第446話 勝手な解釈!

「遅くなったが、アスランを助けてくれた事だが、礼を言う」


 フリーゼが俺にアスランの【呪詛】を解除した事で礼を言われた。


「まぁ、俺に出来る事をしただけだ。礼を言われるよな事では無い」

「見た目によらず、謙虚な発言だな?」

「誤解されやすいが、俺は謙虚だ。誤解している奴が多いだけだ」

「……それは、お主が謙虚だと思っているだけでは無いのか?」

「そういう考えもある……」


 フリーゼの言葉に、俺が自分の評価が間違っている事に、気付かされる。

 自分に不釣合いな膨大な力を手に入れた事と、言葉使いの【呪詛】のせいで傲慢になっていたのだ。

 今一度、自分を見つめなおそうと思う。

 謙虚さを無くした者に未来は無いと、前世で誰かに言われた記憶があったからだ。


「オークロード討伐のパーティーだとも聞いたが?」

「そうだ。騎士団長のソディックと共に討伐した」

「ルンデンブルク卿からの紹介らしいが、本当のリーダーはお主だとも聞いたぞ」

「それは、俺が丁寧語を喋れないからソディックと変わっただけだ。ダウザーとは友人だから俺を紹介しただけだろう」

「成程、ルンデンブルク卿の友人か。彼も元冒険者なので、その繋がりと言うわけか」


 フリーゼは誤解をしているが、訂正するのも面倒臭いので、そのまま話を進める。

 ミクルの誘拐の件は、フリーゼに伝わっているのかが分からない為、その事にはふれないでいた。 


「シロ。悪いが操縦を代わってくれ」

「はい。御主人様」


 フリーゼとの会話が多くなると判断したので、シロに飛行艇の操縦を代わってもらい、後ろに移動する。


「国王は、きちんと職務をこなしているのか?」

「俺は、王都にいる訳では無いので、その質問には答えるのが難しいな」

「そうなのか。しかし、ユキノと結婚すれば、王都で暮らすのだろう?」

「いや、ユキノとはジーク領のゴンド村という所で暮らす予定でいる」

「それは、お主の意見だろう。ユキノや国王が許す訳無いだろう」

「いや、国王も了承してくれたし、ユキノも喜んでゴンド村に来てくれる」

「そんなはず無いだろう。仮にも王位継承権を持つ者が村などに住める訳がないだろう」

「王位継承権については、ユキノは辞退すると言っている」

「何だと!」


 フリーゼの反応は、至極普通だ。

 王位継承権と言えば、欲しくても手に入らないものだからだ。

 それが欲しくて、王族との婚姻関係を持とうとする貴族が居るのもまた事実だ。


「お主は、それで良いのか?」

「それで良いと言うのは?」

「もしかしたら、国王になる事が出来るかも知れんのだぞ」

「あぁ、俺は権力に全く興味が無いからな。静かに暮らせれば、それで良い」


 俺の言葉を聞くと、フリーゼは信じられない表情をする。


「ユキノと結婚すれば、それなりの権力が手に入るのだぞ」

「だから、俺はその権力に興味が無い。それにその権力で、弱き者を苦しめている者に対して、嫌悪感があるからな」

「お主は、変わっておるの」

「俺が変わり者だから、ユキノの目に止まったんだろう」

「成程、それは一理あるな」


 二人で笑う。


「アスランやユキノ、それにヤヨイは私にとって子供のようなものだから、幸せにはなって貰いたい」

「今は幸せにするつもりとしか、言えないがな」


 俺はフリーゼに子供がいない事を聞くつもりは無かった。

 前世で世話になっていた先輩が、不妊治療で苦しんでいた事を思い出したからだ。

 この世界には不妊治療というものが無いのは知っているし、子供を産めない貴族の女性が冷遇されている事も、知っている。

 その場合、第二夫人が居る場合が多く、跡取りである男の子供を生むと、第一夫人と立場が逆転する。

 タンガロイに第二夫人は居らず、妻はフリーゼのみだ。

 王族の娘と言う事で、第二夫人を取る事を躊躇っているのかは、俺には分からない。

 しかし、この世界の常識からすれば、明らかに異質なのは間違いない。


「そのユキノを嫁に貰いたいと言いに来た俺は、悪者になるのか?」

「いや、そんな事は無い。ユキノが幸せになれるのであれば、私がどうこう言うつもりは無い」


 反対されると思っていた俺だったが、意外にも受け入れてくれる事に感謝する。


「それより、お主は最短で冒険者ランクSSSになったと言うのは本当か?」

「よく知らないが、そうだと聞いている」

「何故、お主の様な者が今迄、誰にも知られずに居たのだ?」

「まぁ、色々とあって、一言で話すのは難しいな」

「そうか、お主も複雑な環境で育ったみたいだな」


 フリーゼは、勝手に俺の生い立ちを想像していたが、俺も否定をする気も無かった。


「先程の村が、お主の故郷なのか?」

「厳密に言えば違うが、俺の大事な場所と言う事では間違いない」

「そうか、今度その村にも行ってみたいものだの」

「……それは、俺の一存では答えられないな」

「そうだな、国王や領主等の許可が必要になるだろうしな」


 俺が言っているのは、そういう事ではないが話す事は出来ない。


「来る事があれば、歓迎するぞ」

「そうか、それは是非とも行ってみたいな」


 これ以上、俺の事に関してフリーゼが聞いてくる事は無かった。


「御主人様、そろそろ着きます」


 シロが俺に到着を伝える。


「少し高度を下げてくれ」

「はい」


 シロが飛行艇の高度を下げる。

 窓の外を見ていたフリーゼが、村らしき場所の近くに着陸出来ないかと言うので、シロに指示を出して着陸する事にした。

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