第445話 緩む口!

「くれぐれも無茶だけはしないようにな。カーディフとセドナも頼むぞ」

「はい、承知致しました」


 ダンガロイは、フリーゼの事が心配なのか、カーディフ達に何度も頼んでいた。


「もう、あなたは心配性ですわね」


 にこやかに笑うフリーゼだが、ダンガロイが心配するのも良く分かる。

 俺からしたら、戦闘のスイッチが入ったら危険人物になるのは予想出来るからだ。

 フリーゼの笑顔は、何かを企んでいるようにしか、俺には見えなかった。


「タクトは、その格好なのか?」

「あぁ、そうだが?」


 一応、正装用の服から、普段着ている冒険者用の動きやすい服に着替えている。


「……雪山を舐めているのか?」

「いや、これは見た目以上に寒くは無いから、安心してくれ」

「しかしだな」


 フリーゼが、雪山の怖さを知らない無知な登山者に向けるような顔をしていた。

 その表情は、若干怒っているように思える。


「雪山の怖さは十分に知っている。俺の特殊な体質と言うか、能力だと思ってくれ」


 俺は真剣な表情で、フリーゼに訴える。

 疑われているのと心配をされていると感じたので、真剣に話をするべきだと感じた。


「そうですぞ、姉上! タクトの服は最高級な素材であるアラクネ製なのです。私の、この服もそうです」


 ルーカスが又、余計な一言を喋る。

 自分の服がアラクネ製だと、自慢したかったのだろうか?

 当然、アラクネ製だと知らないフリーゼ達は当然、驚く。


「そんな高級素材を何故……」

「それは、俺が四葉商会の代表でもあるからだ」


 ルーカスより先に答える。

 そもそも、アラクネ製の服だからといって防寒性があるのかは疑問だ。

 今度、アラクネ族のクララにでも聞いておく事にする。

 どちらにしろ俺の場合は、【全属性耐性】があるので寒さを感じないだけだ。

 ルーカスも姉であるフリーゼに、良い所を見せようとしているのが分かる。

 自分が成長して、いかに素晴らしい国王になったかを証明したいので、口が滑らかになっているのだと思うが、空回りしているように見えるし、俺からしてみれば迷惑でしかない。

 どちらにしろ、今後フリーゼが絡む際のルーカスには気を付けないと、うっかりと重要な事を話す可能性がある。


「まぁ、俺の事はどうでも良いから、早く出発しないか?」

「そうだな」


 フリーゼ達と飛行艇の場所まで移動をする。

 討伐に行かないルーカス達とは、ここでお別れだ。


「じゃあ、行って来るな」

「はい、気を付けて」


 ユキノに挨拶をする。

 その後、ルーカスやイースに護衛しているカルア達にも挨拶をして、フリーゼ達と部屋を出る。



「操縦は俺がするから、この扉から入って寛いでいてくれ」


 未知なる乗り物に乗り込むフリーゼ達は、慎重だった。

 一応、揺れる事もあるので出来るだけ座って外でも見ているように言う。

 フリーゼ達は言葉を発する事無く、俺に言われた通り素直に座った。


「では、今から飛ぶからな」

「タクトよ。場所は分かるのか?」


 フリーゼが疑問に感じたのか、俺に質問をする。


「大体の場所は分かる。近くまで行ったら教えてくれ」

「分かった」


 フリーゼは答える。


「では」


 そう言うと、俺は飛行艇を上昇させて、イエティとアルミラージの討伐に出発した。

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