第581話 祝いの品!

 マリーに前夜祭の話をする。

 案の定、叱られた。

 しかし、俺もさっき聞いた事と、伝達ミスは国王であるルーカスだと言うと、黙ってしまった。

 続けて、四葉商会の他にもヴィクトリック商会も参加する事を伝える。


「当然よね。ヴィクトリック商会は、国内でも大手だし、逆に出来たばかりの四葉商会が呼ばれた事の方が奇跡よ。まぁ、原因は分かっているから、敢えて言わないけど……」

「そうか。だけど、マリーの苦手な代表の娘には会わないだろうから、安心だろう」

「……あのね、タクト。私の言っている娘は今、副代表なのよ」

「そうなのか! もし、マリーがヴィクトリック商会の副代表と会いたくなかったら、俺一人に変更して貰うぞ」

「ありがとう。でも、大丈夫よ。四葉商会の副代表でいる限りは、早かれ遅かれ会う機会は訪れるわ」


 マリーのこういった感じが俺は気に言っている。


「まぁ、マリーを馬鹿にしたら、俺が黙っていないからな」

「はいはい、期待してるわ。それよりも前夜祭って、手ぶらで行って良いのかしら?」

「さぁ、どうだろうな。グランド通信社のヘレフォードに聞いてみる。もし、必要であれば俺が用意しておく」

「そうね。タクトに任した方が常識外れで、誰もが驚く物を持って行きそうですものね」


 マリーが笑いながら話す。


「服は新調しろよ」

「大丈夫よ。この間のがあるから」

「いいや、駄目だ。もしかしたら、前にも着ていたと難癖付ける奴がいつかも知れない」

「そういうタクトだって、いつもの服でしょ?」

「……確かにそうだが」


 人の事ばかり言って、自分の事を忘れていた。

 マリーに申し訳なく思い、とりあえず謝る。

 前夜祭は夜からなので、当日の昼に迎えに行く事でマリーも了承した。


 俺はマリーとの連絡を切ると、すぐにグランド通信社代表のヘレフォードに連絡をする。


「お久しぶりです。タクト様」

「こちらこそ。今、話をしても大丈夫か?」

「はい。大丈夫です」


 俺は前夜祭の事をヘレフォードに聞いた。


「手土産というより、国王様へのお祝いの品が必要ですね。商人として貴族様達に売り込む機会になります。一応、商人ギルドから参加しておりますので、呼んで頂いた御礼の挨拶等も致します」

「案外、面倒なんだな」

「確かにそうかも知れません。しかし、商人としては顔を売るには良いチャンスです」

「成程な。しかし、挨拶か……参ったな」


 丁寧語が【呪詛】のせいで喋れないとはいえ、印象が悪くなるのは間違いない。

 矛先が俺でなく四葉商会、マリーや従業員に向けられるのだけは阻止したい。


「挨拶はマリー様に任せては如何ですか? 必ずしも代表が挨拶するという事はありません」

「そうなのか?」

「はい。タクト様の【呪詛】の関係で、マリー様が代わりに話されるのであれば、問題無いでしょう」

「成程。助かった、ありがとう」

「いえいえ。四葉商会様には色々と助けて頂いておりますから」

「ところで、土産は何を持って行くんだ? 答えにくければ、答えなくてもいい」

「隠すような物では御座いません。それに四葉商会様に協力頂いた品です」

「俺達が協力した?」

「はい。冒険者ギルドに提供する魔獣図鑑です」

「……何故、それを土産にするんだ?」

「それは簡単な事です。全ての魔物を調べた実績とそれを書籍化した事が、大きな事なのです」


 実際に調べたのは、四葉商会というかシロだ。

 その四葉商会と組んで、魔物と言う生き物を詳細に記した書物。

 これがあれば冒険者や、護衛の者達でも事前に対応が可能となる。

 つまり、国の死亡者数が減る事に繋がるという事らしい。

 一応、マリーには事前に相談をするつもりだったそうだが、俺が連絡をしたので、この場で承諾する。


「他の会社は今迄、何を持って来ていた?」

「そうですね……」


 ヘレフォードは思い出しながら答えてくれた。

 各会社の得意分野である物が多いらしく、ヴィクトリック商会は珍しい食材や食品が多いそうだ。

 珍しい食材や食品を装飾品に入れるそうだ。

 ジョウセイ社は装飾品になるが、部屋に飾れる壺や絨毯等になる。


「それで四葉商会様は、何を持って行かれるのですか? 個人的にも興味が御座います」

「いや、何も決めていない。だから、聞く為に連絡をした」

「そういう事でしたか。四葉商会様であれば、新技術の紹介を兼ねた試作品や、珍しい食材でも良いのでは無いですか?」


 確かにそうだ。

 新技術であれば、マリーも絶賛していた『洗濯機』がある。

 食材であれば、俺が今から調達する事だって可能だ。


「ありがとう、助かった。マリーと相談して決める事にする」

「いえいえ、これ位の事であれば、いつでもお聞きください。マリー様にも宜しくお伝えください」

「分かった。では、前夜祭で又、会おう」

「はい」


 ヘレフォードからの助言で、マリーと相談してルーカスへの祝いの品を決める事にする。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る