第544話 作戦会議-2

 コスカが紹介したいと言った人物は、やはりライラだった。

 ソディックとトグルにナイル以外は、ライラが何者かも知らない。


「聞いた事の無い冒険者だが、冒険者ランクはいくつだ?」

「この間、ランクBに昇級したばかりよ」


 コスカの言葉にトグルが驚く。

 何度もランクBの昇級試験を落ちたトグル。

 この間冒険者になったばかりのライラは、かなり早く昇級した事になる。

 トグル自身近々、ランクAの昇級試験を受けるつもりでもいた。

 自分の弟子であるザックとタイラーと、同じような背格好のライラが自分と同じランクになった事は、かなりの衝撃なのだろう。

 俺もライラのランクには驚かされた。


「まだ新人じゃないのか?」


 ランクB成り立ての冒険者を連れて行くことは、リスクが高いと考えたジョイナスがコスカに質問をする。


「大丈夫だ。魔術士としての腕は私が保証する」


 自信を持ってコスカは答える。


「一応、オークロード討伐のパーティーの一人でもあります」


 ソディックがライラの追加情報を話す。

 凱旋の際に挨拶をしたが皆、記憶に無いのだろう。

 ジョイナスもソディックの言葉で、ライラの事は納得したようだ。


「それでは、ジョイナス殿はクレスト殿を。コスカ殿はライラ殿を呼んで頂けますか?」


 ジョイナスとコスカは了承して連絡を取る。

 ソディックは一度、部屋から出て騎士達に指示を出していた。

 おそらく、クレストとライラが訪れたら、部屋へ通すようにと言っているのだろう。

 とりあえず、クレストとライラが来るまでは自由時間となった。



 俺はステラに再会したら聞こうと思っていた事があったので、ステラに話し掛ける。


「ちょっと、聞きたい事があるがいいか?」

「はい。なんでしょうか?」


 ステラに俺と戦った時、無詠唱で魔法を掛けていた事を聞く。

 無詠唱は俺の専売特許だと思っていたからだ。


「あぁ、それはですね……」


 ステラは笑いながら答えてくれた。

 実際は、無詠唱でなく詠唱をしていた。

 他人に聞こえるかどうかも、分からないくらいの小声で、しかも早口でだ。

 これはステラがあみ出した詠唱方法で、他人には真似出来ないようだ。


「流石、この国唯一の賢者だな」


 俺は感心する。


「鍛錬を積めば、それ程難しい事でもありません」

「そうなのか?」

「はい」

「馬鹿を言うな。お前以外に、そんな芸当出来る奴が居るか!」


 セルテートが俺とステラの会話に入ってくる。


 そもそも、攻撃魔法と回復魔法を覚える時点で、既に凄い事だ。

 ステラは簡単に話すが、もしかしたら物凄い鍛錬を積んだのかも知れない。

 賢い者と書いて『賢者』。

 そう考えるとステラは、やはり賢いのかも知れない。

 やはり狐人族は賢いのだろうか?

 ステラの尾の数は八。

 王都研究所のローラの尾の数は七。

 尾の数が多いほど優秀だと、ローラは言っていた。

 そう考えれば、九尾のライラはステラを超えられる存在なのかも知れない。


「もう一つ聞いていいか?」

「はい、どうぞ」

「今、コスカが連れて来るライラはステラと同じ狐人族だ」

「はい」

「尾の数は九つあるが、優秀なのか?」

「九尾ですって!」


 ステラは大きな声を上げる。

 他の者の視線が集まる。


「九尾であれば、私より優秀です。そもそも、九尾であれば頭首候補だったりと重要な人材なので、集落や里から外に出る事等あまり聞いた事がありません」

「ライラは次期頭首候補だな。ん、頭首なのか?」

「どういう事ですか?」


 ステラが尋ねるので、ライラの事と言うか、ライラが居た集落で起きた話をする。

 蓬莱の樹海にある狐人の里で反乱が起きて、頭首だったレクタルが失脚する。

 ライラは幼い為、ラウ爺と言う者がが頭首代理をしている事を話すと、セルテートが横から口を出す。


「ラウさんが、頭首代理だと!」

「ラウ爺を知っているのか?」

「あぁ、知っている。昔、何度かパーティーを組んだからな。師匠とまではいかないが、戦い方の指南はして貰った」


 そういえば、ラウ爺は冒険者だったな。


「ステラもラウ爺は知っているのか?」

「えぇ、私の命の恩人ですから」

「命の恩人?」


 詳しく聞きたかったが、ステラが話したく無さそうだったので、これ以上は聞かなかった。

 しかし、ステラの過去が気になったのも事実だった。

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