第342話 メルン村の大量虐殺!

「この部屋の説明は、どうするんだ?」


 何もなかったでは、上で待っている者達に説明が出来ないだろう。


「確かにな……しかし何も無かったので、余も分らないと言うしかないだろう」

「分かった。俺達もそれで口裏を合わせる」


 【浄化】を使い、部屋を綺麗にする。

 瞬く間に綺麗にされた部屋を見て、カルアが感動していた。


「そういえば、これ渡すように言われたぞ」


 カルアにロッソから預かった耳飾りを渡す。


「指輪喜んでいたぞ」


 カルアは嬉しそうに耳飾りを両手で優しく包んでいた。

 シロに、上で待っているダウザー達を呼んで来て貰う。

 その間、俺は残った四人に質問をする。


「ユキノが、城内でも平民の服を着て生活をしていると聞いたが、変じゃないのか?」


 孤児院を見学の際に、ユキノが話していた事だ。

 ターセルやカルアは、気取らなくて街の皆の事を考えてくれていると、使用人達の間でも好評らしい。

 アスランも同じ事を言う。

 やはり、俺の感覚が変なのか?


 ダウザー達が下りてきたが、机と椅子以外何も無い事に拍子抜けしている。

 ルーカスも先程の説明をして、俺達もそれに合わせる。

 扉の開き方向は対となる扉と同じにしないといけないので、間違いの無いように注意をしながら壁に扉を設置していく。

 王都に、ルンデンブルク領、ゴンド村、『ブライダル・リーフ』の四ヶ所の扉の設置を終える。


 廊下の突き当りは、今後開く事が無いように【結界】を貼るのと同時に開閉の仕掛けを壊しておく。


 『ブライダル・リーフ』に戻り、俺の部屋だった壁に豪華な転移扉を設置する。

 明らかに違和感がある。あとで布のような物で隠す事にする。

 ゴンド村は後日という事で、ルーカス達に了解を貰う。

 王都魔法研究所に転移扉を届ける前に、北の村の件をルーカスに聞く。


「そんな報告受けていないぞ」

「そうか、とりあえずこれを見てくれ」


 シロの撮影した写真を見せて、シロに詳しく説明してもらう。

 写真を見たターセル達も違和感を感じていた。

 ルーカスもすぐに派遣者を出して事実確認すると言い、担当者と連絡を取っていた。


「文献にあったメルン村と、同じような感じですね」


 ターセルが記憶の中から、同じような案件を思い出していた。


「メルン村って、あの大量虐殺の?」


 カルアが聞き返す。

 今はもう廃村となって無いが昔、メルン村というそれなりに村民が多く、季候も良く農作物も良く育つ住みやすい村があった。

 ある時、商人と護衛の冒険者が村に立ち寄ると、村民が誰も居ない。

 しかも、先程まで子供達が遊んでいた形跡や、畑仕事が途中で終わっていたりと不思議な光景だった。

 冒険者は、すぐに冒険者ギルドに連絡をすると、ギルマスからグラマスに連絡がいく。

 重要な事件だと思った為、王国は近くに居た騎士団をすぐにメルン村に向かわせた。

 メルン村に着いた騎士団は、報告の通り村民誰ひとり居ない異様な村の情景を目にする。

 生存者が居ないか村の中を探すが、残念な事に生存者は発見されなかった。


 ひとりの騎士がふと井戸を覗き込んでみると、人と思われる固まりを発見する。

 縄を使いながら、ひとりずつ引っ張り出すが既に腐敗も進んでいたが、命を失うような外傷は無かった。

 最終的には、大人子供合わせて五十人近くの人が井戸の中に入っていたそうだ。


「古い文献ですので、詳しい内容は分かりませんが似ていると思いませんか?」


 シロに井戸の中を見たかと聞くが、井戸には何も無かったそうだ。

 なにやら、嫌な予感がする。


「シロの話だと、ひとつでなく幾つかの村だと言っていたから、地域的な大がかりな問題になっていないか?」

「そうですね、それだけの人間が移動すれば、必ず発見されます。それに北の村という事は、ランドレスの関与も否定出来ません」


 ……俺が行くのが一番早いのは、分かっている。

 それにクロへ、ランドレスの調査を依頼しているので、俺の方が情報も入手しやすい。

 何でもかんでも俺が解決する事が、正しいとは思わない。そう、頭では分かっている。

 しかし、聞いた以上は無視する事も出来ない。


「……俺が行って見てくる」


 そう答えるのが、俺の中での正解だった。


「頼めるか?」

「仕方ないだろう。とりあえず、俺から報告があるまで、北の村への派遣等は止めてくれるか?」

「分かった」


 ルーカスと短いやり取りをするが、ルーカスも俺に行って欲しかったのは分かっていた。


「マリー。悪いが又、暫く留守にするが頼むな」

「いつもの事でしょう。気にしなくていいわよ」


 俺もマリーも笑う。


「とりあえず、王都魔法研究所と転移扉は後回しにするから、シーバには伝ておいてくれ」

「承知した」


 本当に、こんなに面倒事が多いのが何故なのか疑問に感じる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る