第542話 猛省!
「久しぶり!」
机の上に首を置いて、何かひとりでしていたエテルナが驚く。
驚くと言っても、エテルナはデュラハンなので、首から上と胴体が別々になっているので、すぐに俺の方を見る事は無かった。
「……タクトでしたか」
エテルナは首を脇に抱えた。
「ロッソは居るか?」
「ロッソ様でしたら、地下の御部屋に居られますが、御呼びしましょうか?」
「悪いが頼めるか?」
「承知致しました。少々お待ち下さい」
エテルナはロッソを呼びに行く。
俺はエテルナが座っていた椅子に座り、ロッソを待つ事にする。
何もする事が無いので、部屋の中を見渡したりして時間を潰す。
「待たせてすまないな」
ロッソが現れる。
前回と同じく黒いローブを羽織っていた。
「いや、こっちこそ突然、邪魔してすまない」
「それで何かようか?」
俺はまず、ロッソから預かった物をカルアに渡した事を報告すると、ロッソから礼を言われた。
カルアが喜んでいた事を伝える。
「そうか、それは良かった。カルアの為に作った物だからな」
ロッソはカルアへ渡した耳飾には魔法力を向上させる仕掛けがしてあるそうだ。
「そんな事が可能なのか?」
「魔力量の多いカルアだから可能なだけだ。エルフは特殊な種族だからな」
「だけど、カルアはハーフエルフだろう?」
「そうだ。しかし、カルアは常に『MP』を消費する【変化】で姿を変える事も出来る。私もカルアのように、自分の思ったように【変化】で、姿を変えることが出来ればと思うことがある」
【変化】している間、『MP』を消費している事は知らなかった。
普段から、あの姿をしているカルアは凄いのだと感心する。
ちょっと、待てよ……今のロッソの言葉で、【変化】のスキルを理解する。
以前にカルアが【変化】を使用していた事を見破った時は、俺が【変化】のスキルを理解出来ていなかったのか習得していなかった。
ステータスを確認すると【変化】が追加されていた。
「どうかしたのか?」
「いや、何でもない。気にしないでくれ」
顔に出したつもりは無いが、俺のちょっとした変化にも、ロッソはちゃんと気が付いた。
「それはそうと、私を訪ねて来たという事は、何か用事でもあったのだろう」
「あぁ、そうだ」
俺は、トブレに作ってもらった『サングラスもどき』を【アイテムボックス】から取り出して、机の上に置く。
「これは?」
不思議そうなロッソに俺は、これの説明をする。
この『サングラスもどき』をとりあえず『サングラス』という名にする。
サングラスなので、硝子部分は黒くなっている。
これは、ドワーフ族の硝子職人ザルボとトブレに作ってもらった物だ。
枠部分はトブレなので、二人の共同作品になる。
目が合っただけで、生命力の弱い者は死に至らしめる。
人族であれば殆どの者が、死ぬ事になる。
魔族でも生き残れる者は、そんなに多くは居ないだろう。
俺はそれを解決出来るように目を覆えば、少しは人との接触出来る可能性があると思いサングラスを持ってきた。
因みに【魔力付与】等はしていない。
「タクト、悪いがこれは使えない」
「えっ、どうしてだ。これに【魔力付与】で何か付与すれば問題ないと思うぞ」
「いや、そういうことではない」
俺にはロッソが言っている意味が分からなかった。
「タクトよ。これはどうやって着けるんだ?」
「普通に耳と鼻に掛ければ……」
「そういうことだ」
俺は話の途中で気付く。
骨だけのロッソには、鼻も耳も無い。
サングラス以前に眼鏡を掛ける事が出来ない。
ロッソから言われるまで、全く気が付かなかった。
自分が情けなくなった。
「気持ちは有り難い。私も昔、同じような事を考えた事がある」
確かに言われて見れば、長く生きていて色々と研究をしているロッソが今迄、気が付かない訳が無い。
自分の能力を過信していたのでは無いかと、猛省する。
恥ずかしくなりながらも、ロッソとエテルナとで他愛も無い会話をする。
結局、俺は此処に何をする為に来たのかと思いながら、ロッソとエテルナと会話を続けた。
「ところで、オーカスと言う名は知ってるか?」
「……何故、その名を知っている」
ロッソの雰囲気が変わった。
エテルナが、その名は不吉な名前なので、今後は口にしない方が良いと、忠告してくれる。
俺は、死後の世界に行った事。
そして、俺の神エリーヌの上司、中級神モクレンとオーカスにあった事を、二人に話す。
「成程。そういう事であれば納得出来る」
ロッソは一度だけ、オーカスと話をした事があると教えてくれる。
死後の世界から、死者をこの世に召喚する際の契約時にだ。
エテルナは、その気になればオーカスの部下から死ぬ者を教えてくれる事も出来るそうだ。
デュラハンとしての本当の使命だとも言っていたが、強制では無いとも話す。
オーカスは怖い神だから、気を許すなとエテルナは俺に忠告する。
俺は会った感じだと、そこまで怖い印象は無かったが、印象などはそれぞれで違うので、俺は何も言わずエテルナに向かい「分かった」とだけ言う。
「ところで、この間のミミックの剣を、今日は持っていないのだな」
「あぁ、それだがな」
俺は魔剣ムラマサは知り合いに譲った事を話す。
一応、ムラマサと譲ったトグルとは相性が良いので、命が奪われる事は無いと補足する。
「譲った相手は、魔族なのか?」
「いや、鬼人族だ」
「……闇落ちの危険性は無いのか?」
「それは、俺にも分からん。そうなったら、俺が全力で闇落ちを止めるつもりだ」
「闇落ちを止める?」
「あぁ」
俺は、体から魔素を抜く事で、闇落ちを止めた事がある事を話す。
「それは興味深いな」
俺とロッソは、時間を忘れてその後も話し続けた。
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