第310話 冒険者ギルドの事情!
無事に昇級試験も終わったので、ヘレンから冒険者ギルドカードを受け取る。
ジラールもグラマスとして同席していたが、昇級試験を観戦していた冒険者の中には、俺とパーティーを組みたいと言っている奴が何人か居ると教えられたが、パーティーは組む気が無いと伝えて貰うように頼んだ。
ヘレンからは、忘れないうちにと『クラウドスパイダーの糸』の報酬を貰う。
ターセルから渡した糸の長さで問題無いと連絡があったのだろう。
「貴方のおかげで、今迄達成出来なかったクエストが次々と減っていくので、冒険者ギルドとしては助かっています」
受け取る際にヘレンから褒められる。
「タクトもランクSSSになったのなら、グラマスやる気は無いか?」
「全くない」
ジラールの誘いを即答で断る。
「そもそも、俺が受ける気が無いと思って話していただろう」
「まぁ、その通りだが一応、ランク上位者には確認しておかないといけないからな」
「因みに、これからもグラマスは勿論だが、ギルマスやサブマスもする気は無いからな」
「……残念だが、仕方ないな」
以前にジラールが高ランクの冒険者は変わり者が多いので、グラマスやギルマスを引き受ける者は居ないと言っていたのを思い出した。
俺もその変わり者な冒険者のひとりなのだろう。
「それと、ランクSSSになったのだからランクA以上は参加出来る人気投票に出れるぞ。まだ、間に合うから良かったな」
「あぁ、それなら辞退で頼む」
「……辞退?」
「そう、辞退だ」
「タクト、人気ランキング上位になれば名誉な事だし、名前を売るにも絶好の機会だぞ!」
「悪いが、人気に興味も無いし、名前を売るつもりも無い。出来れば目立たずに過ごしたいからな」
「今迄、散々目立つ事ばかりしていたお前が、今更言っても全く説得力が無いな」
「好きで目立っていた訳じゃあないんだけどな」
目立てば目立つ程、厄介事に巻き込まれる可能性も高い。
それに、その逆で俺のせいで周りの者達に危険が及ぶ事だって考えられる。
「それに俺の恰好見てれば、人気ランキング上位に入る事はまず無いだろう」
「確かにそうだな」
「そうですね」
ジラールとヘレンは即答する。
自分で言っておいて何だが、あっさりと肯定されても複雑な気分になる。
ジラールは今後、指名クエストがあった際に連絡を取りたいと言うので、ヘレンと共に連絡先を登録した。
「俺を指名する物好きは居ないだろうがな」
「多分だが、国王様の案件は殆どお前になると思うぞ」
「なんでだ?」
国王は今迄、三獣士をお抱えの冒険者として、国としてのクエストを依頼していた。
三獣士だけだと対応が出来ない為、緊急性の無いものは一般クエストとして発注している。
ただし、高ランクなクエストでリスクも高い為、中々受注する冒険者が居ない。
王国騎士団を動かしたり等して、大きな問題は今迄無いそうだ。
高ランク冒険者は居るが、貴族が大金で契約していたりする為、難しいらしい。
変わり者が多い為、報酬でなく自分の興味のある事に対して旅をしている者も多く、年に一回ギルドカードを更新する時にだけギルドに立ち寄る者も居る。
確かに、獣や魔物を討伐して素材だけ売れば、贅沢しなければ暮らせるだろう。
「タクトは、報酬に拘らずに依頼達成も早い。それに解体も綺麗にするから重宝されると思うぞ」
なんだか、前世の飲食店で聞いた事のあるフレーズが頭に浮かぶ。
「それに、ここ何年もランクS以上の冒険者は誕生していないから、若い冒険者にも良い刺激になっただろう」
「そうなのか?」
「あぁ、ランクSとランクAだと、クエストの危険度が全然違う。基本的にランクS以上を受ける奴らは変わり者が多いと言うのが、冒険者内では一般常識だな」
「ランクSになっても、クエストは選べるだろう?」
「確かに選べるが、ギルドとしても出来る限り高ランクに依頼したいから、指名クエストでなくてもギルドとして頼む事もあるからな」
確かに、ランクSの冒険者がランクBやCのクエストを受注してたら、ランクBやCの冒険者達の受注出来るクエストの数は減る。
そうなればより高収入で危険が少ないランクが人気なのも良く分る。
多分それが、ランクAだと一般的に思われているだろう。
ランクAでも危険だと思えば、パーティーが揃わないだとかで言い訳は幾らでも出来る。
ランクS以上だと、単独討伐が試験内容に追加されていたのは、そういった事情を考慮しているのかも知れない。
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