第686話 言えない理由!

 ルーカスにイース、アスランと護衛衆が揃っている。

 ステラが集めたようだ。

 ルーカス達は、ステラから集まった詳細な理由を聞いていないようだ。


 俺が到着した事で関係者が全員揃ったのか、ステラが皆に説明を始めた。

 まず、護衛衆の任を数日だけ外して欲しいと話す。

 その数日間は、俺と行動を共にする事も話した。


「理由は何だ?」


 ルーカスがステラに訊ねる。


「個人的な理由になります」


 ステラは答える。


「詳しくは教えて貰えぬのか?」


 ルーカスは困惑した表情だ。


「……この場では、御話出来かねます」


 時間をおいて、ステラはルーカスに答える。


「それは例の件に関係するのか?」

「……はい」

「分かった。いつからになる?」


 ルーカスの質問にステラは俺の方を見る。


「明日からと言うか、すぐでも問題ない」


 ステラの代わりに俺が答える。


「分かった。ステラの願いを聞き入れよう。タクトは、連絡があるまで城で待機するように」


 ステラとの事で説明が欲しいのだろう。

 この場では、ステラが詳しい事を話せないと分かっているからこそ、別の場を設けたのだろう。


 ロキサーニとセルテートの二人は、ステラの個人的な理由を俺が知っている事と、護衛衆の任を休んでまで、俺に付いていく事に不満を感じているかも知れない。


 しかし又、暇な時間が出来てしまった……。

 もう一度、城の復旧作業を手伝いに行こうかと思ったが、すぐに呼び出されるかも知れない。

 その場合、かえって迷惑を掛けてしまうかも知れないので、待機用の部屋で大人しくする事にした。



 部屋には俺一人だけなので、特にする事も無い。

 クロに黒狐人族の捕獲の事を確認すると、黒狐の頭目が居る集落から、一番遠い場所にある集落に居る者達は全て捕獲したそうだ。

 俺は【全知全能】で黒狐人族で黒狐という組織に所属している人数を聞く。

 答えは六十六人。

 その内容をクロに伝える。

 クロは頭目が居ない集落は今夜、一気に捕獲すると答えた。


 天井を見ながら時間が経過するのを待っている。

 ……退屈な時間だけが過ぎていく。

 

 シロから戻って来ると連絡がある。

 誰も居ないので、姿を見せても良い事を伝える。


「御主人様、ただいま戻りました」

「おかえり」


 シロからスタリオンの情報を聞く。

 まず、ユキノには恋心が無いそうだ。

 綺麗だとは思うが、手を出そうと考えると、悪寒が走る感覚があるそうだ。


「それと面白い話を聞きました」

「面白い話?」


 各地に散っていたスタリオンの兄弟達も、武闘会に出場するそうだ。

 実力主義のオーフェン帝国だからこそ、この武闘会で優勝すれば現在のスタリオンの地位を奪えるのだろう。

 一夫多妻制のオーフェン帝国なので、何人の兄弟が居るのか気になった。

 派手な兄弟喧嘩が見られるのだろう。

 ただしフェン曰く、スタリオンよりも強い者は居ないし勿論、俺に勝てる猛者も居ないと諦めた口調で話したそうだ。


「御主人様はレグナムと言う冒険者を、覚えておいでですか?」

「レグナム? ……ジラールが前に言っていた、俺に似た変わり者の冒険者だな」

「はい。スタリオン様の御兄弟の一人がレグナム様を師事しているそうです」

「師事? レグナムはオーフェン帝国に居るのか?」

「いいえ、各地を転々としているそうですよ」

「そのスタリオンの兄弟に冒険者が居るのか?」

「さぁ、そこまではフェンにも聞いていません」


 ランクSSの冒険者で、ジラールが俺と気が会うと言うレグナム。

 気になっている人物だったので、記憶に残っていた。

 もしかしたら、レグナムに会えるかと思うと、オーフェン帝国へ行く楽しみが増えた。


 俺はシロにフェンとの事を、聞いてみる。

 シロは昔ほど、鬱陶しく付き纏われる事が無くなったので、状況的には改善されていると喜んでいた。

 シロを困らせると、俺が怒ると思っているようで適度な距離間で接してくれているそうだ。


「御主人様のお陰です」

「そうか。少しは仲良くなれそうか?」

「さぁ、どうですかね?」


 シロは笑顔で話す。

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