第486話 領主として!

 レイ達三人はひとつの家で共同生活をするそうだ。

 エルフ族では、別に珍しい事では無いらしい。


「自分達で家を建てると言うか造れるのか?」

「はい。集落に居た時は自分達で造っていましたから、問題ありません」


 新しい技術好きのドワーフ達が、エルフ達にライバル心を抱かないか心配だ。

 材料の調達はゾリアスが、他の家同様に森から調達する事で話が着く。

 トブレもレイ達エルフに、優先して材料を使って良いと言ってくれた。


 話がまとまった所で、リロイから用意が出来たと連絡が入ったのでジークまで迎えに行く。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「久しぶり。元気か?」


 俺はリロイに挨拶をすると、リロイは「はい」と、元気な声で答える。


「もしかして、タクトが村長になったのですか?」

「いや、俺じゃない。ゾリアスだ」

「そう、ゾリアス殿がですか」

「律儀な性格だからな。村として領主に挨拶が必要だと思っている」

「そうですか。気を使わせてしまい申し訳ありませんね」


 相変わらず領主らしくないと感じる。


「ニーナも変わりないか?」

「えぇ」


 領主夫人も板について来たのか、振舞いも少しだけ優雅だ。

 ニーナなりにリロイの妻として、頑張っているのだろうと感じた。


「ゴンド村には、国王達一族も居るから」

「えっ、そうなのですか! そうであれば、もっと良い衣装に着替えないと」


 リロイとニーナは慌てていた。


「気にしなくていい。文句を言われるような服装でも無いし、もし文句言う様であれば俺が味方になってやる」


 二人の前で、戦闘のポーズを取ると笑っていた。


「それと、ネイトスの領主も一緒に来ている」

「ピッツバーグ殿ですか?」

「知っているのか?」

「私は存じ上げておりますが、ダンガロイ殿は私の事等存じ上げないでしょう」

「リロイは、そんなに知名度が無いのか?」

「貴族でも下の方ですから、仕方ありません」


 笑って話すリロイだが、仮にも『防衛都市』と名が付いているジークの領主が、リロイの言うように知名度が無い筈が無い。

 以前に争いの際は一番最初に戦闘になる為、領主の成り手が居ないとは言っていたが……。


「領主と言う立場で話をすれば良いと思うぞ。それにゴンド村は、この国最強の村だからな」

「そうなのですか? タクトはジークからゴンド村に移るのですか?」


 リロイは寂しそうに話をする。


「そうだな。一応、ゴンド村に住むことになるな」

「そうなんですね」

「まぁ、俺に用があれば何処に住んでいようと、直ぐに駆けつけるから遠慮せずに呼びつけてくれよ」

「はい、その時はお願いしますね」


 リロイに笑顔が戻る。


「それと、ニーナには言っておく事がある」

「何かしら?」


 俺はダンガロイの妻で、国王の姉であるフリーゼが魔族嫌いな事を伝える。

 魔族嫌いになった原因は言わないが、魔族であるニーナにはジーク領主夫人として、話をすると思うので言っておいた方が無難だろう。

 それに、ニーナが魔族だと知られる事はないが、万が一と言う事もある。

 俺の言葉にニーナは勿論、リロイも神妙な顔になる。

 重い空気に包まれる。


「これ位は想定の内だろう。最初に偉い奴に会っておけば後は楽なもんだろう」

「そうですね。タクトは楽観的ですね」

「真剣に考える方が無駄だろう」

「相変わらずね……」


 ニーナは呆れていた。


「リロイ達はゴンド村は、初めてか?」

「はい。恥ずかしながら、自分の領地ですが、全ての村を見て回っていませんので……」


 俺の問いに対して、申し訳なさそうにリロイは答える。

 全ての村を見て回るような事をしないのが、普通なのであろう。

 村長が変わったり、村がどのような状況になっていようと、税金等を納めてくれれば問題ないのだろう。

 まぁ、ゴンド村は村と言えるかも怪しくもなっているが……。


「ゴンド村は、少しだけ変わっているが気にするなよ」

「タクトの少しは、少しじゃ無い事は分かっていますので、驚かない準備をしておきますね」

「そうしてくれ」


 冗談っぽい口調で話をするが、実際驚くだろうと思っている。


「そろそろ、行くぞ」

「はい」


 俺は、リロイとニーナを連れてゴンド村へと戻る。

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