第450話 村民達の苦労!

 案内を頼んだが、水銀が猛毒だと知った村民達は案内役になる事を躊躇していた。

 自分が毒に侵されるかも知れないと感じているのだろう。


「分かった。その場所までの行き方を教えてくれ。それだけでいい」


 村民達に無理強いは出来ない。

 地面に簡単な地図を描いてもらい、特徴な木や岩等を口頭で教えて貰い行き方を聞く。


「大体、分かった。じゃあ、行くか」

「ちょっと待て。カーディフとセドナを呼ぶ」


 そういえば、カーディフ達が護衛だった事を忘れていた。

 俺も綿菓子製造機の回収もあるので、シロを呼びに行く事にする。


 綿菓子製造機が無くなっており、家の周りには子供達が集まっていた。


「シロ」


 入口に居たシロに俺が声を掛けると、シロが俺の方を振り向く。


「何か問題か?」

「いえ、子供達が綿菓子というか、もっと甘い物が食べたいと言っていまして」

「そうか、もう粗目も無いしな。甘い物と言ってもな……」


 考えてはみるが、【アイテムボックス】に甘い物等は無い。

 綿菓子製造機は、カーディフとシロで家の中に運んだそうだ。

 とりあえず、家の中に入る。

 机の上の料理も無くなっていたので、カーディフとセドナが片付けをしていた。


「フリーゼが呼んでいたぞ」


 カーディフに声を掛ける。


「はい。先程、連絡がありました」

「そうか。あっ、片付け悪いな」

「いえ、構いません」


 俺は片付けられた皿に【浄化】を施してから【アイテムボックス】に仕舞う。

 その後、綿菓子製造機も【アイテムボックス】に仕舞った。

 片付け終わり、カーディフ達と家の外に出る。

 数人の大人と、子供達が待っていた。


「悪いが、これ以上は何も無い」


 俺がそう言うと、子供達は落胆の表情を浮かべる。


「この村では、何を育てているんだ?」


 村民のひとりに、この村の農作物について聞く。


「見ての通り、雪の多い村ですので作物も中々育たないのです」

「畑を見させてもらっても良いか?」

「はい、構いませんが、お見せできるような畑ではありません」


 村民に案内される途中で、フリーゼ達と合流する。

 村長に事の経緯を説明すると謝られ、村の事情を話してくれた。

 昔は、近くの街まで出稼ぎ等に出ていたが、最近は街の治安が悪くなったこともあり、出稼ぎに行く者は居なくなった。

 食べて行く為に、若者は冒険者になる者も居たが無理をしたりして、大怪我を負ったり、命を落とす者も居たそうだ。


「街の治安が悪いのは、領主の責任じゃないのか?」


 俺はフリーゼに聞く。


「ここから一番近い街だと、タルイだろう。そこは私達の領地では無い」

「……タルイ?」


 俺はその街の名前に聞き覚えがあった。


「そのタルイから戻って来た者は居るのか?」

「はい。数人ですが居ます。呼びましょうか?」

「討伐から戻ってきたら、話を聞きたいとだけ伝えてくれ」

「分かりました」


 グラマスのジラールが、タルイに調査員を派遣すると言っていたので、後で聞いてみる事にする。


「タルイが、どうかしたのか?」

「あぁ、噂ではタルイのギルマスが非人道的な事をしているらしい」

「そうなのか? そんな事していれば領主であるレッティ殿が許す筈ないが……」

「フリーゼ様。レッティ様は、随分前に領主の座を御子息であるエランノット様に譲られております」


 フリーゼの間違いを、カーディフが訂正をする。


「そうであったな。レッティ殿であれば、そのような行いは断じて許さないであろう」

「レッティという前領主は、高齢か病気なのか?」

「高齢という年齢でも無い。それに病に伏せているとも聞いていない」

「それ以外の理由で、領主の座を譲る事があるのか?」

「稀にだが、早い段階で領主になる事で、色々な経験を積ませたりする事はある」

「今回もそうなのか?」

「詳しい事は知らぬ。だが、エランノット殿の良い話については、余り耳にせんな」


 要するに悪い話は良く耳にするという事か。


「その辺は、国王の方が詳しいだろうな」


 話の内容から、レッティという前領主は、それなりに人格者っぽいが息子のエランノットは違うようだ。

 なんとなくバカ息子が領主になり、ギルマスと手を組んでいる気がする。

 ジラールに連絡すれば、タルイの件も俺に頼んで来るのが目に浮かぶ。

 俺としても、このまま他人に任せて最悪の事態になったら、目覚めが悪い。

 依頼があれば、仕方なしに受けるという事にして、ジラールに恩を売っておこうと思う。

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