってはその理由だけで十分だ。


「監視に暗部でも、つけるつもりか?」


 ルーカスとしては、気になる筈だから監視を付けたいと思っているだろう。


「よいのか?」

「ステラ次第だ」


 俺はステラの方を見ると、ステラは静かに頷いた。


「では、ステラに暫しの休暇を与える」

「有難う御座います」


 ステラはルーカスに頭を下げる。


「必ず無事に戻ってくるように」

「承知致しました」


 ルーカスはステラを見た後に、俺の方を少しだけ見た。

 ステラが無茶な事をしないように、監視するようにだと感じた。

 時間が来たようで、ルーカス達は退室して、部屋にはステラに、俺とシロしか残っていない。


「それでは、行きましょうか」

「あぁ、そうだな。その前に作戦を話すが、いいか?」

「はい」


 現在、三つある拠点のうち、一つは攻略出来ており今夜、二つ目を襲撃するつもりだと説明する。

 但し、黒狐の者は誰も殺さずに捕獲している。


「……分かりました。因みに、その場所までは、貴方の転移魔法で移動をするつもりですか?」

「そうだ」


 冒険者ギルドのグランドマスターであるジラールには、俺の【転移】は知られている。

 ジラールから、ルーカス達に報告したのだろう。


「用意が出来たら声を掛けてくれ」

「分かったわ」

「俺はさっき待っていた部屋に居るな」

「えぇ……」


 そう答えるステラの表情は、強張っているように見えた。

 長年の願い、いや、恨みが晴らせると思うと、今迄に感じた事の無い気持ちになっているのだろう。


 とりあえず、クロと合流をしてから今後の話を詰める事にする。

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