第432話 特例!
オーフェン帝国の城に戻ると、すぐに会談をしている場所に行く。
会談をしている部屋の扉前で警護をしている衛兵に、俺が戻った事をルーカスやトレディアに伝えて貰う。
中に入って良いと連絡を貰うので、衛兵に扉を開けて貰い、部屋の中に入る。
「今、戻った」
「……魔穴のバジリスク討伐から戻ったという事で良いのか?」
「あぁ、用事はそれだけだったからな」
ルーカス達は慣れてしまって感覚が麻痺しているが、トレディア達は驚いている。
俺が嘘を言ってい無い事は分かっているので、討伐もそうだが、短時間で戻って来た事も含めて信じられないのだろう。
「コルサから頼まれたバジリスクの死体が必要なら、ここで出そうか?」
「いや、ちょっと待て。あとで案内するので、そこで頼む」
トレディアは慌てる。
「まぁ、俺の事は良いから会談を続けてくれ」
「タクト。その事なんだが……」
ルーカスが、俺の居ない間の会談内容を話してくれた。
ガルプツーや、黒い玉等の情報は俺にも伝わるようにする事と、オーフェン帝国内での俺単独調査等も承諾したそうだ。
特例であるが、オーフェン帝国での活動はトレディア直属と言う事になる。
ただし、上記の活動内容についてだけだ。
それ以外の任務については、行わない。
当然、活動内容はルーカスにも伝わる為、オーフェン帝国が俺を勝手に使う事は出来ない。
「国王は、それで良いのか?」
「緊急事態だという事は分かっておる。致し方無いだろう」
ルーカスが納得しているのであれば、俺がどうこう言う訳にもいかない。
「分かった」
俺は、その案を了承した。
「一応、活動出来るよう、これを渡しておく」
オーフェン帝国の国旗が施された釦のような証を、トレディアから受取る。
「あくまでも、ガルプツーや黒い玉の調査だけだな」
「その通りだ。タクト殿は、エルドラード王国の者だという事は承知しておる」
再度、トレディアに確認をした。
「この件は、俺だけでなく仲間のシロやクロも、同じと考えて良いよな?」
「その通りだ」
オーフェン帝国内で、シロとクロの活動についても問題が無い。
ルーカスとトレディア達が、引き続き話をしているのを気にしながらも、ジャジー達が作成した資料に目を通す。
読み終わると【全知全能】にガルプツーの居場所を聞く。
潜伏場所は、シャレーゼ国の城だと答えた。
俺の予想が当たるが、証拠は何一つ無い。
この場で発表すると混乱が生じる事は、考えなくても分かる。
もし、こちらから攻め込めば、シャレーゼ国に大義名分が出来てしまい、向こうの思う壺だろう。
向こうから仕掛けるのを、待つしか無い。
次のガルプツーとの戦闘では、必ず仕留める事を誓う。
一旦、クロを呼び戻して作戦を練る必要だ。
「どうした、タクト。気になる事でもあるのか?」
「そうだな……」
俺が気難しい表情だったのか、ルーカスが声を掛けてきた。
「些細な事件でも、出来る限り情報が欲しい。一見、関係の無い事件でも、実際は裏で、それ以上の事件になっている事も考えられる」
「しかし、小さな事件まで含めると数は膨大になる……」
「帝都から、離れた村等の出来事を中心で頼む」
トレディアは、了承してくれた。
当然、エルドラード王国も同様だとルーカスにも告げる。
「結局、御主に頼るような事になってしまったな」
俺に向かってルーカスが、申し訳なさそうに話す。
「それが、最善の策という結論なのだろう。俺としても納得している内容なので問題は無い」
「そう言ってくれると、少しは気が楽になる」
国を治める者として、この案件以外にも色々と面倒な問題はあると思う。
良くも悪くも好き勝手に動いても、文句を言われないでいるので、俺的にも助かっている部分はある。
結論が出たようなので、この会談も終了となる。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
コルサに案内されて、バジリスクの死体を二体置く。
「その、申し訳御座いませんが、解体作業も御願い出来ませんでしょうか?」
本当に申し訳なさそうに、コルサは俺に頼むので【解体】をする。
「これで良いのか?」
「はい。ありがとうございます」
俺は、バジリスクの部位から何が出来るのかを聞いてみる。
やはり、冒険者の装備品に使用される事が多いという。
特に、強度が高く軽いので、値段もそれなりにする。
元々、数が少ないので出回る事が滅多に無いので、かなり希少な素材だと教えてくれた。
適正価格で買い取るというので、鑑定した後に、金貨はターセルへ渡しておいて貰う事にした。
「あと、これも渡しておく」
俺は石化していた者達から、回収してきた物を地面に置く。
「……これは?」
「あぁ、魔穴で石化していた者達が、身につけていた物だ。形見では無いが、この国の者だと思うので持って帰って来た」
「有難う御座います。すぐに、鑑定させて頂きます」
「あぁ、頼む。身内が居れば、そいつらに返してやってくれ」
「はい、勿論です」
「じゃあ、俺は戻るから後は頼むな」
「はい」
コルサの連絡で、何人かの衛兵が帰ろうとする俺と入れ替わりにやって来た。
彼らは、コルサの指示で動いていた俺の持って帰ってきた品を分別していた。
俺は、一人でも多く関係者の下に戻ればと思いながら、この場を去った。
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