第247話 護衛三人衆!

 用件も済んだようなので、国王達に挨拶をして退室する。

 部屋を出て少し歩く。 忘れないうちに【魔法反射(二倍)】を【オートスキル】にセットする。


「タクト殿」


 後ろから声を掛けられたので振り向くと、護衛衆の三人が居た。


「何だ、怖い奴が三人も集まって、俺を虐めるつもりか?」


 冗談ぽく話すが、本心は冗談ではなく、手合わせの依頼では無いかと疑っている。


「御冗談を。 私達はそれぞれ、タクト殿に御聞きしたい事があるのでお話をと思いまして」


 笑顔で答えるターセルに、不敵に笑うカルアと、難しい顔をしているロキ。


「断っても無駄なんだろう。 話相手になってやるよ」

「ありがとうございます」


 ターセルは礼を口にすると、自分の部屋へと案内する。


 ターセルは、服の礼と勝手に製作方法を伝えた謝罪そして、ステータスの覗き見した事を再度謝罪された。


「気にしなくていい。 ここに来るまでは、ステータスを見られる事は無いと思っていたからな」


 俺の言葉にも、笑顔を崩さないでいる。


「次は、私の番ね。 【蘇生】のユニークスキルだけど、使用した事はある?」

「いいや、まだ無い。 むやみに使うスキルじゃないし、反動というか副作用が分らないからな」

「そう、それなら安心ね。 もし、使う事になっても、決して向こうの住人の声に答えては駄目よ」

「……向こうの住人?」

「それは、スキルを使用した時が来れば必然的に分かるわ……」


 意味深な言葉だが、それ以上は何も言おうとはしない。


「ところで、ナイルとコスカを倒したけど、問題無かったよな?」


 弟子の報復とか文句を言われるのも嫌なので、聞いておくことにする。


「問題無いわよ。 コスカも調子に乗っていたから、倒してくれて丁度良かったわ」

「カルアの弟子じゃないのか?」

「違うわよ。 実力はあるけど、調子に乗る性格だから、実力以上の力があると勘違いしやすいのよ」


 何となく分かる気がした。


「ナイルも私の弟子ではないが、【一刀両断】なんてスキルを習得したせいで、鍛錬を怠っていたから負けたのは、いい経験になっただろう」


 特に問題は無いようで、安心した。


「ユキノ様を幸せに出来るか?」

「はっ?」


 ロキがいきなり訳の分からない質問をしてきた。

 俺同様に、カルアも唖然とした表情だ。


「ロキは相変わらず、面白い事を言いますね」

「ターセルも見ただろう! あの恋をしたようなユキノ様の御顔を!」

「確かにそうですが、タクト殿に恋をしたとは確定出来ていないでしょう」

「いや、長年お世話してきた私には分かる。 あれは間違いなくタクト殿に、恋をした御顔だ!」


 ……本当に何を言っているんだ?


「ユキノ様の夫という事は、次期国王という事だ。 タクト殿にはその決意が御有りか!」

「いや、全然無い。 そう言う事なら、俺はユキノに嫌われる努力をすればいいのか?」

「なっ!」


 ロキにすれば、予想外の回答だったのか、言葉に詰まっていた。

 そんなロキの横で、カルアは腹を抱えて笑っている。


「面白いわ! ロキは真面目過ぎるのよ。 少しはタクトの、いい加減さを見習ったらどう!」

「俺は、いい加減じゃないぞ!」


 一応、否定をしておく。


「しかし、国王になれると言われたのに即座に断るとは、本音でしょうね」

「国王なんて面倒だし、俺がなったら国が亡ぶぞ!」

「そうね、会って間もないけど何故か、その通りだと思うわ」


 カルアは笑いながらも、俺の意見に同調する。

 ロキは、何とも言えない表情をしている。


「ユキノには、俺が思っている以上に変な奴だと言っておけば、その恋心とやらもスグに冷めるだろう」

「そうならいいが……」


 ロキは複雑な顔で答えた。


「それに力にある貴族や、他国の王子との戦略結婚だってあり得るだろう?」

「……確かにそうだが、ユキノ様に幸せになって貰いたいのは、変わらない」

「ところで、王子が不在なのは理由があるのか?」


 この質問で、三人の顔付きが変わった。


「……タクト殿は、御存じないのですか?」

「何をだ?」


 三人は顔を見合わせると、ターセルが代表して説明をしてくれた。

 王子の名は『アスラン』と言い、ユキノやヤヨイの兄になる。


 王子は世界各地を見て、知識を深める旅をしている為、現在は不在という事らしい。

 しかし、これは表向きの説明だと言う。


 実際は、二年程前から体調を崩していた

 最初は、胸に小さな腫物が出来るが、気になる大きさでもなかったので放置していたが、その腫物は徐々に大きくなるにつれて、アスランの体力が衰えていった。

 それからも腫物は大きくなり数か月でアスランが倒れると、その腫物が人の顔に変化して、言葉を話す。


「これは、復讐。 俺達の無念を思い知るがよい!」


 それからも、この言葉を喋り続けている。

 既に、アスランの意識は無く、無理に剥がそうとすると肉体が傷付く為、何も出来ない状態が続いている。


 ターセルは、この病状が【呪詛】によるものだと、体調を崩し始めた段階で国王ルーカスには、伝えていた。

その後も、カルアは【呪詛】を解除出来ないかと、色々と書物を読んだり試したりもしたが、解除する事は出来なかった。

 ロキも部下を使い、秘密裏に術者を探していたが手掛かりも無い為、未だ見つかっていない。


 毎日、定期的に【回復】を施してはいるが、現状を維持するのが精一杯だと、悔しそうだ。


「……王子との面会は可能か?」

「治せるのか?」

「分からないが、力になれる事があるかも知れない」


 三人は相談をしているが、国王ルーカスの許可が必要だろう。


 しかし、俺が王子の事を聞かなければ、この件にも関わらなくて良かった事になる。

 やはり、俺の行動が問題事を引き寄せるのだろうか?

 悩んでも答えは出ないのを、分かってはいるのだが……


「国王様より、許可が出ました。 面会には、王妃様とユキノ様が御一緒されます」


 ターセルが面会出来る事を伝えて、王子の眠る部屋へと向かう。

 心なしか、向かう速度が速い。 ターセルも焦っているのだろうか?

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