第484話 間違った前世の認識!
「エルフが、人と暮らして良いのか?」
レイ達の突然の申し出に困惑しながらも、質問をする。
「集落の掟では駄目です。しかし、このままでは生きる希望が見いだせませんし、人族に捕まる事を考えれば……」
エルフは希少な種族の為、闇取引ではかなりの高額で取引がされるだろう。
自分達が危険な目にあっているからこそ、彼女達なりに考え抜いた上での苦渋の決断という訳だ。
「レイ達は、人族への偏見等は無いのか? もしあるのなら、村に住みたいと言っても難しいぞ」
「人族はおろか、他種族との交流を絶っていた私達エルフです。偏見というよりも戸惑いの方が大きいですし、逆に私達が受け入れて貰えるか……」
レイの言葉からも、決断したとはいえレイ達が不安に感じている事が良く分かる。
「ゾリアスは、どう思う?」
俺は村長であるゾリアスの意見を聞く。
決定権はあくまでゴンド村の村長であるゾリアスにある。
俺はいち村人に過ぎない。
「そうだな。村への移住自体反対する気は無いが、村に住むとなれば何かしらの労働をして貰う事になるが、何か得意な事等を教えて貰えるか?」
ゾリアスもエルフの事が分からないので、慎重に言葉を選んでいた。
「生活する上での事であれば、一通りの事は出来ます。戦闘については、腕力等が無いので接近戦は劣りますが、弓等による攻撃や狩猟は得意です。あと、水系統や風系統の魔法も少しであれば使えます」
「水系統の魔法が使えるのは、村としては助かるかもな」
ゾリアスは嬉しそうな感じで話す。
「何か困っているのか?」
俺は気になったのでゾリアスに質問をする。
「あぁ、村の井戸が枯れそうでな。今、深く掘り直すか、別の場所に掘るか悩んでいる」
「どちらにしろ、水が出る確率が分からないからか?」
「そうだ」
先程までゴンド村の者から、この件については聞かされていない。
「村の者達は知っているのか?」
「いや、最近水が少ない事位は気が付いているが枯れるとまでは思っていないだろう。俺が昔、別の村で同じような事があったから、気にしている程度だ」
ゾリアスは不確定情報を発表して、不安を煽るのは得策ではないと考えているのだろう。
「そういう事なら、俺が解決してやるぞ」
「はぁ? いくらお前でも、難しいだろう」
ゾリアスは俺が簡単に、水問題を解決するという事を疑っていた。
「まぁ、村に戻れば解決するから心配するな」
「お前が言うなら間違いないと思うが……」
腑に落ちないような顔で俺を見る。
俺は気にせずに、レイ達に質問をする。
「因みに、エルフ族とドワーフ族は仲悪いのか?」
「いいえ、そもそも交流が無いので、少なくとも私達が嫌う理由はありません」
こういった世界でエルフとドワーフの仲の悪さは有名だが、言われてみれば外部との交流が無いエルフ達が嫌う理由は確かに無い。
エルフもドワーフも、長寿種族なので年配の者達の中には俺のイメージ通りの者達も居るかも知れない。
「そうか、ドワーフ族数人が住む事になっているので、仲良く頼むな」
「はい、分かりました」
「それと、エルフ族は肉を食べない草食主義だよな?」
「いいえ、そんな事ありません。食べる為に狩猟も致します」
「そうなのか?」
「はい」
……確かに、弓の技術が一流と言われているエルフ達が、食べもしない動物等を狩猟するのは変だ。
皮を利用するだけでは無いという事か。
「悪い。エルフ族の知識が無い為、勝手に勘違いしていた」
「仕方ありません。私達は孤立して生活していましたから、噂が勝手に大きくなり間違った認識が広まったのでしょう」
俺の無知に対して、レイは優しい言葉を掛けてくれた。
「タクトは相変わらず常識が無いな」
「ゾリアスは知っていたのか?」
「……まぁな」
俺から目線を逸らしたので、嘘だと言うのが分かった。
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