第363話 神同士の事情!

(はいは~い)


 エリーヌが、底抜けにアホっぽい口調で話す。

 ダウザーは、大臣が呼びに来たので強制連行されていったので、ユキノが着替えている間にエリーヌと連絡を取る。


(呪詛がひとつ無くなったんだが、理由分かるか?)

(えっ、そうなの!)

(お前、俺のエクシズでの活動見ていないだろう)

(……そんな事ないよ)


 口調からも嘘だと言うのが分かる。


(ちょ、ちょっと待っててね)


 エリーヌは何かをしているのか、雑音がひどい。

 思っていたよりも待たされている。

 いい加減、【神との対話】を切ろうかと思っていると、エリーヌが突然話し始めた。


(タクト、誰かと接吻したでしょう! いやらしい)

(はぁ? 何を言っているんだ?)

(解除して少し調べてみたんだけど、解除の条件は多分『自分を愛してくれている人との接吻』だったのよ)

(……お前、そんな事考えていたのか?)

(ん~、よく覚えていないけど、愛される人になる事や愛される証みたいな事を願ったような願わなかったような……)


 相変わらず、いい加減な女神だ。

 接吻という解除設定をしたのはエリーヌ自身なのに「いやらしい!」とか意味が分からない。


(それが解除条件かも? てことで本当は違うかもしれないんだろう)

(そうだね。だけど、ほぼ決まりだと思うよ。まぁ、呪詛無くなって良かったじゃない)

(……本当の解除条件を調べる気はあるのか?)

(必要なら調べるけど、解除出来たからいいじゃん!)

(確かにそうだが……)


 接吻という事は、誰かとキスしたということだろうが、俺を愛する人と言えばユキノしか思いつかない。

 俺の意識が無い間に、キスをしたという事なのか? そのキスのおかげで俺が目覚めたのかもしれないのであれば、まるで童話の世界だ。

 恥ずかしいが、ユキノに聞いてみるしかない。


(あ~! タクト、死後の世界行ったの!)

(あぁ、行ったぞ。成り行きだがな)

(……困った事してくれたわね。これで私の評価が~! 私の頑張りを返してよ!)


 なにやら発狂している。


(とりあえず、モクレン様に報告するから待っててよ)

(分かった)


 暫くすると、エリーヌに代わりモクレンが話しかけてきた。


(久しぶりですね。偶然とはいえ、【呪詛】が無くなって良かったわね)

(ありがとうございます。これで変な恰好だと思われないですみます)

(ところで、エリーヌから聞きましたが死後の世界に行ったと言うのは、本当ですか?)

(はい、成り行きで死んだ人を生き返らしました)

(そうですか、それは一大事ですね。因みにオーカスという神を知っていますか?)

(はい、死の管理者と聞きましたが、神なのですか?)

(そうです。エクシズでの死を管理している神になります)

(そうなんですね)

(ところで、死後の世界でオーカスには会ったのかしら?)

(いいえ、その部下という黒いフードを被った方達には会っています)

(……そう)


 モクレンが言うには一応、神の間にも取り決めのようなものがあり、死後の世界に干渉する事は禁忌らしい。

 アンデッドは種族として古よりオーカスと契約しているので、現世に未練のある魂を自我の無い魂として召喚する事に対して問題は無いし、エルフも条件付きでオーカスと契約をしているらしいので、問題になる事は無い。

 人族が死後の世界に干渉する事自体出来ないので、対応に困っている。

 確かに、死んだ者がそう簡単に生き返ると死を管理している側からすれば、良い迷惑だろう。

 モクレンが直接、オーカスと話し合いをしてくれるが、何かしらの代償が出るかもしれないと脅しに近い事を言ってきたが事後対応になるので、俺としては任せるしかない。

 原因の一端は、俺が【全スキル取得】のユニークスキルが大きく関係している。

 俺が、転生の際にエリーヌから強引に得たユニークスキルなので、エリーヌを責める事は出来ない。


 モクレンは今回、偶然とはいえ【呪詛:服装感性の負評価】が解除された事で、アデムが行ってくれている【呪詛】の解明も進むかも知れないと、希望を持たせる事を言う。

 言葉使いだけでも普通であれば、他の【呪詛】があったとしてもエクシズでの生活は、それなりに普通に出来るだろう。

 エリーヌが、俺の事を監視していない事もモクレンにバレて叱られていた。


(それでは又、連絡しますので)

(はい、宜しく御願いします)


 オーカスが、どんな神なのか分からないが嫌な予感しかしない……。

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