第678話 神々達!

「元気だったかな?」

「はい」


 俺を呼び出したのは、上級神アデムだった。

 椅子に座り、テーブルに肘をつき、指を組んだ手に顎を乗せて、微笑んでいる。

 後ろには中級神モクレンと、ポンコツ女神エリーヌが立っていた。

 三人揃って会うのは初めてだ。

 しかしモクレンは、何処と無く浮かない表情だ。

 エリーヌは相変わらずだ。俺に笑顔を向ける。

 暫く見ていない間に成長しているかと思ったが、無理な期待はしない方が良いと思った。


 呼ばれた時点でも嫌な予感しかしないのに、顔ぶれを見て予感が的中したと確信する。


「シャレーゼ国にも、エリーヌを神として認めさたようだね」

「国としてでなく、個人としてですが……」

「いやいや、それでも色々と頑張っていてくれて、本当に感謝しているよ」

「有難う御座います」


 本題から入らずに世間話。しかも、俺を褒めるような話から始めた。

 絶対に面倒な話が、この後に出るのだろう。


「あの、本題は何でしょうか?」

「そうだね……実は今日、君に残念な事を伝えないといけないんだよ」

「残念な事?」

「うん。前にモクレンが君を第六柱魔王にしたよね」

「はい。魔王を六人誕生させない為にですよね」

「そう、それが問題なんだよね」


 どうやら、モクレンが良かれと思って、俺に施してくれた事がアデムは気に入らないようだ。

 神の関与という類になるのだろうか?

 モクレンが浮かない表情をしていた理由が分かった。

 俺が呼ばれる前に、アデムから指摘されたのだろう。


「結論から言うと、君から第六柱魔王の称号を外して、今迄通りに戻すから」

「拒否権は無いんですよね」

「うん、そうだね」

「分かりました……」

「ありがとう」


 俺から第六柱魔王の称号が外される。

 アデムとモクレンの間で、意見の相違なのか?

 後ろのモクレンは、申し訳なさそうにして俺を見ている。

 となりのエリーヌは「私は関係ない」と思っているようで、笑顔のままだった。


「魔王が六人揃った時の事は知っているかな?」

「はい、以前にモクレン様から説明を受けました」

「そう。では、僕なりにもう一度詳しく説明するね」


 初代エルドラード国王であるフレッド・エルドラード。

 彼が事の発端になる。

 『魔王』と言う称号を誕生させて、魔王同士の戦いで世界を混乱にさせて、勝ち残った一人も【殲滅】で殺戮生物に変貌を遂げて、世界を破滅させる。


「ここまでは、モクレンの説明と同じだよね?」

「はい」

「では、【殲滅】は与えていけない【恩恵】と言う事も知っているよね?」

「はい。それもモクレン様から御聞きしています」

「うん。私は【殲滅】に関する一切の情報を回収する事にしたんだよ」

「どういう事ですか?」

「ガルプは【殲滅】の【恩恵】を与えるという禁忌を犯した。部下の失態であれば、上司である私がフォローするのが当たり前だよね」

「そうですね……」

「エクシズで【殲滅】の事を知っているのは君一人だけだ」


 確かに魔王達や、フレッドの本を読んだルーカス達も、この事は知らない。

 アデムは俺の記憶を消すのでなく、【殲滅】の【恩恵】を回収すると話す。

 その結果、魔王が六人揃ったとしても問題が起きる事はない。

 俺はこの説明で何故、アデムが俺から『第六柱魔王』の称号を取ったのか納得出来た。

 一応、フレッドの本を呼んだ者達には、俺が内容を説明するそうだ。

 その方が後々、面倒な事にならないとアデムは話す。


「説明の際に【殲滅】という言葉は使用してもいいんですか?」

「出来れば別の言葉で説明してくれるかな。例えば【破壊】とか【滅亡】ね」

「分かりました。【殲滅】は使わないように説明します」

「ありがとう」


 アデムは笑顔のまま、表情を変える事無く、俺に礼を言う。


「但し、いい事ばかりではないんだよ」


 【殲滅】の条件である六人の魔王。

 つまり、六人しか誕生する事が無かった魔王が、七人以上誕生する事も可能となったのだ。

 条件さえ揃えば、誰でも『魔王』を名乗る事が出来る時代が訪れる事になる。

 魔王になったからといって、ステータスが向上する事もない。

 称号が増えるだけだ。

 しかし『魔王』の存在は、人族の脅威になる事は間違いない。


「私達の目的はエクシズの繁栄と、エリーヌの名を広める事なんだよね」

「はい」

「もし、世界を破壊しようとする者が現れたのであれば、私達から君達に依頼をするから、その時は協力して欲しい」

「はい、私でよければ協力させて頂きます」

「ありがとう。君なら、そう言ってくれると信じていたよ」

「その……第五柱魔王は、アデム様の言われる世界を破壊する者には、ならないのですか?」

「あぁ、ガルプスリーの事ね。彼の力では世界を破滅させるには、程遠いから安心していいよ」

「それは、アルやネロが倒してきた魔王よりも、第五柱魔王が弱いと言うことですか?」

「結論的には、そうなるね」

「分かりました」


 俺の直感だが、アデムは何か隠している気がした。

 ガルプスリーこと、プルガリスを放置しておくだけの理由が何かあるのだろう。

 これ以上、聞いても無駄だと思ったので聞く事を止める。

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