7章

第543話 作戦会議-1

「わざわざ、王都まで来て頂いて、申し訳ありませんでした」


 王国騎士団の団長ソディックが俺とトグルに頭を下げる。


「気にしなくていい。それより、早く話を聞こうか」

「分かりました」


 ソディックは俺とトグルを会議をする為の部屋へと案内をしてくれる。


「しかし、漆黒の魔剣士トグル殿が参加頂き心強いです」

「少しでも力になれればと思っている」


 トグルの二つ名『漆黒の魔剣士』はかなり広く認知されている。

 鬼人族でも一本角のトグルは、一本角の鬼人達から尊敬されていると聞いた。

 一本角の鬼人達からすれば、トグルは希望の光なのだろう。


「こちらになります」 


 部屋と扉を開けると、三獣士のセルテートにステラ、ロキサーニが座っているのが目に入る。

 少し離れて、面識の無い鬼人族が座っている。

 俺に興味があるのか、俺の方をずっと見ている。

 壁際には魔法士のコスカと剣士のナイルが、微妙な距離を取って立っている。


「お久しぶりです」


 扉の横に居たカーディフが、俺に声を掛ける。


「おぉ、久しぶり。もう、こっちに戻っているのか?」

「はい。フリーゼ様の事はセドナに任せています」

「セドナも今回の作戦に参加させると言っていなかったか?」

「はい。ですが、ダンガロイ様が、万が一の事もあるので、セドナは護衛という事になりました」

「まぁ、普通はそうだよな。王都に来ているのか?」

「はい。生誕祭まで滞在するそうです」

「領地をほったらかしで問題無いのか?」

「そこは優秀な人材が揃っておりますので、大丈夫かと思います」


 近況報告の話をしていると、ソディックが「そろそろ」と言うので、立っていた者は空いてる椅子に座る。

 俺も末席にトグルと座ろうとすると、ソディックが俺の座る席を指定する。

 指定された席は、ソディックの対面になる。

 言われた通り、俺は移動して席に座る。

 隣に居たコスカは嫌そうな顔をしていた。


「ライラは元気か?」

「えぇ、元気よ」

「強くなっているのか?」

「当たり前よ。天才の私が教えているのよ」


 コスカは自慢気に話す。


「んっ、んん!」


 ソディックは咳払いをして、私語をしている俺とコスカに注意をする。


「貴方のせいで叱られたじゃないの!」

「すまん」


 文句を言うコスカに謝罪する。


「今回の討伐指揮をするソディックだ。知っている者もいると思うが今一度、自己紹介をお願いする」


 ソディックの言葉で会議が始まった。


「まずは三獣士の方々から御願い出来ますか」

「分かりました。まずは私から」


 ロキサーニが最初に挨拶をする。

 続けて、セルテートとステラが挨拶をする。

 律儀な事に、三獣士として最後の任務だとまで話す。


「鬼人のジョイナスだ。職業は斧術士ふじゅつしになる」


 俺を見ていた鬼人族は、ジョイナスというそうだ。

 以前に聞いていた、三獣士の後釜の一人だ。


「斧術士?」


 聞きなれない職業だったので、俺は聞き返す。


「珍しい職業です。斧を使って闘う者の事です。他にも槍術士そうじゅつしという職業もあります」

「まぁ、斧を自在に振り回す筋力と握り続ける握力が必要だからな」


 ソディックとジョイナスが教えてくれる。

 トグルとナイルに、コスカが挨拶をしたので、最後に俺が挨拶をする。


「人間族のタクトだ。職業は……無職だ」

「無職!」


 この中で唯一、俺が無職と知らないジョイナスが反応する。


「タクト殿は、ランクSSSでしたよな」

「あぁ、そうだ」

「無職なのに、ランクSSSなのですか!」

「そうだ」

「無職なのに、そこまで強いという事ですか!」

「そうなるかな……」


 あまり、無職だと連呼して欲しくない。

 ソディックやカーディフが、俺のフォローをしてくれる。

 とても有り難いが、余計と惨めな気分になるのは何故だろうか……。


「それと、ここには居ないが俺の仲間のシロとクロも今回の任務に同行する」


 ジョイナスのみ、シロとクロの事を知らないので、ソディックが簡単な説明をすると、俄かに信じられない表情だった。


「俺の事はいいから、本題に戻ろう」


 強引に話を戻してみる。


「そうですね。失礼しました」


 人間族で騎士のソディック。

 三獣士の狸人族で魔法剣士のロキサーニと、狼人族で武闘家のセルテートに、狐人族で賢者のステラ。

 三獣士の後任になる獅子人族で剣士のカーディフと、鬼人族で斧術士のジョイナスに、人間族で剣士のナイルと、人間族で魔法士のコスカ。

 そして、鬼人族で剣士のトグルと俺に、シロとクロ。

 計十人と二人(二匹)


 回復役が少ない。

 この中で回復魔法が使えるのは、ステラと俺にシロしか居ない。

 ステラは攻撃もする為、回復役に徹する事は難しい。

 作戦次第かと思うが、もう一人くらいは欲しい。


「確かにそうですね。一応、国王様からの推薦と私の考えで人選しましたが、他にも協力してくれる方が居れば構いませんので、教えて下さい」

「それなら、あいつが居るから同行させる」


 ジョイナスは回復役の知り合いがいるようだった。


「あいつ?」

「あぁ、性格に問題はあるが一応、俺と一緒に任務をしてきた」

「……それって、クレストの事?」

「そうだ」

「うぁ~……」


 コスカは露骨に嫌な顔をしていた。

 ナイルや三獣士達も、複雑な顔をしていた。


「まぁ、あいつの性格はともかく腕は確かだからな」

「私はその性格が嫌なんですけどね……」


 セルテートとステラが意見を言う。

 ここまで酷い事を言われていると、他人のような気がしなくなる。


「そういう事なら、私も一人紹介したい者がいる」


 コスカは魔法士を一人同行させたいと言う。

 多分、ライラのことだと思うが……。

 この重要な任務に同行出来るだけの実力を身につけたという事なのだろうか?

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