第545話 作戦会議-3
ステラに昔話を聞く事も出来ないので、話題を変える事にする。
セルテートに、ルーノとリンカの事を話すと、ルーノがシキブの後任としてジークの冒険者ギルドのギルマスになる事は知っていたようだ。
領主と喧嘩などして……と、愚痴を言いながら「弟ながら短気で困る」とため息をつくが、俺からすればセルテートも同じようなものだ。
リンカが冒険者になる事は反対していたが、最後にはリンカの熱意に負けて渋々、冒険者になる事を了承したそうだ。
セルテートが「何かあったら頼む」と言うので「サブマスのトグルに頼め」と冷たくあしらう。
トグルは犬猿の仲のルーノの兄とは言え、三獣士のセルテートには敬意を込めながら話しをしていた。
最初に出会った頃に比べると、礼儀正しくなったと感心する。
部屋の扉を二回叩く音が聞こえた。
部屋の外で騎士が、クレストとライラが到着したと報告している。
ソディックが、入って貰うように騎士に指示を出す。
クレストが先に部屋に入ってくる。
猫人族のようだが、白い服に黒いスカートをサスペンダーで吊っている。
足にはハイソックス。
この世界に似つかわしくない格好だ。
ジョイナスを見ると笑顔で手を振っている。
コスカを見ると、あからさまに嫌そうな顔だった。
後にライラが現れる。
緊張しているようで動きがぎこちない。
俺はライラと目が合う。
笑ってやると、ライラも嬉しそうに笑って返してくれた。
「二人共、自己紹介をしてもらえますか?」
「いいよ」
ソディックの言葉に、クレストが答える。
「僕の名前はクレストだよ。職業は回復魔法士だよ、宜しくね!」
クレストは体を必要以上に動かしながら、自己紹介をする。
俺は隣に居たステラに、治療士と回復魔術士の違いを聞く。
「基本的に同じよ。クレストが勝手に名乗っているだけよ。正式な職業では無いわ」
「だって、治療士ってダサくない。回復魔法士って言った方が、かっこいいじゃない」
ステラの回答に対して、クレストが自分の考えを言う。
その間も、クレストは体を無意味に動かしていた。
……もしかしてクレストは、常に動いていないと死んでしまう【呪詛】にでも掛かっているのだろうか?
そうであれば、他人事とは思えなくなる。
それにこれが、世に言う『僕っ娘』と言う存在なのかと思う。
前世ではテレビでしか見た事が無い。
「君がタクトだね。噂は聞いているよ」
指を鳴らすと、俺に指先を向ける。
「それはどうも……その、常に動いていないと駄目な【呪詛】にでも掛かっているのか?」
「面白い事を言うね! 僕は常に、華麗な踊りを皆に見せているんだよ。素晴らしいだろう」
「……そうか」
何となく、皆が嫌な顔をしたのが分かる気がした。
一瞬でも、クレストを可哀想だと同情した自分を責める。
「クレスト! じっとしていろ」
セルテートが我慢の限界なのか、クレストを叱る。
「んっもう、セルテートったら、何をそんなにイライラしてるの?」
クレストの言葉に、この場に居た全員が「お前にだ!」と心の中で突っ込んだだろう。
しかし、ジョイナスはクレストと一緒に任務をしていたって事を考えると、ジョイナスは凄い奴だと感心する。
「クレスト殿、ありがとうございます」
「えー、もっと僕の事を知って貰いたかったのに~」
体を左右に振りながら、残念そうな顔をする。
ライラはクレストの後で、自己紹介しにくい雰囲気になっていた。
「ライラと言います。狐人族で職業は魔法士です。皆さんの力に少しでもなれるように頑張りますので、宜しくお願いします」
ライラは自己紹介を終えると頭を下げた。
クレストの後だっただけに、皆の印象はかなり良い。
ソディックはライラに礼を言って、全員に席に着くように言う。
「一応、私の考えた大まかな作戦を伝える」
俺達を三班に分けることから大まかな説明を始めた。
一班は、タルイへ潜入して街でのかく乱を目的とする。
二班は、街民の避難誘導。
三班は、騎士団を連れてタルイの外で待機をする。
街に居る一般人を避難させてから、本格的な討伐を行う。
関係の無い一般人を安全に対応をする事を優先にしている。
「ちょっと、いいか?」
俺はソディックの途中だったが、悪いと思いながらも口を挟む。
「タルイの領主も共犯者だと思う。街の人々を避難させたら作戦がバレないか?」
「確かにそうですね。しかし、領主殿が共犯と言う根拠はあるのですか?」
「すぐにシロとクロを呼ぶ」
俺はシロとクロを呼ぶ。
二人には別々の調査を頼んでいたが、問題無いという事で俺の所に姿を現した。
ジョイナスとクレストは、いきなり現れたシロとクロに驚く。
いつも通り、ジョイナスとクレストに向けて、シロとクロに自己紹介をして貰う。
シロとクロの正体を知ると、ジョイナスは驚いて俺の顔を見ていた。
一方のクレストは立ち上がり、シロの方へと歩く。
猫人族なので、シロに触りたいのだろうか?
「流石、聖獣様だね。でも、僕の可愛さには敵わないようだね」
無意味に体を動かして、全く意味の無い事をシロに言う。
言われたシロも戸惑っていた。
「クレスト殿、座って頂けますか」
「はいはーい」
クレストはバレリーナのように回転をしながら、自分の席に戻り座る。
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