第343話 不自然な村の調査!

「シロ、この村でいいのか?」

「はい、御主人様」


 村民が居なくなった村に来てみるが、生活していた形跡はあるが生活感が無い。

 【神眼】で生命反応を確認するが、反応が無い。

 村に入り、扉を開けたりして全ての家を確認するが、誰ひとりとして居ない。

 金貨らしき物が目に見える位置に置いてある家もあるので、盗賊の類では無いだろう。

 ターセルの話から、井戸も確認してみる。小石を拾い落してみると、数秒で水音が聞こえる。

 ここに居ても進展は無いので、次の村に行く事にする。

 【転移】を使おうとした瞬間、怪しい物が目に入る。

 とりあえず、そこまで移動をする。

 崖の上に岩だと思っていた物が、人が積みあがって出来た物だった。

 【神眼】で確認したが、既に全員死亡していた。

 大きな外傷もなく、魔物に襲われた形跡もない。

 この辺りは魔物が多い筈なのに、魔物に死体を食べられている事もない。

 なにより、死亡原因が不明だ。

 とりあえず、死体の山を撮影する。

 このまま放置しておくのも可哀想なので、火葬する事にした。


 シロの案内で、次の村に来るが先程の村同様で、誰も居ない。

 村の状態も同じで、普通に生活していて突然消えた感じだ。

 家の中を見て回るが、やはり生存者は居ない。

 近くに、死体が無いかを確認すると、村から少し離れた崖の下に村民達の死体があった。

 皆、崖から落ちたのだろうが、村民全員が集団で自殺することなんて、有り得ない事だ。

 申し訳ないと思いながら、カメラを構えて撮影をする。

 こんな写真を、フランには【転写】させる事は出来ないので、ルーカスから誰かに頼んで貰う事にする。

 王都の【転写】スキル持ちにも、カメラの良さが分かって貰えるだろう。


 その後も、周囲の村を二つほど見てみるが、村民の姿は無い。

 四つ目の村は、本当に先程まで生活していたと思える程だった。

 但し、今迄と違うのは周囲に村民の死体が見当たらない事だ。

 ……明らかに異常なのは分かるが、原因が分からない。


「御主人様、この村は他の村に比べて、匂いが強いです」

「……匂い?」

「はい。甘い嫌な匂いです。」


 シロの話だと、最初の村から村を移動する度に、少しずつだが匂いが強くなっているそうだ。

 最初の村ではあまり気にならなかったので、敢えて俺には報告していなかった。


「クロに調査を依頼したランドレスの拠点は、この近くか?」

「はい、もう少し先に行った所だったと思います」


 俺は一旦、クロを呼び戻して報告を聞く事にした。

 ランドレスの部下は、二十人程で、女性の奴隷が六人居る。

 ここ数日は、外出はしていないが部下数人は頻繁に外出していた。

 クロも、俺に気になる事があったので、様子を見ながら報告しようと思っていると言う。


 村民らしき者達が多数、ランドレスの拠点に訪れているらしいが、自分達から牢に入って行くが時間が経つと騒ぎ始めるようだ。

 騒ぎが大きくなると、香のような物を焚くと村民達は大人しくなるそうだ。


「この匂いは、その香の臭いですね」


 香を焚くなら、風上からになる。

 しかし、村全体となるとかなりの量の香を焚かなければ、効果は無い筈だ。

 クロの話には、まだ続きがあり、夜な夜な村民同士を殺させては、宴を開いているそうだ。

 戦わされる村民は、強制というよりも自分の意思で戦いをしているように見えたと、クロは説明する。

 その話が本当なら、今回の事件の黒幕はランドレスになる。


「シロやクロは、その香を嗅いでも問題無いのか?」


 万が一、シロやクロが催眠状態になり戦う事になる可能性もあったので、質問をする。


「御主人様の能力のおかげで、そのような効果は無効になりますよ」

「その通りです」


 シロもクロも、俺の能力で問題無いと言うが【全属性耐性】の事だろう。

 クロに村民や奴隷を優先的に影の中に引き込み、保護するように指示をする。

 シロには、風属性魔法で、俺が常に風上になるように援護を頼む。


「主、いつ行動を起こされますか?」

「決まっているだろう、今からだ!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る