第548話 作戦会議-6

 ソディックが作戦の詳細を話す。

 しかし、クロの話で状況が変わった為、再検討をする必要がある事を伝える。


「出来る限り犠牲は最低限にするように」

「はい、心得ております」


 ルーカスの言葉にソディックが答える。

 ソディックはそれからも、代案として幾つか出すが騎士団という事もあるのか、大規模な作戦ばかりのように感じた。

 しかし、俺は黙ってそれを聞いていた。


「タクトの考えを聞かせて貰えますか?」


 黙っていたままでいる俺が不自然に感じたのか、ソディックが俺に意見を求めて来た。


「俺の解釈での意見でいいか?」

「はい」

「まず、多くの騎士団を動かせば作戦が相手に知られるんじゃないのか?」

「それは確かにそうですが、少人数でこの作戦は成り立ちません」

「いいえ、主が居れば問題御座いません」


 クロが話に入ってくる。

 俺の思考が分かるので、クロも確信を持っているのだろう。


「まず今回の討伐相手をはっきりさせておく。冒険者ギルドに商人ギルドそれと、闇闘技場に集まった奴達だ」

「はい、確かに」

「街への出入口と各拠点を考えれば、必然的に五班に分かれる事になる。これはソディックの班分けと異なる。」


 俺の言葉に皆が頷く。

 冒険者ギルドには、それなりの強者も居るかと思うので、三獣士とライラの四人。

 商人ギルドには、ジョイナスとクレスト、コスカの三人を選任する。

 二ヶ所の出入口にはカーディフとトグル、ソディックとナイルの四人を配置する。

 各ギルドには、ルーカスとグラマスからの委任状で、強制的に捕獲すれば良い。

 街から逃げ出す者も問答無用で確保する。

 シロには各班のサポートを頼んだ。


「捕獲はクロに頼む。難しくはないだろう」

「はい。造作も無い事です」


 クロであれば、一瞬で確保する事が可能だろう。


「どういう事か、説明して貰えますか」

「あぁ、クロは影に人物を引きずり込むことが出来る。影の中では仮死状態になるから大丈夫だ」

「そんな事が可能なのですか……」

「あぁ、だから戦闘中でも影の中に引きずり込むから、皆にはそれ程の危険は無いかと思う」


 ソディックの質問に対して、俺が説明をすると皆、呆気に取られていた。

 冒険者ギルドと商人ギルドに居る者達を全員捕獲した段階で、俺の所に駆け付けて貰うように話す。

 村から出る者達は多くないので、簡単に確保出来るだろう。


「それで、お前はいつも通り単独で闇闘技場に乗り込むのか?」

「まぁ、その方が被害は少なく出来るだろう」

「確かにな。お前の巻き添えはくらいたくないからな」


 トグルは呆れた口調だった。


「本当に嫌味な位、強いから文句は言わないけどね」


 コスカも憎まれ口を叩きながらも、納得してくれた。


「信じていない訳ではありませんが、大丈夫ですか?」


 ソディックが俺の心配をする。


「あぁ、大丈夫だ。【結界】を張れば外には出れない。当然、街にも【結界】を張り外に出れないようにする。俺の目的は魔獣を倒して外に出さない事が第一だから」


 正直、闇闘技場で観戦している奴達に被害が出る事に関しては、考慮するつもりは無かった。


「お兄ちゃん。私の【結界】も強くなったよ」

「おぉ、そうか。頑張ったな、ライラ」


 ライラを褒めると嬉しそうだった。


「そういう事なら、ライラはシロと組んで最初に両方のギルド会館に【結界】を張って、人が出ないようにしてくれるか」

「うん!」

「なんで、お前が【結界】を張らないんだ?」


 セルテートが疑問に感じた事を聞いてきた。


「俺が戻るまで誰も出られないだろう。それはそれで俺に文句を言ってくるだろう」

「確かに性悪なお前より、ライラの方がいいな」

「そうだ」


 俺の答えに、トグルとコスカは大きく頷いた。


「捕まえた奴等の尋問は、どうするんだ?」


 捕まえたはいいが、その後の対応について聞く。


「王都で行う。全員が今回の件に関与していたとも限らんからの」

「……クロに王都まで運ばせるという事だな」

「すまないが、そういう事になる」

「分かった。クロ、悪いがそういう事だ」

「承知致しました」


 尋問する時も、俺やクロは協力させられるのだろう。

 便利なスキルと言うのも考えものだと感じる。

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