第549話 作戦会議-7

「しかし、クロの影に捕獲した奴等を出す場所だが、一人ずつ出してから牢獄に入れる事になるが問題無いのか?」

「それは大丈夫だ。衛兵と此処に居る冒険者達に頼むので問題は無い」


 尋問は討伐完了後という事らしい。

 もし、善良な市民が混ざっていたらと思うと可哀想になる。

 その者に対しての補償はあるのだろうか? と要らぬ心配をする。


「メントラとオイラルは退席をして貰おうか。代わりに外に居るターセルとカルアを部屋の中に入れてくれ」

「はい」


 メントラは返事をして、オイラルと部屋を出て行った。

 入れ替わりにターセルとカルアが入ってくる。

 俺には、ルーカスの考えが分からなかった。


「今回の討伐について、何か質問はありますか?」


 ソディックが皆を見ながら確認をする。


「明後日を討伐日とするならば、すぐに王都を出発しなければ間に合わないだろう」


 ジョイナスが当たり前の事を言うが、俺の【転移】を知らないのはジョイナスとクレストの二人だけなので、他の者達は「あぁ」という雰囲気を出していた。

 ソディックが俺の顔を見ていた。

 多分、【転移】のスキルの事を話すうえで、俺の承諾が欲しいのだろう。

 俺はソディックの方を見て、小さく頷いた。

 ソディックも理解した様子で、トレディアとクレストの二人に向けて説明をする。


「内密に御願いしたいのですが、タクトは【転移】のスキル持ちです。タルイまで一瞬で移動する事が可能です」

「えぇー!」


 クレストが大声で叫ぶ。


「それって、好きな所に何時でもすぐに行けるって事だよね」

「行った場所でなくては無理だ」


 クレストに答えながらも、この後にタルイまで移動しなければならないと思う。

 俺はタルイまで【転移】が出来るとは一言も言っていないが、行けるという事で話が進んでしまっているので今更、「行けない」とは言い辛かった。

 俺の脚であれば、そんなに時間も掛からないと思っている。



「いいな~」


 その間も、クレストは【転移】スキルを羨ましがっていた。

 何かを期待しているような目で、たまに俺を見ていたが面倒な事になる気がしたので無視をする事にした。


「討伐に必要な物があれば教えて貰えれば、我々騎士団で用意するので言って下さい」


 武器や防具は使い慣れた物が良いし、HP回復薬やMP回復薬は何も言わなくても準備はしているだろう。

 皆が分かっているのか、特に意見は無かった。


 明後日の昼より闇闘技場が開催されるので、昼前に冒険者ギルド会館にあるグラマスの部屋に集合する事にする。


「丁度、皆集まっているので正式に連絡をしておく」


 ルーカスは今後の人事について話を始めた。

 まず、カルアの引退を伝えて、三獣士をそのまま護衛衆とする事。

 次に今迄、三獣士が行っていた任務をカーディフにジョイナス、ナイルにコスカの四人体制とする事が伝えられた。

 パーティー名は、四人で考えるように言う。

 正式な発表は、生誕祭後だそうなので、それまでにパーティー名を決める必要がある。

 クレストは王宮治療士を打診されていたが、返答は後日になる。

 既に国から依頼を受けて、様々な任務をする冒険者達。

 今、この場に居る者達は冒険者でも国王ルーカスより、信頼されている冒険者達になるだろう。

 護衛衆のカルアもそうだが、冒険者なので冒険者ギルド経由で国王の護衛任務となる。

 専属雇用だとしても、冒険者ギルドは中間マージンを常に取っている事になる。

 こういった社会の仕組みは、前世の時とあまり違いが無いと感じた。

 国の機関である騎士や衛兵とは異なり、任務とはいえ所詮はクエスト感覚になるので、自己責任になる。

 ルーカスは違うが、今迄の国王や領主達は冒険者を都合の良い駒として、考えていたのも事実だろう。

 壊れれば幾らでも代えが居る存在。それが冒険者なのかも知れない。


 ルーカスと護衛衆が退室すると、一気に部屋の空気が緩くなる。

 やはり、国王であるルーカスが居ると緊張するのだろう。


 ソディックも騎士団との会議がある為、俺達も皆で一緒に部屋を出る。

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