第271話 様々な悩み! 

「タクトが一緒なら、別に構わぬぞ」

「御父様、有難う御座います」


 あっさりと、ユキノの外出を許した。


「……そんな簡単に王女の外出を許していいのか?」

「簡単ではない。タクトが一緒だから許したのだ。御主以上の護衛は、いないからな」


 この親子には、何を言っても無駄な気がした。


「流石に、この服だとバレるから知り合いの服を着させるからな」

「構わぬぞ! ユキノも街の人々の暮らしを存分に勉強してくるがよい」

「はい!」


 ユキノの体型と同じなのは、マリーくらいしか思いつかない。

 又、文句を言われる気がするが仕方がない。


 ルーカス達の部屋を出て、厨房に戻ると既にビアーノとロイドが待っていた。

 ビアーノは箱のような物を持っている。


「それなんだ?」

「俺の料理だ。ガイルに食べさせようと思ってな」


 なるほどな。料理の腕が衰えていない、いや上がっている事をガイルに見せたいという事だな。


「なぁ、デザートが余っていれば分けてくれないか?」


 従業員達への土産と、ユキノが突然訪問する事への苦情を、少しでも緩和するのが狙いだ。

 ビアーノは幾つかあるので、好きなだけ持って行っていいと言うので、各十個づつ六種類を遠慮無く頂戴した。


 【オートスキル】から【魔法反射(二倍)】を外してから、ジークにある俺の部屋に【転移】した。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 ビアーノは驚いていたが、転移魔法だと伝えると、更に驚いていた。

 ユキノは、俺の部屋を見られた事に、えらく感動していた。


 二階のリビングに下りて行くと、皆揃っていたので「ただいま!」と挨拶をする。

 フランはロイドを見ると驚いていた。

 一応、ユキノとビアーノとロイドを紹介する。


 ユキノが第一王女だと知ると、跪こうとするので「気にしなくてもいいぞ!」と言うと、ユキノも「はい」と返事をする。

 とりあえず、ポテトチップスとポテトサラダ、おでんをテーブルに上に出して「新しい料理だ!」と伝える。

 それから、ビアーノに貰ったデザートを出す。


 皆、驚くが美味しさには敵わないのか、無言で食べ続けている。


「マリー、ちょっといいか?」


 マリーを呼び、ユキノに服を貸して欲しいと頼む。


「そんな、王女様に貸す服なんてないわよ!」

「普通の服で十分だ。こんな服装で外には出れないだろう?」


 マリーは、ユキノの服を見ると納得したみたいだ。


「マリー様、申し訳御座いません。サイズが合えばですが、私の服と交換でも良いので御願い致します」


 ユキノは、マリーに頭を下げて頼む。

 その姿を見たマリーは慌てて、「恐れ多い」や「勿体ないお言葉」等と色々言っていた。

 マリーに連れられて、ユキノが着替えに行くので、護衛としてシロにも同行してもらった。


 フランとロイドは、楽しそうに会話を始めていた。

 フランが村を離れてから、久しぶりに再会なので積もる話もあるのだろう。


「なんでお前と、ユキノ様が一緒なんだ?」

「俺が聞きたいくらいだ」


 トグルが質問をしてきたが、俺も回答に困る。


「ところで、例の件はどうするんだ? そのうち、ムラサキが口を滑らす可能性が高いぞ」

「……そうだな。今は、明後日の報告の事で頭が一杯なので、それから考える」

「問題の先送りは、余計な問題が起きるから気を付けろよ」


 トグルは困った顔をしている。


「師匠、これ無茶苦茶旨いぞ!」

「これも、うめぇ!」


 トグルの悩みも知らないザックとタイラーは、一緒に料理を食べようとトグルの手を引っ張っていく。

 ふたりの無邪気な姿に逆らえないトグルは、そのままザックとタイラーに連れていかれた。

 問題は、連れていかれた先にリベラが居た事だ。

 自分の気持ちに気付いてしまって、リベラを意識してしまっているのか動作がぎこちない。

 そんなトグルを見ているリベラも、どこか寂しそうだ。

 誤解が誤解を生んで、違う問題が発生しそうなので、リベラを呼ぶ。


「仕事や生活には、慣れてきたか?」

「はい、皆さんのおかげで、なんとかやっていけてます」

「そうか、それなら安心だ。困った事があれば、マリー達に気兼ねせずに言えよ」

「はい」


 そう答えるリベラだが、どこか寂しそうだ。


「……トグルの態度が気になるか?」

「えっ! いえ、その皆さんと討伐に行かれてから、避けられているみたいで……」


 予感的中という奴だな。


「リベラが嫌いになったとか、そういう類では無いと思うぞ。明後日は、店も休みだから皆で王都にでも来るといい。トグルの晴れ姿も見れるぞ」

「そうですね、皆さんと相談してから決めますね」


 恋愛事はよく分からんから、困るよな。

 よくある悪者が意中の人を誘拐して、主人公が助けてハッピーエンドみたいに簡単にはならない。


 ……待てよ。俺が悪者に変装してから、リベラを誘拐してトグルに助けに来させれば、いいって事だよな?

 あとでマリーにでも相談して、協力してもらうとしよう。


「タクト様!」


 ユキノの着替えが終わったようだ。

 マリーの服に着替えたようだが、胸がはち切れんばかりになっている。


「私より胸が大きいのに、ウエストが細くて、おしりも小さいなんて……」


 マリーは、ユキノの体型の良さにショックを受けているようだ。

 フランに至っては、ユキノの胸の大きさに驚いていた。


「食べ物が違うだけで、こんなに大きさが違うだなんて……」


 フランは胸の大きさは、食べ物のせいだと思っているようだ。

 女性の体型へのコンプレックスは、どこでも同じのようだ。


「マリー、明後日は店休みだろう?」

「えぇ、そうよ」

「王都で、オークロード討伐した報告をするから、皆で王都に行かないか?」

「……別にいいけど、タクトが運んでくれるのよね?」

「勿論だ。朝迎えに来る」

「皆には、言っておくわ」

「頼む。それと……」


 トグルとリベラの事について、計画と協力を頼んでみる。

 マリーはふたりの関係には気付いていたみたいだが、御節介をする必要があるのか疑問を抱いていた。

 只、リベラの様子がここ数日、おかしいのは気付いていたので協力をしてくれる事になった。


 ロイドとビアーノに「待たせたな!」と言って、向かいにあるガイルの店に移動する。

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