第485話 面白半分!

 レイ達エルフ三人娘を連れて、ゴンド村に戻る。

 入口でレイ達を見た者は一瞬、驚いていた。

 俺がエルフ族だと伝えて、村の中央部である神祠のある広場まで歩くが、今迄に見た事が無い種族の為、皆が興味津々だ。

 途中で、ルーカス達の近くを通ったが、同じ様に驚いていた。

 俺は特に声を掛けることもなくレイ達を引き連れて歩いて、神祠のある広場に到着する。

 ゾリアスは壇上に上がると、レイ達がゴンド村に移住してくる事を伝える。

 その後、レイ達エルフ三人娘を壇上に上げて、自己紹介をさせる。

 他種族との交流に戸惑いながらも、きちんとした挨拶をしていた。

 三人の自己紹介が終わると、どこからともなく拍手の音が聞こえてきた。

 ゴンド村の者達が、快く迎え入れてくれた証だ。


 遠くからルーカスが俺に何かを言いたがっているのが分かったので、仕方なくルーカスの所に行く。


「エルフをこの村に住まわせて、種族間問題に発展しないだろうな」


 やはり、ルーカスはエルフ族との関係を気にしていたようだ。


「問題無い。レイ達はエルフの里を追い出された者達だ。まぁ、その原因を作ったのは人族なんだがな」

「どういう事だ?」


 俺は、以前に話をした奴隷にされたエルフがレイ達で、その後エルフの集落からレイ達がを受けた扱いについて話す。


「……それは、気の毒な事だな」

「この国の王として、謝罪でもするつもりか?」


 真剣な顔のルーカスに冗談を言うと、真顔で「そのつもりだ」と答えた。

 俺にレイ達を紹介して欲しいと言うので、ルーカスをレイ達に紹介する。

 ルーカスをエルドラードの国王だと紹介すると、レイ達は驚く。

 その後、レイ達に頭を下げて正式に謝罪をした。

 レイ達にすれば、複雑な心境だろう。

 自分達をこのような状況にした人族。

 その人族の国王であるルーカスの謝罪。

 謝罪を受け入れるとかで、簡単に解決する事の出来ない大きな問題だ。

 しかし、素直に謝罪をするルーカスは尊敬出来る。

 人によっては、国王は簡単に頭を下げる者では無いという者も居るだろう。

 俺もその考えは否定するつもりは無いが、個人的には高圧的な者よりも、人情味のある者の方が好きだし高圧的な者の周りには似たような者が集まるので余計に印象が悪い。


「許す事は難しいと思うが、国王が謝罪をしたという事実だけでも認めてやってくれるか」

「はい、分かりました」


 そう答えるレイだが、悲しそうな表情をしていた。


「住む場所等は、出来る限り森に近い方が良いのか?」

「そうですね。私達は樹の上に家を建てて住みますので、出来れば同じような環境にして頂くと有難いです」

「樹の上ね……」


 家を建てれるような大樹はこの村には無い。

 俺も写真でしか見た事が無いが、前世のツリーハウスのイメージだろう。

 森の近くの大樹になるが、そこは既に村では無く森になってしまう。

 逆に森との境界を無くしてしまうと、魔獣や獣等が容易に村へ侵入してしまうので、防犯的な面で考えれば宜しくない。

 俺が考えていると、レイが俺の目の前にそっと手を出した。


「この種を、リラ様から頂きました。村で住む場所が決まったら植えるようにと言われました」


 この種を植えれば大樹が生えてくる事は、疑う余地は無いだろう。

 そうすると、このゴンド村は『魅惑の森』の一部になるという事だろうか?

 リラが俺や、ゴンド村の者達に危害を加える事は無いので、大した影響は無いと思うが……。


「森に一番近い壁の横に住んでもらうのが、お互いに良いだろう」


 いつも間にか、俺達の近くに居たゾリアスが、レイ達に住む位置を提案する。

 レイ達はゾリアスの提案を受け入れると、ゾリアスの案内で住む場所まで行き、地面に種を植える。

 植え終わると、三人共膝を付き祈り始めた。

 何も起こらないと思っていると、地面から芽では無く、幹のような物がいきなり生え始めて一気に大樹へと成長した。


「レイ達の祈りの成果か?」

「いえ、殆どがリラ様の御力です」


 リラの力と言うので、大樹に触れて話し掛けてみる。

 俺の問い掛けに答えたのか、リラは姿を見せずに大樹を通して俺に話し掛けてきた。


(これはリラの仕業で良いんだよな)

(はい。レイ達が困っていましたし、私もゴンド村の様子が気になっていたので、良い機会でしたわ)

(ゴンド村は、魅惑の森の一部になったという事か?)

(半分正解ですね。私が村に干渉する事はありません。ただし、村の草木から情報は頂きます)

(まぁ、それは森を歩くのと同じ事だしな。リラもゴンド村に興味がるのか?)

(勿論です。村もそうですが、タクト様が絡むと面白い事が起きますからね)

(面白半分か……)

(はい、そうです)


 リラは俺から他の樹精霊ドライアドの情報等を知りたいのだと感じた。

 同じ宿命を背負った精霊同士が、意思疎通出来ないのは悲しいだろう。

 運よく他の 樹精霊ドライアドに出会った者が居たとしても、その場で森の肥料にされるので生きて森を出る者は皆無だ。

 俺がメッセンジャーの役割を担うのであれば、それはそれで良しとする。


(これからも、ゴンド村を見守っていてくれ)

(はい、分かりました)


 俺はリラとの連絡を終えた。

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