第439話 男手!

 朝一番で、マリーとフランを送る為に、ジークにある俺の部屋で待つ。


「お待たせ」


 扉を開けて、二人が入って来た。


「大荷物だな」


 二人の荷物の量に驚く。


「当たり前でしょう。夕食の誘いに表彰式と、衣装が多いのよ」

「そうよ。それに、私は撮影機材もあるのよ」


 物凄い勢いで反論される。


「悪かった」


 口論では、勝てない事が分かっているので素直に謝る。


「グランド通信社とは連絡が取れたのか?」

「えぇ、午前中の早い時間に伺うと伝えたわよ。今後の事業の事も相談があるみたいだったので、丁度良かったようだわ」

「そうなのか、俺が宜しく言っていたと伝えてくれ」

「分かったわ。仕事の件は私が決めても良かったわよね」

「勿論だ。頼りにしてるぞ!」

「……はいはい」


 マリーは呆れたように答える。

 俺としては、マリーを信頼しているので、それ以上の事は言わない。


「フランも忙しいと思うけど、頼むぞ」

「まぁ、期待に応えられるような写真を撮るわ」


 フランは嬉しそうだ。


「一位の冒険者と会って、違う一面を撮影したいと思ったら、場所や衣装を忘れないように書いておけよ」

「うん、分った」

「行きたい場所には、俺が連れて行くから問題無いぞ」

「でも、転移魔法は秘密なんでしょう?」

「安心しろ、空を飛ぶ乗物を手に入れている」


 フランとマリーは、何の事か分からないでいる。


「詳しくは、グランド通信社で聞けば分かると思うぞ」


 ルーカス達がオーフェン帝国に旅立った時の事は、王都に本社のあるグランド通信社であれば知らない筈が無い。

 雪のある場所は、湖に山等ある程度の場所であれば、行く事は可能だ。

 フランにも、そういった場所で撮影をしてみるのも良いと思う。


 男性冒険者の一位と、女性冒険者の一位では撮影するイメージが異なるだろう。

 フランの想像力が試される。

 最初は、珍しいので購入するかもしれないが、読者も徐々に目が肥えてくる。

 その時こそ、本当の勝負だろう。

 良くも悪くも、フランは成長すると思う。


「忘れ物は無いか?」

「大丈夫よ」

「うん」


 二人共、荷物が多いので【隠密】を施す為に、俺に触れるように言う。


「グランド通信社に近い場所に移動するからな」


 声を掛けて【転移】で王都に移動する。



 グランド通信社から、少し離れた路地に移動した。

 人気が少ないので、すぐに【隠密】を解く。


「運んでやるよ」


 俺は、マリー達の荷物を持つ。


「こういう時に、男手は必要よね」

「そうそう、店に男手が足りないのよね」

「そういえば、そうだな」


 トグルや、ザックにタイラーが居るので、気にならなかったが確かにそうだ。


「やっぱり、男が居ないと不便か?」

「そうね。力仕事は殆ど無いから、特に問題は無いけど、たまに物を動かしたいときには、か弱い女性だと辛いわ」

「そうそう」


 ……か弱い女性ね。


「シキブさんみたいな、強い女性でも良いんだけどね」


 シキブか……子育ての合間に手伝い程度であれば、了承してくれるかも知れないな。

 冒険者引退してからの事とかを、一度聞いてみる事にする。


「まぁ、別に絶対って訳でも無いし、人が増えればその分、儲けを出さないといけないから様子見で良いわよ」

「確かにな」


 色々な角度から、客観的に洞察するマリーには感心する。

 この後の詳しい予定をマリーから聞きながら、グランド通信社まで歩く。

 グランド通信社の中に入り、二人の荷物を置く。


「ところで、何で俺が魔法付与した鞄に入れて来なかったんだ?」

「それも考えたけど、荷物が少なすぎると怪しまれるから、普通にしたのよ」

「成程な」


 俺の質問にきちんと答えるマリーとは対照的に、フランは気付かなかったようで落ち込んでいた。


「そうよね。撮影機材を鞄に入れておけば、もっと軽くなったのよね……」

「いつも撮影機材は鞄に入れていないのか?」

「入れているわよ。と、いっても発光石と、転写用の紙にカメラだけね」

「……さっき、撮影機材が重いと言っていなかったか?」

「そんな事を言った気もするわね」

「まぁ、帰りに土産を買っていくなら、俺が払うから好きなだけ買っていけ」

「本当!」


 フランは上機嫌だった。


「タクト、四葉孤児院にも御土産買っていくけど、良いわよね?」

「勿論だ。子供達の為になるものであれば、何でもいいぞ」

「ありがとう。お店については、ヘレフォードさんにでも聞いているわ」

「そうだな。王都の商人に聞くのが早いな」


世話になっているシキブとムラサキや、エイジンとイリアにも土産を買うとマリーが言うが、断る理由も無いので了承する。


「帰る時に又、連絡くれ」

「分かったわ。早めに連絡するわね」


 俺は、マリー達と別れる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る